たった2発でロシアのミサイル巡洋艦を沈没させたミサイルとは? 自衛隊の対艦ミサイル装備は?

■艦艇の防御能力とそれを打ち破るミサイル能力

 そもそも戦闘艦艇は、航空機などと違い、移動速度が遅い。しかもその動きは、平面的なので、狙うほうにとっては、容易な目標といえるだろう。

 しかし、だからといって艦艇は、沈めやすいわけではない。というのも、対空レーダーや対空ミサイルを備えており、高い防御能力を持っているためだ。なかでも、特に防御能力の高いイージスシステム搭載艦では、その防御能力は水中にまでおよぶ。

 そのため対艦ミサイルには100km~300km以上にも及ぶ射程の長さや敵のレーダーの探知高度よりも低高度を飛翔できるなどの能力が求められるのだ。

 対艦ミサイルはプラットホームから発射され飛翔姿勢と高度が安定するまでの初期誘導、入力されたデータに基づいてINS(慣性誘導装置)で自立飛行したりGPSなどの外部情報で修正しながら飛翔を行う中間誘導、目標に接近しロックオン、IR(赤外線)ホーミングやアクティブレーダーホーミングで目標に突入する終末誘導の3段階で誘導される。終末誘導がホーミング誘導なのは、艦艇は船体が大きくレーダーを反射しやすいのと、常に熱を放出しているためである。

 ところで、現代の戦闘艦も昔の戦艦や巡洋艦のように防御のための装甲が施されているかというとそうではない。対艦ミサイルの威力が増して1発で軍艦を撃沈できるようになった現代では、艦に装甲を施すような防御法は効果がないからだ。しかも小型で高速、海面をはうようにして飛翔してくるミサイルは探知・撃墜がむずかしい。

対艦ミサイルの仕組み
対艦ミサイルの仕組み

 そこでミサイルが命中しないように複数の対空防御システムを装備して艦隊や個艦防御を強化する。イージスシステムが開発されたのも対艦ミサイルの脅威によるところが多い。

■航空機から攻撃する空対艦ミサイル

 空中発射型の対艦ミサイルといえば、フランス製のエクゾセが有名だ。

 1982年のフォークランド紛争で、アルゼンチン海軍のシュペルエタンダール戦闘攻撃機から発射された2発のエクゾセの内1発がイギリス海軍の駆逐艦シェフィールドに命中、大規模火災を起こして撃沈させている。またイランイラク戦争(1980年~1988年)では1987年にイラク空軍のミラージュF1から発射されたエクゾセがアメリカ海軍のオリバー・ハザード・ペリー級ミサイルフリゲート「スターク」に命中し大破させたことでも有名になった。

 エクゾセには空中発射型のAM39の他に艦上(地上も含む)発射型のMM38(射程42km)、改良型のMM40(射程70km)、潜水艦発射型のSM39(射程50km)、能力向上型MM40(射程70km)などがあり、西側諸国を中心に多数使用されている。ブースターおよびサステナーは固体燃料ロケットモーター(MM40ブロック3のみサスティナーがターボジェットエンジン)で、中間誘導にはINS、終末誘導にはアクティブ・レーダー・ホーミングが使われる。

 空対艦ミサイルでエクゾセと並び有名なものはアメリカ製のハープーンで、30カ国以上で使用されている。ハープーンにも空対艦型、艦対艦型(潜水艦発射型)があり、空対艦型はアメリカ軍でAGM-84として正式化されている。AGM-84にはD、F、Jがあり射程がそれぞれ異なり124km~315kmに及ぶ。

 ところで我が国の空中発射式の対艦ミサイルを見てみると、現在使用されているのは航空自衛隊のF-2が運用する80式空対艦誘導弾(ASM-1)、93式空対艦誘導弾(ASM-2)の後継として開発されたASM-3。海上自衛隊のP-3CおよびP-1が運用するAGM-84ハープーン、91式空対艦誘導弾(ASM-1C)がある。

対艦ミサイルを運用できる航空自衛隊のF-2戦闘機(写真/航空自衛隊)
対艦ミサイルを運用できる航空自衛隊のF-2戦闘機(写真/航空自衛隊)

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