もうすぐ巻き返せるか!? 日産キックスの苦戦と起死回生に必要な「足りないもの」

もうすぐ巻き返せるか!? 日産キックスの苦戦と起死回生に必要な「足りないもの」

 トヨタのライズやヤリスクロス、ホンダヴェゼルなど、人気モデルが多くあり、注目度が高いコンパクトSUVカテゴリー。そんななか、イマイチ存在感を示せていないのが日産 キックスだ。e-POWER専用、分かりやすいワングレード構成、納期が早いなど、ライバルに対する優位性はそれなりにあると思うのだが、キックスはなぜこのような状況となってしまったのだろうか。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

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強気な価格設定だが、魅力は十分

 2020年6月に日本登場となった日産キックス。それまで、日産のコンパクトSUVといえば「ジューク」であったが、ジュークは2019年に販売終了、国内では、キックスがその役目を引き継ぐことになった。ちなみに欧州では、2代目となったジュークが現在販売されている。

 初のe-POWER専用車種(海外ではガソリンモデルも存在)であり、アクセルペダルの踏み戻しだけで車速を調整できる「e-POWER ドライブ」も搭載。デザインはダブルVモーショングリルとフローティングルーフでスポーティさと上質さを演出。イメージカラーにプレミアムホライズンオレンジという、明るいカラーを採用していることで、解放的な雰囲気もある。

 高速道路での運転負担を軽減してくれる「プロパイロット」や、もしもの事故の時に自動通報してくれる「SOSコール」なども全車標準装備。オプションで付けるものはアラウンドビューモニターとインテリジェントルームミラーぐらいという、充実した装備もポイントだ。

 価格は275万9000円からと強気な設定ではあるが、内容を考えると十分な魅力はある。実際、デビューしてからの出だしは好調で、2021年3月頃までは月販台数が5000台を超える月もあった。

 ところがその後は2,000台を割り込む月も目立つようになり、2022年4月の販売台数は1,121台に。同年同月のライバルと比較してみると、ライズは6,343台、ヤリスクロスは4,080台、カローラクロスは3,210台であり、キックスはかなり寂しい状況だ。

キックスのインテリア。上質感のある仕上げと個性的なカラーリングが採用されている
キックスのインテリア。上質感のある仕上げと個性的なカラーリングが採用されている

日産ラインアップの少なさと、新鮮味に欠けるデザインが影響か

 キックスの売上がイマイチな理由は、トヨタのSUVが売れる仕組みを考えるとみえてくる。ご存じの通り、トヨタはSUVのラインアップが充実しており、ライズ、ヤリスクロス、C-HR、カローラクロス、RAV4、ハリアー、ハイラックス、ランドクルーザープラド、ランドクルーザーと完璧な布陣。ディーラーにクルマを見に行って、ライズとヤリスクロスとC-HRが並んでいたらその場で比較できるし、実際に見てみたら「やっぱりこっちの方が使いやすそう」とか「このデザインの方が好み」といったように具体的な検討ができる。

 しかし日産の場合、キックスと(モデル末期の)エクストレイル、そしてようやくデリバリーが始まったアリアが並んでいても、サイズも価格帯も違うし、比較する対象にはなりにくい。こうして顧客はトヨタへと流れていく。

 そしてデザインも、キックス不振の理由のひとつだと筆者は考える。C-HRが発売された際、トヨタの資料には、「C-HRが属するコンパクトSUV市場は、他市場に比べ内外装デザインを重視するお客様が多いため、デザインにも徹底的にこだわっている」という記載があった。確かにそう思うし、実際C-HRはそれで結果を出した。

 だがキックスはスポーティで洗練されたデザインであるものの、特に印象に残らないコンサバティブなデザインに思える。本来存在感があるはずの大きめなフロントグリルも太いVモーショングリルも、高級感のあるクロームパーツもカッコいいと言えばカッコいいのだが、個性的というわけでもない。

 キックスはもともと2016年にブラジルのリオデジャネイロで発表、発売されたモデルだ。このデビュー当時のエクステリアからはお色直しがされてはいるが、インテリアはダメダメだったころの日産の内装そのまま。新鮮さや先進性という点で、ライバルに大きく劣ってしまっていた。この点は、2020年末にデビューしたノートの方が、比べるまでもなく魅力的だろう。

 しかも肝心のe-POWERは、ノートが第二世代のユニットを搭載しているのに対し、キックスは第一世代のバージョンアップ版。もちろん、初期のe-POWER(初代ノートe-POWERに搭載された世代)に比べると、パワーも静粛性も大きく向上しているのだが、それでも、新型ノートの総合的な進化に比べると見劣りする。

 そうなると、「e-POWER目当て」でクルマを選ぶ人にとってもキックスの魅力は薄れてしまうだろうし、強気の価格設定も、そこまで装備が必要のない人にとっては手が出しにくい。デビュー当初は「コンパクトSUV初のe-POWER」ということで目新しさはあったかもしれないが、その需要が落ち着いたいま、販売が落ち込んでしまっているのはうなずける状況なのだ。

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