■コンパクトはフィットがセンタータンクで実用性満点
【現行型はこうだ】
コンパクトカーには、ボディの小さな5ドアハッチバックが含まれる。インプレッサスポーツのような3ナンバー車もあるが、人気は高いのは全長を4100mm以下に抑えた5ナンバー車だ。
小型車の中でも最小サイズのカテゴリーで、売れ筋の価格帯は、1.2~1.5Lのノーマルエンジン車が140~170万円になる。
この価格帯は全高が1600mmを超える背の高い軽自動車に近く、ユーザーもコスパを重視して選ぶから価格競争に発展した。機能や装備の割に価格が安くないと、売れ行きを伸ばせない。
そこで推奨される買い得車がフィットだ。全長は4000mm以下で、全高も1550mmを下まわるから立体駐車場を使いやすい。
燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く積載性が優れる。プラットフォームも空間効率を重視したから、後席の足元空間はLサイズセダン並みに広い。
このように機能を高めた結果、フィットは街中で運転しやすく、4名乗車も快適で、荷物を積みやすい。乗り心地は少し粗いが、発売当初に比べると改善された。
安全装備のホンダセンシングは、センサーにミリ波レーダーと単眼カメラを併用して歩行者の検知も可能だ。運転支援機能には、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールや操舵の制御も備わる。
これらを標準装着した買い得な推奨グレードは、ノーマルエンジン搭載車であれば13G・Lホンダセンシング(165万3480円)、ハイブリッドならハイブリッドLホンダセンシング(207万9000円)になる。
【従来型はどうだったのか】
フィットは今でもコスパが抜群に優れているが、これを確立させたのは2001年に発売された初代モデルだった。
今日と同様に燃料タンクを前席の下に搭載して、4名乗車の快適な居住性と広い荷室、個性的なシートアレンジを備えた。エンジンは1.3Lで、CVTの採用により10・15モード燃費は23km/Lと優れる。さまざまな機能がライバル車をリードしていた。
しかも価格は、実用装備を充実させた中級のAが114万5000円(税抜き)とされ、ライバル車に比べて大幅に割安だった。
その結果、初代フィットは、エンジンが1.3Lのみでグレードも3種類に抑えながら、2002年にはワゴンRやカローラシリーズを抑えて国内販売のナンバーワンになっている。
その結果、ライバル車の多くが価格を改訂して、コンパクトカーのほぼすべてが114万5000円に買い得グレードを用意した。
■スポーツカーはスイフトスポーツだ
【現行型はこうだ】
コスパを考える時に、スポーツモデルは評価が難しい。もともとコスパを重視するユーザーが少なく、優先される機能もユーザーによって幅広いからだ。
そしてスポーツモデルを敢えて定義すると「カッコ良くて運転の楽しいクルマ」になり、3列シートのミニバン、ボディやエンジン排気量の小さなコンパクトカーに比べて曖昧になる。
そこでまずはコスパを優先させ、この中からスポーティな性格の仕様を探すことにする。そうなると2人乗りのスポーツカーは対象からはずれる。2人しか乗れない時点で、コスパが下がるからだ。
選んだのはスイフトスポーツだ。基本的には大量生産されるコンパクトカーのスイフトだから、実用性を重視して開発され、フィットなどと同じくコスパと価格競争力が優れている。
そこに最高出力が140馬力の1.4Lターボエンジンを搭載して、6速のMTとATを用意した。
ちなみに価格が比較的求めやすいコンパクトカーに、性能が少し高いエンジンと足まわりを与える手法は、1976年に発売された初代フォルクスワーゲンゴルフGTIあたりで確立された。
初代ゴルフGTIは高い評価を得たが、この背景には、ベースとなったゴルフの走りの良さがあった。
ベースの素性が悪いと、いくら巧みなチューニングを施しても、優れたスポーティカーにはなり得ないからだ。
その意味ではスイフトのベーシックなグレードも、走りの素性が優れている。後席や荷室は狭いが、走行安定性が高く、操舵に対する反応も素直だ。
だからこそ、性能を高めたスイフトスポーツも、安心して運転の楽しさを満喫できるコスパの高いスポーティカーに仕上がった。
スイフトスポーツの価格は、セーフティパッケージ装着車の6速MT仕様が192万2400円となる。価格が200万円を下まわるスポーツモデルは、今では貴重な存在だ。
【従来型はどうだったのか】
スイフトの人気を高めたのは、2004年に発売された2代目だった(海外では日本の2代目が初代スイフトと認知されている)。
外観には塊感が伴い、インパネの周辺も質感が高い。そしてサスペンションが柔軟に動き、乗り心地が上質だった。
欠点は走行安定性で、危険回避の操作をすると後輪の接地性が削がれやすい。これは開発部門でも解決すべき課題とされ、2010年発売の3代目で大幅に改善されたが、2代目も価格の割に乗り心地を含めて各部の質感が高かった。
後席や荷室は狭くても、クルマ好きのユーザーにとってはコスパが優れていた。
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