庶民の味方!! 実用性抜群!! 平成大不況を乗り越えたクルマ5選

 平成は波乱万丈の時代だったかもしれない。自動車界においてはバブル期の自動車の販売台数の多さから一転、不況によってクルマに乗るハードルがあがってしまったこともある。

 そんななか、庶民の生活を支え、高い完成度を誇った名車たちがいた。そんなコスパが高いクルマたちを探してみました。現行型と過去を振り返り、いかに平成を乗り切ったのか迫ります。

文:渡辺陽一郎/写真:ベストカー編集部


■ミニバンはセレナのコスパが凄かった!!

【現行型はこうだ】

 商品のコスパ(コストパフォーマンス/買い得度)は、商品力と価格のバランスで決まる。クルマの商品力は、走行性能、乗り心地、装備、車内の広さ、内外装のデザインや質感まで幅広く、ユーザーが何を重視するかでコスパの優れたクルマも違ってくる。

 ここではカテゴリーに応じて、多くの読者諸兄から共感の得やすい車種を挙げたい。必然的に人気車が多く入る。

e-POWERの投入などセレナの展開には大きなテコ入れもあった。使い勝手のよさのみならず、走りの楽しさも訴求できる数少ないミニバンだ

 ミニバンのコスパには、居住空間の広さと多人数乗車時の快適性、荷室の容量、シートアレンジなどが大きく影響する。そこで注目されるのがセレナだ。標準ボディが5ナンバー車になるミドルサイズミニバンでは、室内が最も広い。

 ライバル車のステップワゴンやヴォクシー3姉妹車と比べて、特に差が付くのは3列目シートだ(スライド機能装着車)。スライド位置を後端まで寄せると、足元空間が大きく広がる。

 シートのサイズにも余裕を持たせたから、3列目にもゆったりと座れる。大人6名が乗車して、長距離を快適に移動できる。

 シートアレンジも多彩だ。2列目の中央部分が1列目の間までスライドして、空間になった中央部分を3列目に移動するための通路として使える。荷室容量にも余裕を持たせ、運転支援機能のプロパイロットも選べる。

 前述のライバル車に比べると床が約70mm高く、乗降性が見劣りして高重心になってしまう。緊急自動ブレーキの作動上限速度が時速80kmにとどまるなど改善すべき点もあるが、ミニバンのユーザーが重視する居住性、シートアレンジ、荷室の広さと使い勝手は満足度が高い。

 車両の雰囲気が明るいことも、ミニバンの世界観に合っている。セレナの買い得な推奨グレードは、標準ボディであればX・VセレクションII(266万2200円)、エアロパーツ装着車ならハイウェイスターVセレクションII(287万4960円)、ハイブリッドはe-POWERハイウェイスターV(340万4160円)になる。

 なおセレナ/ヴォクシー3姉妹車/ステップワゴンは、互いに激しい価格競争を展開した結果、標準ボディやエアロパーツ装着車の買い得グレードが狭い価格帯に集中している。

【従来型はどうだったのか】

 ミニバンを使う世帯には、就学年齢に達した子供がいるため、何かと出費がかかる。コスパが悪いと、出費にシビアな主婦層から見抜かれてしまう。

 セレナは以前からミニバンの売れ筋車種で、歴代モデルもコスパが優れていた。特に1999年に発売された2代目は、前輪駆動に切り換わって室内空間を広げ、居住性は5ナンバーサイズを基本としたミニバンのナンバーワンだった。

2代目から本格的なミニバンとしての発展を始めたセレナ。シートアレンジの豊富さなど、現代のミニバンの基礎を固めたモデルでもある

 3列目シートの格納方法は、左右跳ね上げ式ではなく、座面の前側を持ち上げて前方に寄せる方式だ。これでは広げた荷室の奥行が不足しやすいが、シートとして使う時の座り心地は抜群に快適であった。

 そして2005年に発売された3代目は、サイドウインドーの下端を低めに抑えて側方視界を向上させ、ミニバンに不慣れな主婦層の間でも運転がしやすいと評判を高めた。

 室内空間は最大限度まで確保され、コスパを高めることで、今に数じるセレナの高人気を確立させた。

■コンパクトはフィットがセンタータンクで実用性満点

【現行型はこうだ】

 コンパクトカーには、ボディの小さな5ドアハッチバックが含まれる。インプレッサスポーツのような3ナンバー車もあるが、人気は高いのは全長を4100mm以下に抑えた5ナンバー車だ。

 小型車の中でも最小サイズのカテゴリーで、売れ筋の価格帯は、1.2~1.5Lのノーマルエンジン車が140~170万円になる。

 この価格帯は全高が1600mmを超える背の高い軽自動車に近く、ユーザーもコスパを重視して選ぶから価格競争に発展した。機能や装備の割に価格が安くないと、売れ行きを伸ばせない。

 そこで推奨される買い得車がフィットだ。全長は4000mm以下で、全高も1550mmを下まわるから立体駐車場を使いやすい。

堅調に売れ続けるフィット。センタータンクレイアウトなど居住性のよさもあるが、ホンダらしく乗り味もよくママのみならずパパからの信頼も厚い

 燃料タンクを前席の下に搭載したから、荷室の床が低く積載性が優れる。プラットフォームも空間効率を重視したから、後席の足元空間はLサイズセダン並みに広い。

 このように機能を高めた結果、フィットは街中で運転しやすく、4名乗車も快適で、荷物を積みやすい。乗り心地は少し粗いが、発売当初に比べると改善された。

 安全装備のホンダセンシングは、センサーにミリ波レーダーと単眼カメラを併用して歩行者の検知も可能だ。運転支援機能には、車間距離を自動制御できるクルーズコントロールや操舵の制御も備わる。

