えっ新型ヴェゼルは売りにくい? ホンダの元営業マンが考える「売りやすいクルマ」と「売りにくいクルマ」とは

■現行ラインナップで売りやすいクルマは、コレ!!

「ちょうどいい」フリード。日常に寄り添うようなこのクルマは、営業マンとしては売りやすいという
「ちょうどいい」フリード。日常に寄り添うようなこのクルマは、営業マンとしては売りやすいという

「ちょうどいい」がキャッチフレーズで人気を集めるフリードは、コンパクトさが売りのミニバンである。最近は、モデルチェンジごとにボディサイズが肥大化する傾向があるなか、フリードは全長4265×全幅1695×全高1710mmとコンパクトさを保ち、魅力のひとつである狭い道での取り回しの良さが際立つ。

「ミニバンでありながら狭くてもラクに駐車ができる」「毎日の子供の送迎で、ストレスにならない」と好評である。さらにコストパフォーマンスが抜群に良い。同カテゴリーの5代目ステップワゴン(Gホンダセンシング)とフリード(Gホンダセンシング)の価格を比較すると、約55万円もフリードは安く買えるのだ。

 よく、フリードの欠点で「3列目の座席が狭い」と言われることがあるが、こうしたネガが売りにくさに直結しないのがフリードの凄さだろう。

 実際のユーザーは3~4人家族が多く、3列目シートはあまり使われていない。故に欠点として論評される狭い3列目シートに対し、「いざという時に3列目が使えるから便利」と、称賛されることが少なくない。ユーザーのニーズを的確に捉えているフリードは、営業マンからの信頼が厚いのだ。

フリードの座席は3列目が狭めだが、使い勝手から考えると逆に「いざという時に3列目が使えるから便利」と好評
フリードの座席は3列目が狭めだが、使い勝手から考えると逆に「いざという時に3列目が使えるから便利」と好評

 また軽自動車ではN-BOXについで人気が高いN-WGN。走りの良さが特徴的だが、質感の高いクルマとして営業マンも舌を巻く1台である。

 インテリアは、水平基調でスッキリとしたデザインが売りだ。テレスコピック&チルトステアリングなどが機能性を上げ、コンパクトカーにも引けを取らない。また、レトロ調で落ちつきのあるエクステリアは、「派手なエクステリアデザインが苦手、でも他のクルマと違うオシャレなデザインに乗りたい」というユーザーから大好評だ。

軽自動車という前提が我慢が付き物という欠点ではなく維持費が安いという利点で語られるNシリーズ。WGNはBOXよりも安く落ち着いたデザインだから、おすすめしやすいという
軽自動車という前提が我慢が付き物という欠点ではなく維持費が安いという利点で語られるNシリーズ。WGNはBOXよりも安く落ち着いたデザインだから、おすすめしやすいという

 クラストップレベルの動力性能を誇るのも魅力。最高出力は58psで、ストレスフリーな高速走行ができる軽自動車だ。予防安全パッケージのホンダセンシングもしっかり搭載されスキがない。その上で、N-BOXより約15万円安いところが、売りやすさにつながる。

 フィットかN-WGNで悩むユーザーに、営業マンが勧めやすいのはN-WGNだという。安全装備も動力性能では大差がなく、N-WGNの方がリセールバリューを高く取れるので、買い替えるときの負担を軽くできる。

 やはり今でも、将来を見据え、未来を想像できるクルマが、売りやすいクルマとなるようだ。

■売りにくいクルマは?

新型ヴェゼルは「売りづらい」!?
新型ヴェゼルは「売りづらい」!?
旧型並みのグレード展開が欲しいという
旧型並みのグレード展開が欲しいという

 人気沸騰中のヴェゼルだが、「先代ヴェゼルより、新型ヴェゼルは売りにくくなった」とホンダの営業マンは感じているらしい。

 理由は選択肢の狭さにある。一般に、グレードが高くなるとボディカラーの選択肢や豪華装備を広がる傾向にある。しかし、新型ヴェゼルに用意されたグレード展開では、機能性と高級感の両立が出来ないのだ。

 営業マンが売りにくいと感じてしまう瞬間は、ユーザーの思い(考え)を覆す提案ができない時である。こうした経験が1回でもあると、その車種に苦手意識が芽生えてしまう。また、商談時にはその話題に触れないようにするだろう。

 営業マンにとって提案のしやすさは重要だ。実力は十分なクルマだからこそ、ヴェゼルは、売りにくさを改善できれば、さらに爆発的なヒットなると思う。作り手と売り手のリレーションが上手くいっていないところが、少々残念に感じる。

 売りやすいホンダ車にはストーリーが描ける。売りにくいホンダ車には立派な数字しかない。クルマは自動販売機のように無機質に売るものではなく、ユーザーと営業マンが心を通わせて販売するものだ。

 売れていくクルマと売りやすいクルマは少し違う。対面販売がまだまだ主流の自動車だからこそ、数字だけにこだわらず、感覚や想像力を掻き立てる存在であるべきだろう。

 完璧に作り込まれたクルマよりも、少し欠点があるほうが可愛らしく、売りやすいクルマになることもあるから不思議なところだ。


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