■「渋滞税」回避のためにロンドン市内は大混雑
筆者が帰国のためにエディンバラからロンドンに戻った日は、エリザベス女王即位70周年記念を祝う4連休明けの月曜日。まさにその日に、全面ストライキが実施されて地下鉄が完全にストップしていたこともあり、ロンドン市内は大混雑。
地下鉄に乗れず、大きな荷物を抱えていたのでロンドンシティ空港からホテルまでの移動にウーバータクシーに乗った。運転手のポーランド出身の気のいいお兄さんに話を聞いてみた。
「この道、いつもこんなに混むの?」「渋滞税適用区域を迂回するクルマが集中する道が決まっていて、そこはいつもひどい渋滞だ。ストライキのせいでイーストロンドン中心にいつもよりクルマが多い。
Googleマップだとキングスクロスの交差点まで3キロ進むのに45分かかる、と出ているよ。渋滞税のせいで大渋滞して空気が汚染されるなんて、本当にバカげてる。金儲けのための仕組みだよ」と嘆いていた。
これが東京や大阪などの大都市に、渋滞税やEV専用ゾーンが導入されれば、課金を回避するクルマが出てきて同様のことが起きるのは間違いない。これは絶対真似してほしくない。
渋滞税適用区域には特段ゲートのようなものはなく、監視カメラでナンバーが自動認識され、ETCのように自動引き落としかアプリその他で15ポンド、約2400円を決済する。気をつけていないと気づかずに入ってしまいそうだ。
■ロンドンではいたる所にEV用の充電ステーションが、タクシーも道端で充電
ロンドン市内中心部では「超低排出車のみ通行可」ゾーンが設定されているせいもあって、EVが非常に多い。そのためパーキングメーターのように充電ステーションがあり、実際に結構使われていた。
ロンドンタクシーは、これまでLTI社(London Taxi International)が作っていたが、中国の民族系自動車メーカー、GEELY(吉利汽車)が傘下に収め、新型ロンドンタクシーTX5を開発し、生産。現在はLEVC社(London EV Company)として展開している。
このTX5、クルマの図体が大きくて、どこかで見たことあるな、この威圧感、と思って考えてみたら、ロゴもヘッドライトやテールライトの雰囲気も、イギリスの名門ブランド、現ドイツ資本保有のクルマによく似ていた。
■車歴40年超のクラシックカーは車検が不要
日本と違ってイギリスではクラシックカーを大切に扱う文化がある。具体的には、車歴40年以上で、直近30年間に大きな改造が加えられていないクラシックカーやバイクなどは、車検と自動車税が免除されるのだ。
日本では、車歴が13年を超えると、自動車税が約15%、自動車重量税が約4割、18年を超えると自動車重量税は5割超の増税となる。一般的には旧車は大切に乗られていて年間走行距離も少ないことが多く、環境に対する負荷が高いとは必ずしも言えないのに、「エコでない」として懲罰的な課税が行われている。
クルマ文化をさまざまな面から支えていこうというイギリスと、単に経済政策として新車の売れ行きだけが伸びればいいという日本との大きな違いが現れている。
一つの国に自動車メーカーが8つもあり、これだけ大きな基幹産業になっている自動車生産世界第3位の自動車大国の日本が、クラシックカーを国が大事にしない。改めて悲しくなった。いい加減、クラシックカーへの重課税を廃止してほしい。そして、税金を安くする、英国のようなヒストリックカーナンバー制度を創設してほしいものだ。
以上、日本とイギリスとのクルマ事情の違い、日本がイギリスに見習うべきこと、そうでないことについてまとめてみた。イギリスはやはり多様性が大事にされる国、走っているクルマもEVからクラシックカーまで見ていて飽きることがなく、クルマ好きにはたまらない国だった。
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