トラックのご先祖様といえば馬車や牛車だが、自動車文明が発達した今日、馬や牛はむしろトラックで運ばれる存在。お肉として人々の大切な栄養源になってくれる牛や豚、羊や家禽(鶏や鴨などの鳥類)は、どのようにして我々の食卓に届けられているのだろうか?
というわけで今回は、世界のさまざまな国の家畜を運ぶトラック、その名も「家畜運搬車」を紹介しよう。
文/緒方五郎 写真/各メーカー
※2021年9月13日発売「フルロード」第42号より
そもそも家畜運搬車ってどんなクルマ?
家畜運搬車は文字通り、牛、豚、羊などの家畜輸送で用いられる特装車。
単純に動物を積み込んでいるわけではなく、荷室の通気性や温度を最適に保つためサイドウォール(側壁)には通気窓や換気扇を装備。丸型や楕円形を開口した独特のデザインの側壁も、通気のための形状だ。
フロアは清掃しやすいよう水はけの良い設計が行なわれ、ステンレスやアルミなどの耐食性に優れた材質が用いられる。フロアを1層から3〜4層まで変更できるタイプもあり、牛は1層で、豚や羊は多層でと使い分けられ、家畜を荷室に載せるためのスロープも油圧で高さが調節可能となっている。
また、鶏や雛、鴨などの家禽類専用の運搬車では、多層ラックを備え、家禽を入れたケージ型パレットを積み込む形態となっている。
なお、家畜運搬車は基本的に国による構造の違いは少ないが、海外ではトレーラが多用されているのが特徴。オーストラリアではセミトレーラを何台もつなげた「ロードトレイン」タイプも見られるいっぽう、アメリカではピックアップトラックで牽引するトレーラも存在。バリエーションは幅広い。
バリエーション豊かな単車タイプの家畜運搬車
●ヤン・ノイエンス「仔牛運搬車」
ベルギーの特装車メーカー、ヤン・ノイエンス社が、メルセデス・ベンツ「アントス」をベースに製作した仔牛運搬車の特注車。
上モノは2層式フロア構造で、下層と上層の同時積み込みを可能とするため、側面に特注のサイドリフターを装備。庫内の内法長は7mだが、内部は区画され、側壁には換気扇を内蔵。ルーフも油圧昇降式として通気性を確保している。
●湖北永佳専用汽車「華通9.6m東風天竜家禽輸送車」
湖北永佳専用汽車は、家畜運搬車や飼料運搬車など畜産系特装車に特化した中国の特装車メーカー。このジャンルでは同国で70%のシェアを誇るという。
華通9.6m東風天竜家禽輸送車は、東風汽車の大型トラック「天龍」をベースとする子豚運搬車で、固定式の3層式フロア、積み降ろし用のガイドレール付油圧式リフターなどを装備。内部には給餌、給水装置、クーラー、ヒーターなども備わり、子豚の体調管理に配慮。ボディは全アルミ合金製だ。
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