【なぜ過去最高益が続出??】 自動車メーカーはどうやって利益を生み出しているのか

【なぜ過去最高益が続出??】 自動車メーカーはどうやって利益を生み出しているのか

為替メリットもあり、このところ決算期になるたびに「過去最高」の文字が躍る自動車メーカー。けっこうなことだが、その決算の数値を見ていて疑問に思うことも多々ある。

例えば、日産の有価証券報告書には「自動車事業の営業利益率」という項目があり、その数値、なんと2.6%。販売金融事業の営業利益率19.3%に比べ、なんという低さなのかと驚いてしまう。

もしかして、自動車メーカーの儲けはクルマ以外がほとんどなのか? とさえ想像してしまうが、実はこれにはカラクリがあり、日産が北米市場で盛んに行っているリース販売の損失を自動車事業分に組み入れているからだとか。クルマはいくら売っても儲けは「雀の涙」ほど、というわけでもない。

また、世界における日本市場の販売台数比率は少ないのに、地域別の売上高や利益になると日本がダントツに多いメーカーもあって、これも不思議。

本企画では、そんな自動車メーカーのおカネに関する謎と事実を探究する。

日本ではほとんど売れていないのに、利益の半分以上は日本が出している?

※本稿は2018年3月のものです
文:桃田健史、ベストカー編集部/写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』2018年4月26日号


■クルマを売るほか道はなし!? 自動車メーカーの儲け方

(TEXT/桃田健史)

自動車メーカーはどうやって儲けているのか? まずはその基本を国際派モータージャーナリストの桃田健史氏にレクチャーしてもらおう。

*   *   *

●新車売り切りが事業の本質

目指せ1000万台。自動車メーカーはこれまで、世界市場での販売台数競争を続けてきた。なぜならば、自動車産業の利益構造の主体が新車の販売利益だからだ。

厳密にいうと、自動車メーカーから自動車ディーラーへの販売だ。ユーザーと直接売買契約を結ぶディーラーに新車を卸した時点でメーカーの儲けとなる。

では、ディーラーの利益はどの程度あるのか。つまり、メーカーからディーラーへの卸売り価格についてだが、これは自動車業界のタブーでありメディアで詳細が公開されることは極めて稀だ。

自動車メーカーの売り上げと収益のほとんどは新車を作って売って得ている

そうしたなかで本稿で紹介できるのは、ディーラーの利益はメーカー希望小売価格の何%という設定ではなく、卸売り価格に対するマークアップ(上乗せ)という解釈が一般的だという点だ。

新車売り切り型のビジネスモデルは今後、当分の間は続くだろう。なぜならば、自動車メーカーの株価には、新車販売台数と売上高が最も大きく影響するからだ。

では、自動車メーカーにとって、1台当たりの原価率はどうなっているのか。これも業界タブーのひとつだが、自動車メーカーが発表する決算報告書などを基に一般論として申し上げると……。

いわゆる原価積み上げ式で原価は当然決まるが、それと実質的な原価は違うように思える。そのため、自動車メーカーの利益率、つまり売り上げに対する経常利益は、IT系企業は20~30%であるのに対して、5%前後と低くなるのではないだろうか。

●トヨタ銀行はトヨタグループ向けが主体

では、投資という面で、自動車メーカーはどのようにして利益を得ているのか?

新聞や経済誌などに「トヨタ銀行」という表現が載る場合がある。これは、トヨタが三井住友銀行のように一般企業や個人に貸付を行っているという意味で使われているのではない。基本的には、トヨタ自動車がトヨタグループ企業に対して貸し付けることが主体である。

別の視点での投資では、自動車メーカーにとって最も大きい製造施設に対する設備投資がある。名前は投資だが、実質的には経費であって、投資益を得るものではない。

こうしたなか、最近はAI(人工知能)のアルゴリズム開発を行うような最先端IT企業への投資が目立つ。3年ほど前から、GMやフォードがシリコンバレーで、またジャーマン3(ダイムラー、BMW、VWグループ)はイスラエルや旧東欧諸国などでのIT系企業の青田買いが目立つようになった。

またトヨタがシリコンバレーと米東海岸、さらに東京にもTRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)をオープンさせて、その事業の一部としてCVC(コーポレイト・ベンチャー・キャピタル)の事業が進む。

こうしたIT系企業への投資は人材発掘への投資という意味合いが強い。自動車メーカー各社で技術や人材を取り込むことは当然だが、欧米自動車メーカーでは「小さく買って育てて大きく売り抜く」という投資家的な感覚も持ち合わせているように思える。

●製造業からサービス業へ

以上のように、自動車メーカーの利益構造を見てみると、いまだに旧態依然とした製造業の色合いが濃い。ところが、「自動運転」「コネクテッド」そして「EV」という3つの技術領域と「シェアリングエコノミー」が融合することで、新たなる自動車サービス事業の領域が今後、急激に拡大しそうだ。

これを一般的にMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)と呼ぶ。例えば、日産とDeNAが3月から横浜で実証試験を行っているイージーライド。また、VWグループがジュネーブショーで2022年までにMaaS事業に総額4兆円規模の投資を行うと発表した。

欧米のコンサルティング大手各社の予測によると、いまから17年後の2035年には、自動車メーカーの利益の約4割がMaaSなどの新規事業から得ることになるという。

自動車産業はいま、製造業からサービス業への転換を迫られている。

次ページは : ■数字で見る日本の自動車メーカー実力と特徴

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

終売が報じられたマツダ6はこのまま終わるのか? 否!! 次期型は和製BMW3シリーズといえるような魅力度を増して帰ってくる!? 注目情報マシマシなベストカー4月26日号、発売中!