障がい者用駐車スペースを健常者が使ってもおとがめなし? なぜ無法地帯になっているのか??


 高速道路SA/PAや大きなショッピングモールの駐車場に行くと、建物の入り口近辺やトイレのすぐ近くの便利な位置に用意されている「障がい者用駐車スペース」。社会的に重要な設備ではあるが、悪用されているケースもあるようだ。

文/加藤久美子、写真/加藤博人

【画像ギャラリー】横行する「障がい者用駐車スペース」に不当に駐車するクルマたち…なんとかならんのか……(画像で確認)(20枚)画像ギャラリー

■東京オリパラを契機に急増

 大きなショッピングモールの駐車場や高速道路SA/PAの駐車場には、ほぼすべてに、障がい者用・車いす利用者向けの駐車スペースがある。東京オリンピック・パラリンピック開催を機に、特に首都圏で設置が増え、屋外の駐車場ではより快適に安全に使えるよう屋根付きなどに改修される例も増えている。

 名神高速道路にある「草津PA」には2台ぶんの障がい者用駐車スペースがある。一般的な障がい者用に比べて幅が広く、3.5m以上ある。自分でクルマを運転し、独力で車いすをクルマから降ろして移乗するクルマにとって非常に使いやすいスペースだ。

障がい者用(車いす利用者用)駐車スペースに駐車するトラック。一瞬、このSA/PAで作業するためかとも思ったが、そうでなく単に資材を運ぶ途中のようだった

 平日の朝7時頃、筆者はしばらくここを観察していた。次々と健常者らしき人が複数人で乗るクルマが駐車してくる。朝の時間帯だったからか、建築資材をたくさん積んだトラックも駐車してきた。中から作業員風の男性が2名降りてきたが、車いすは使っておらず、歩行困難な様子もない。トラックの荷台には資材がたくさん積まれているから、このあと現場へ行くのだろう。

 若い女性グループのクルマも入って来た。停まると同時に3人が降りて、軽い足どりで施設へ入って行った。その後も入れ代わり立ち代わりいろいろなクルマが入って来たが、ダッシュボードに「歩行困難者」のための「駐車禁止除外指定車標章」を掲示したクルマはなかった。1時間近く停めたままのクルマもあった。

「車いすを使っていなくても、見た目からはわからない障害を持っている場合もありますよ」という人もいるだろう。長い距離を歩くのが大変だから、近くに停めたい、というケースもあるだろう。しかし、たとえば自らクルマを運転し、ひとりで車いすをクルマから降ろすような人にとって、障がい者用スペースは「この場所にしか停められない場所」なのである。

 こうした状況は、高速道路のSA/PAだけではない。混雑するショッピングモールの駐車場にはたくさんの健常者らしき人のクルマが停まっている。これらの車両はなぜ取り締りができないのだろうか。

 筆者が警察に聞いたところ、なんとも生ぬるい返事が返って来た。

「私有地ですからね~…。施設側に対応してもらうのがいいと思いますよ。警察が取り締まることはできません。施設が管理している駐車場ですから、施設の方に話されてはどうでしょうか」

 予想通りの残念な答えである。

 ちなみにかつてこの件は国会で請願が出されたことがある。第154回国会(2002年)の『障害者用駐車ますに駐車する健常者に対する罰則規定の新設に関する請願』(新件番号3770)である。要旨は以下。(原文ママ)

「高速道路等の障害者用駐車場について、”ハートビル法”(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)では、障害者用の駐車ます数を駐車総数の二%以上と定めている。しかし、平成十二年の調査によると、高速道路のサービスエリア及びパーキングエリアにおける障害者用駐車場のます数は同法の基準を満たしていないことが判明している。そのうえ、健常者が障害者用駐車場を利用するマナー違反もあり、障害者が利用できる駐車場は不足している。

 一方、車いすを常用する障害者が自ら自動車を運転し駐車する場合は、ドアを全開にして運転席から車いすに乗り移る必要があるため、車体分のスペースの両側に幅一メートル以上の乗降用スペースが必要となる。このため、障害者は一般の駐車場を利用できない。健常者に対するマナーの啓発だけでは効果がないため、障害者用の駐車ますに健常者が駐車した場合については罰則規定を設け、障害者がいつでも利用したいときに障害者用駐車場を利用できるようにすることが求められている。ついては、次の事項について実現を図られたい。」

 この請願はどのような扱いとなったのか。資料には「結果:審査未了」とある。参議院の広報担当者に聞いたところ、

「保留になって、第154回の会期末に消滅しました」

 との回答だった。なんとも残念なことに、素晴らしい請願は請願が出された国会の会期末に消滅していた。

 その後、高速道路のSA/PAでは障がい者用駐車枠の数も増え、より幅広い駐車枠を設けるSA/PAも増えた。しかし、「健常者による不当な駐車の罰則」については現在も進展はないようだ。

 今から20年も前に、「車いすを常用する障害者が自ら自動車を運転し駐車する場合は、ドアを全開にして運転席から車いすに乗り移る必要があるため、車体分のスペースの両側に幅一メートル以上の乗降用スペースが必要となる。」ということは認識されている。この時点で障がい者用の広い枠じゃないと停められないクルマの存在は国会でも認識されていたわけだ。

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