e-Fuelは、CO2とH2から生成される合成燃料
e-Fuelの具体的な生成法は、火力発電所や工場から排出された高濃度のCO2を回収(将来的には大気中のCO2を濃縮)し、そのCO2を熱分解してCO(一酸化炭素)に変換します。一方で水を電気分解して、H2を生成。COとH2ができれば、古くからあるフィッシャー・トロプシュ法によって、液体の炭化水素(燃料)CnHmが合成できます。
ポイントは、この生成過程では再生可能エネルギーによる電力を用いること。ここで、原油由来の燃料を用いたら意味がありません。また、CO2も水素も自然界には無尽蔵にあるので、回収する手段さえ確立できれば、永遠に生成できるという大きなメリットがあります。
原油由来のガソリンや軽油も炭化水素なので、同じ組成の炭化水素の合成燃料CnHmができれば、現行のガソリンと軽油と同じ特性の合成燃料ができるというわけです。このような経緯から、合成燃料e-Fuelは「人工的な原油」として期待されています。
電動化だけではカーボンニュートラルは実現できない
現在、カーボンニュートラル実現のための本命として挙げられているのは、電気自動車(BEV)です。世界中で、2030年から2040年にかけて、新車のすべてを、BEVを中心とした電動車にするという目標が掲げられています。しかし、電動化だけでは目標達成は困難であり、ほとんどのメーカーはCNFの使用が必須と考えています。その理由は、次の2つです。
・BEVの「ライフサイクルCO2」が下がらない
確かに、BEVは走行中にCO2は排出しませんが、太陽光や風力、地熱といった再生可能エネルギーのような、CO2を排出しない発電の比率が高まらなければ、発電や電池の製造過程で多くのCO2が排出されます
・2040年~2050年でも70%~80%がエンジン搭載車
今後電動化が推進されても、国際エネルギー機関の予測では2040年でも途上国を中心にエンジン搭載の既販車が数多く残り、その割合は80%を超えるとされています。これらのエンジン車のCO2を減らすために、CNFの使用は必須なのです。
「敵は炭素、内燃機関でない」という豊田章夫社長の発言のように、エンジンが悪いのではなく、燃料に含まれるカーボンが悪いわけで、高効率エンジンとCNFを組み合わせれば、燃費に優れたカーボンニュートラルなエンジンが実現できるのです。
メリットは大きいCNFだが、課題はコスト
CNFの普及は、前述したカーボンニュートラルの燃料としてメリットの他にも、下記のようなメリットがあります。
・従来のエンジンが使えるため、メーカーは開発や生産設備がそのまま使え、これまで通り継続的な雇用が確保できる
・既存のガソリンスタンドが使え、新しいインフラ(充電や水素充填設備など)を急増させる必要がない
・BEVのバッテリーに比べて、従来のガソリンや軽油と同様エネルギー密度が高いので、車重を増やすことなく、航続距離が確保しやすい
・現在世界中で問題となっているような原油依存が軽減できる
課題は、製造技術の確立であり、製造コストが高いことです。e-Fuelのコストは、水素の製造コストに大きく依存し、経産省「合成燃料研究会」の資料では、700円/Lと試算されています。実際のガソリンには、ガソリン税(揮発油税と地方揮発油税)や消費税がかかり、現在160円/L程度まで高騰していますが、これがe-Fuelになると、課税のない状態でも50L補充すると35,000円もかかってしまいます。まだまだ、普及のレベルにはありませんが、CNFに関する日米欧の多くのプロジェクトが、2040年頃の商用化を目指して動き出しています。
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カーボンニュートラルに向けては、とにかく電動化、EV一辺倒の風潮がありますが、多くのメーカーはこの動きに懸念を抱いています。もちろん、電動化が効果的であることに疑いの余地はありませんが、CNFも効果の大きい有力な選択肢であり、両方を組み合わせて推進することが、カーボンニュートラル実現には不可欠なのです。
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