■スペック=クルマの価値ではない
燃費や室内の広さなど、数字で表すことができるクルマの性能は多い。燃費で言えば0.1㎞/Lの差が価値となり、広さや大きさなどは1㎝の差で、クルマ選びが決まると言ってもいい。それだけ、カタログスペックは大切な数字だ。
ほとんどの場合、ライバル車との数値の差は、営業マンの頭の中に入っている。優位な点、不利な点を理解しながら、自社製品をうまくアピールしていくものだった。
数字は絶対的な尺度であり、そのクルマの価値である。そう思っていた営業マンたちの概念を大きく変えたのがアルファードとヴェルファイアの存在だ。
例えばミニバンで重要視される乗降性で見てみよう。アルファード・ヴェルファイアはスライドドアの下端で450mmの高さがあるのに対し、ノア・ヴォクシーは380mmである。低床低重心を打ち出していた、ホンダ・オデッセイはさらに低く、2列目の乗降性は明らかにアルヴェルが劣る。
また、床面が高いため、室内の高さを確保するために全高を上げざるを得ない。アルヴェルの全高は1,935mmと他車に比べて圧倒的に高いのだ。
床面が高く、全高が大きくなることで、燃費・乗り心地・走行安定性などが犠牲になる。それでも、数字では表せない空間美や、あえて見下ろす形になるクルマの特性を、ユーザーは選んでいくのだ。
アルファード・ヴェルファイアを見ていると、カタログに載っている数字に、本質的な価値がリンクしないことが、よくわかった。他車であれば重要になるスペックも、アルファード・ヴェルファイアにかかれば、無意味なモノと化す。
それだけ、他に魅力が多いということなのだろう。
セオリーや普通が存在しないのがアルファード・ヴェルファイアの取り扱いだ。特に現行型では、その凄さが顕著に現れている。
次世代の登場へ向けて、早々と販売を終えたアルファード・ヴェルファイア。モデルチェンジでは、どのような驚きを届けてくれるのか、楽しみに待っていたい。
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