ベストカー本誌で毎号連載している自動車評論家・国沢光宏氏の「クルマの達人になる」。
第599回となる今回のテーマは「公道における電動キックボードの危険性」。
街中でも見かける機会が増え、今年(2022年)4月には道路交通法改正による規制緩和が可決されたことで今後さらにユーザーが増えることが予想される電動キックボードだが、実際に公道で走らせると危険な乗り物であることも事実。
そこで、実際に電動キックボードを所有しており、危険性についても熟知している国沢光宏氏が解説!
※本稿は2022年5月のものです
文:国沢光宏、写真:AdobeStock(メイン写真=terovesalainen@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2022年6月10日号
■公道の電動キックボードは危険だらけ
電動キックボードは公道を移動する乗り物のなかで歴代最悪の安全性だと断言する。
よくぞあんな乗り物を車道で走らせることにしたもんだ、と呆れます。痛ましい事故の増加に起因する社会問題化は避けられないと思う。
なぜ国沢光宏がそんなことを言うのだろうか?
こらもう簡単。自分でも『ナインボット』という電動キックボードを愛用しているからだ。
使い方次第ですんごく便利な乗り物ながら、同時に危険性も無限大といってよかろう。
そもそも操縦安定性が徹底的に悪い。広くて平坦なコンディションのいい路面状況で走らせると間違いなく「こりゃ楽しい。凄くいいね!」になる。保証を付けたいくらい爽快です!
けれどハンドリングは超シビア。自転車なら余裕でクリアできるような幅の一本橋や、自転車だと問題なく通過できる間隔のスラロームをやらせたら、相当乗り慣れている人だって難しい。
一本橋でいえば20cm幅すら通れまい。車道の路肩をフラフラせず走ることなどできないと思う。
決定的なのは外乱に弱いこと。タイヤ直径が小さいため(私のナインボットは大きめながら9インチしかない)、路面の凸凹に対し極めて敏感。
5インチタイヤを履いている電動キックボードにも試乗したけれど、20km/h出して2cmくらいの段差に斜めから入ると運よくて危険なくらいフラれ、普通なら乗り越えられずコケます。
コケた側が車道でありトラックとか走っていたら「ペシャ!」で人生終了になってしまう。
加えて電動キックボードのタイヤってソリッド(ゴムだけ)。基本的にウエットグリップなど考えていない。少し濡れていたら猛烈に滑る。
車道の鉄製マンホールのフタはアイスバーンの如し! 少しバンクさせて通過したらフロントから滑って転倒だ。
私のナインボットで濡れている路面走って転倒した人は、顔面から血を出して帰って来ました。大きなケガじゃなかったからよかったけれど、公道だったらほかのクルマに轢かれる危険性だってある。
さらに危険なのがサーフィンやスノーボードのように横を向いて前後に足を乗せるタイプでなく、前を向き左右に足を開いて乗るタイプの電動キックボード。
左右に掛ける体重を少し変えただけで曲がろうとする。乗ると「こりゃダメだ!」。
私が知る限り、こういった挙動の乗り物は存在しない。スノーボードもサーフィンも、真正面向いて足を揃えたらまともにコントロールできないです。前を向くならシート付けて重心を一つにしないとダメ。
ということで自分や家族が乗るのなら、車道と歩道の区別のなく車両も歩行者も少ないローカルな道は上限速度15km/hくらい。
車道と歩道の区別がある交通量の多い場所だと、車速6km/hに抑えて歩道を通行すればいいと思う(合法です)。
そしてタイヤ径は最低で9インチ程度欲しい。安全に留意して乗るという条件付けたら便利&ECOなラスト1マイルの移動手段になるだろう。
『ベストカー』で比較試乗をやってみたい!
【画像ギャラリー】2つの理由を時短チェック!!! 電動キックボードはなぜ危険!?(3枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方ペシャで人生終了じゃ済まない
トラックを運転するドライバーの人生も大いに影響受ける
専門誌ならば軽々な茶化した表現ではなく議論ではなくしっかりと担当行政、市場ステークホルダー、特にごり押した人間に対し、善意のドライバーを守るために、必要な提言を行なってください
6km/hに抑えて歩道を通行するやつなんていない