■NEXCO中日本からも「絶対にやってはいけない危険行為」
白昼堂々とこんな違法行為を行うとはにわかに信じがたい(夜でも危険だが)。いや、しかし、もしかしたら撮影許可を取っていた?? …なんてことはありえないと思うが、念のためNEXCOに聞いてみた。この動画が撮影されたのは名神高速道路上である。このエリアの名神高速道路はNEXCO中日本が管轄するエリアなので、NEXCO中日本広報課へ問い合わせると、以下の回答があった。
「ご認識いただきましたとおり、当社として撮影許可は出しておりません。撮影箇所は名神高速道路、関ヶ原町内と思われますので、管轄は岐阜県警高速道路交通警察隊になります。当社(道路を管理する立場)としましては、このような走行は他のお客さまのご迷惑になるだけでなく、大変危険な行為であるので、やめていただきますようお願いいたします。」
当然だが、撮影許可など出されていなかった。大変危険な行為で事故を誘発する危険性もある。
では、管轄する岐阜県警高速道路交通警察隊はこのような「明らかな違法行為」を撮影した動画が証拠としてあった場合、どのような対応を行なうのだろうか? 高速隊に聞いてみたところ、10日ほど経って電話で返答があった。
「動画を確認しました。大変危険な走行や撮影を行っており、警察としては厳正に対処したいと考えています。しかしながら検挙や捜査の状況についてはお伝えすることができません。」
とのこと。では、この動画からわかる範囲でどのような違法行為を行っている可能性があるのかを聞いてみた。
「まずは、SUVでカメラを構えている人は明らかに、(1)シートベルトをしていませんし、窓やサンルーフ等から顔や身を乗り出すことも危険です。そしてこの(撮影している先頭の)SUVは車線をまたいで追越車線と走行車線の間を走行していますね。ランボルギーニのほうも追越車線を正当な理由がなくずっと走り続けているのであれば(2)通行帯違反になりますし、(3)追いつかれた車両の義務違反も考えられます。車両をしっかりと確認しないことにはわかりませんが、車高が著しく低い場合は最低地上高違反で(4)整備不良になります。後続車の進路を意図的に塞ぐような走り方をしていれば(5)妨害運転になります。高速道路を正当な理由なく低速(50km/h以下)で走り続けている場合も(6)最低速度違反になります。」
■具体的にどんな違反行為の可能性があるのか?
この動画でわかるだけでも、多数の違犯行為があったことは明らかだ。これらの違犯をそれぞれ解説しておきたい。
(1)シートベルト着用義務違反
ランボ軍団のメンバーがシートベルトを着用しているかどうかは動画からは判断できないが、先頭SUVから撮影していた人物は当然のことだが、シートベルトを着用していない。シートベルトは後部座席含めて高速道路でも一般道路でも着用する義務がある。とくに高速道路においては未着用だと違反点数1点となる。
違反云々よりも、見た目からして怖すぎる。高速道路を走行するクルマのシートに立って両手でカメラを構えている状況であれば当然、体は不安定。何かのはずみで急ブレーキをかけただけでも、車外に投げ出される危険もある
(2)車両通行帯違反
昨今、取締り件数が増えている「通行帯違反」とは、おもに追い越しが完了したのに走行車線に戻らず追越車線を走り続ける行為である。追越車線は追い越しのためだけに使われる車線なので、撮影用に走り続けて良いわけがない。追越車線をふさいでノロノロ走ることは、追い越しをしたい後続車がイライラ⇒煽り運転を誘発する危険性もあることで、高速隊では積極的に検挙する流れになっている。
(3)追いつかれた車両の義務違反
道路交通法第27条第2項に定められている『追い付かれた車両の義務』は、あまりなじみがない違反かもしれないが、簡単に言えば「法定速度以下で走っている時に後続車に追いつかれたら道を譲りなさい」というルールである。一般道でも高速道路でも同様に適用される。実際に取り締まっているケースはまれだと思われるが、ドライバーとしては自分の身を守るために、また運転マナー的観点からも知っておくべきルールである。
(4)整備不良(道路運送車両法違反)
保安基準で定められた最低地上高はほとんどの乗用車で「9cm」である。9cmの中には樹脂製エアロパーツやゴム製のパーツ、アンダーカバーなどは含まれない。車両底面にある硬い物体と地面の間が9cm以上あればよい。動画からだけでは分らないが、9cm以下だと整備不良として道路運送車両法違反となる。
(5)妨害運転
道路の落下物を避けるなど正当な理由がないのに複数の車線を跨いで「ジグザグ運転」や「蛇行運転」を行うことも妨害運転に相当する。明らかに後続車の進行を妨害する目的で行われた場合に「妨害運転」となるとのこと。
(6)最低速度違反
高速道路では速すぎるのはもちろんダメだが、遅すぎるのもダメなのである。道交法第75条の4には「最低速度」の定めがあり、「高速自動車国道の本線車道を走行する際、渋滞等の正当な理由がないのに時速50キロメートルに達しない速度で進行すること」と定めている。これは法定速度100km/hの高速道路においてはゆっくり走っていることがかえって危険であるという理由だ。悪天候や工事、渋滞などによるやむを得ない場合を除いて、政令で定める最低速度に達しない速度で進行することは禁じられている。
ところで、撮影された側のランボルギーニに関しては、東海~関西エリアのオーナーズクラブが中心となっている模様。関係者とみられる人物が撮影された写真をSNSにそのまま載せていた。撮影された場所と台数は多少異なるようだがSNSのほうが台数が多い。
こうして堂々と誰もが見られるSNSに載せるということは、「悪いことをした」という意識が皆無なのだろう。その後、岐阜県警が捜査を始めたのか、書類送検されたのかなどは定かではない。
ランボルギーニやフェラーリなどクルマ好きにとって憧れのスポーツカーによる、違法行為、違法走行、大型車スペースへの駐車などの悪事が昨今は色々なメディアで報道されている。
また、動画共有ブーム(?)でインパクトのある動画がSNSにあげられ、多くの「いいね!」やスーパーカーファンからの肯定的なコメントを多数獲得している。そのような行為はサーキットなどクローズドなエリアで他の交通に迷惑を掛けない、巻き込んで事故を誘発する可能性がほとんどない範囲で行うべきではないかと思うが、いかがだろうか。
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