【なぜ過去最高益が続出??】 自動車メーカーはどうやって利益を生み出しているのか

■数字で見る日本の自動車メーカー実力と特徴

(TEXT/ベストカー編集部)

ここからは、今年2月に出揃った国産乗用車メーカー7社(ダイハツはトヨタの子会社となり上場廃止)の第3四半期(2017年4月~12月)決算のデータをメインに、今の自動車メーカーの動きを数字で追ってみる。

各社が得意としている地域や、日本市場に対する力の入り方などがわかるはず。数字は雄弁だ。

●営業利益率

2017年度 第3四半期で最も利益率が高かったのはスバルで、唯一10%超えを果たしている。2番手はスズキで9.5%。

●研究開発費

これも第3四半期の数字。ダントツ1位のトヨタは2017年度通年では9200億円に達する見通し
となっている。自動車業界大変革の時代だけに、金に糸目は付けられない。

※研究開発費についてはこちらの記事もどうぞ!

●地域別販売台数の割合

第3四半期のデータ。国内の比率が最も高いのはトヨタ(とダイハツ)だが、それでも24.5%で、海外頼みは明らか。スバルの北米比率が69%に達しているほか、この表では「その他」に入っているが、スズキはインド市場の比率が51.8%となっている。また、三菱も「その他」が多く、新興国市場に力を入れていることがわかる。

●国内、海外の生産比率

2018年1月の単月データより。国内生産の比率が最も高いのはスバルで6割超え。販売は北米頼みだが、生産は日本がメインだ。逆に、少ないのは日産とホンダで2割以下となっている。

●売上高、営業利益の地域別割合

第3四半期のデータ。販売は海外がメインでも、利益は日本で得ているメーカーがほとんどだが、その理由は次ページで紹介している。

スバルは日本、北米、その他の3つで分けており、欧州などは未発表。三菱は利益の7割以上がアジア市場。ホンダもアジアが多いのは二輪事業が入っているからだ。

●株価と時価総額

3月16日現在のデータ。トヨタがナンバーワンなのは当然だろうが、2位のスズキも株価では大健闘。トヨタ以外では唯一5000円台を維持している。

発行ずみ株式総数×株価で算出される時価総額では、トヨタが22兆円超えで他社を圧倒。なにしろトヨタは日本の全企業で2位になるNTTドコモの10兆7600億円に2倍以上の差をつけているのだ。

気になるのは日産の株価の低さとマツダが唯一時価総額で1兆円を切っていること。一般評価は低めなのか?

*   *   *

 以上、国産乗用車メーカーの決算データなどから各社の実力と特徴を探ってきた。

北米一本足打法ながらトヨタ以上の利益率を誇るスバル、新興国に強いことが数字でも立証できた三菱、販売も生産も完全に海外シフトしているようにみえる日産&ホンダなど、各社それぞれの考え方や方法で、生き残りをかけて戦っている様が想像できるのではないだろうか。

各社が個性を出して、日本車の挑戦は続いていく

下のコラムでは、決算の数字で不思議に思ったことを専門家に質問している。読んでいただければ、さらに理解は深まるはずだ。


■トップ自動車アナリストに聞く 中西孝樹先生教えてください!

中西孝樹氏は自動車業界を専門に扱うトップアナリスト。各社の2017年度第3四半期決算の数字をみて、編集部が気になったところをうかがった。

●自動車メーカー7社の平均営業利益率7%(2017年4~12月期)というのはいいのですか、悪いのですか?

上場全企業の平均利益率5.7%(日経データ)を超えていますから、7%はいい数字といえるでしょう。自動車メーカーはここ数年、為替メリットもあって過去最高益を更新していて、利益率は上昇しています。

●そのなかでもスバルは11.9%と突出していいのはなぜですか?

これでも下降気味で、少し前までは17%くらいありました。スバルは事業効率に優れているのです。プラットフォームはSGP(スバルグローバルプラットフォーム)だけでエンジンは大きく3つ、CVTはひとつ。それに主要マーケットは日本とアメリカだけだし、工場も基本的に日米の2カ所だけで、それが100%稼働で回っていますからね。

ここまで高効率なオペレーションは非常に特殊なケースです。スバルは日米でブランド力が高く、そこに向けて出している商品が成功しています。「集中」がうまくいっているわけですね。ただ、今後はEVやPHVも必要になってくるなかで、これからもこのやり方が持続できるとはかぎりません。

●日産は日本国内の販売比率は9.2%と低いのに、なぜ売上高の30%、営業利益の64.4%を日本で稼いでいるのでしょうか?

日本はクルマの保有台数が約8200万台(2017年末)と多く、補修部品で稼げます。また、販売台数の9割以上は海外ですが、日本から完成車を輸出する場合もあるし、海外生産の場合も部品の3割くらいは日本から送っていますので、その金額も入ります。さらに海外の子会社から日本の親会社に支払われるロイヤリティなどもあり、クルマは海外で生産、販売しても日本に利益が出る構造になっているわけです。

つまり、日本の利益の大半は、実際は海外から入ってきているものです。でも、昔から貿易摩擦などいろいろありましたから、日本のメーカーはそれをあまり公表したくないんですね。決算のデータではわからないのですが、我々の計算では日産の場合、利益の6割程度は北米で稼いでいて、日本は15~20%程度と見ています。

なかにしたかき/ナカニシ自動車産業リサーチ代表。一貫して自動車業界の調査を続けてきたトップアナリスト。その知識と経験を生かし、日米の経済誌人気アナリストランキング1位の常連。

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

マツダ6、実は水面下で開発が続いていた!? 注目新車情報、グッズが当たるアンケートも展開「ベストカー4月26日号」

終売が報じられたマツダ6はこのまま終わるのか? 否!! 次期型は和製BMW3シリーズといえるような魅力度を増して帰ってくる!? 注目情報マシマシなベストカー4月26日号、発売中!