 これらを標準装着した買い得な推奨グレードは、ノーマルエンジン搭載車であれば13G・Lホンダセンシング(165万3480円)、ハイブリッドならハイブリッドLホンダセンシング(207万9000円)になる。

【従来型はどうだったのか】

 フィットは今でもコスパが抜群に優れているが、これを確立させたのは2001年に発売された初代モデルだった。

 今日と同様に燃料タンクを前席の下に搭載して、4名乗車の快適な居住性と広い荷室、個性的なシートアレンジを備えた。エンジンは1.3Lで、CVTの採用により10・15モード燃費は23km/Lと優れる。さまざまな機能がライバル車をリードしていた。

初代フィットは燃費の良さもあり、ライバル勢からひとつ抜きんでた存在だった。また価格面でもアドバンテージを持っていた

 しかも価格は、実用装備を充実させた中級のAが114万5000円(税抜き)とされ、ライバル車に比べて大幅に割安だった。

 その結果、初代フィットは、エンジンが1.3Lのみでグレードも3種類に抑えながら、2002年にはワゴンRやカローラシリーズを抑えて国内販売のナンバーワンになっている。

 その結果、ライバル車の多くが価格を改訂して、コンパクトカーのほぼすべてが114万5000円に買い得グレードを用意した。

■スポーツカーはスイフトスポーツだ

【現行型はこうだ】

 コスパを考える時に、スポーツモデルは評価が難しい。もともとコスパを重視するユーザーが少なく、優先される機能もユーザーによって幅広いからだ。

 そしてスポーツモデルを敢えて定義すると「カッコ良くて運転の楽しいクルマ」になり、3列シートのミニバン、ボディやエンジン排気量の小さなコンパクトカーに比べて曖昧になる。

 そこでまずはコスパを優先させ、この中からスポーティな性格の仕様を探すことにする。そうなると2人乗りのスポーツカーは対象からはずれる。2人しか乗れない時点で、コスパが下がるからだ。

 選んだのはスイフトスポーツだ。基本的には大量生産されるコンパクトカーのスイフトだから、実用性を重視して開発され、フィットなどと同じくコスパと価格競争力が優れている。

 そこに最高出力が140馬力の1.4Lターボエンジンを搭載して、6速のMTとATを用意した。

 ちなみに価格が比較的求めやすいコンパクトカーに、性能が少し高いエンジンと足まわりを与える手法は、1976年に発売された初代フォルクスワーゲンゴルフGTIあたりで確立された。

たんなるコンパクトカーに補強パーツをつけただけではなく、基本的な骨格から鍛えたことで楽しいスポーティコンパクトになった。スイフトスポーツは実用性もあるスポーツカーのお手本だ

 初代ゴルフGTIは高い評価を得たが、この背景には、ベースとなったゴルフの走りの良さがあった。

 ベースの素性が悪いと、いくら巧みなチューニングを施しても、優れたスポーティカーにはなり得ないからだ。

 その意味ではスイフトのベーシックなグレードも、走りの素性が優れている。後席や荷室は狭いが、走行安定性が高く、操舵に対する反応も素直だ。

 だからこそ、性能を高めたスイフトスポーツも、安心して運転の楽しさを満喫できるコスパの高いスポーティカーに仕上がった。

 スイフトスポーツの価格は、セーフティパッケージ装着車の6速MT仕様が192万2400円となる。価格が200万円を下まわるスポーツモデルは、今では貴重な存在だ。

【従来型はどうだったのか】

 スイフトの人気を高めたのは、2004年に発売された2代目だった(海外では日本の2代目が初代スイフトと認知されている)。

 外観には塊感が伴い、インパネの周辺も質感が高い。そしてサスペンションが柔軟に動き、乗り心地が上質だった。

デビュー当時はそのルックスと、しなやかな足回りでヨーロッパ育ちのスイフトに大きな衝撃を受けたファンも多かった。乗っても楽しい1台

 欠点は走行安定性で、危険回避の操作をすると後輪の接地性が削がれやすい。これは開発部門でも解決すべき課題とされ、2010年発売の3代目で大幅に改善されたが、2代目も価格の割に乗り心地を含めて各部の質感が高かった。

 後席や荷室は狭くても、クルマ好きのユーザーにとってはコスパが優れていた。

■スバルインプレッサはセダンのよさも持っている

【現行型はこうだ】

 今のセダンは、コスパの優れたクルマを選びにくい。大多数のセダンが海外市場向けに開発され、5ナンバー車はカローラアクシオ、グレイス、プレミオ&アリオンの4車種しかない。

 日本を相手にしなければ競争関係も薄れ、コスパは悪化する。そしてカローラアクシオやプレミオ&アリオンは日本向きだが、設計が古い。緊急自動ブレーキは歩行者を検知できない。

 こういった点も考慮すると、最もコスパの高いセダンはインプレッサG4だ。プラットフォームを含めて設計が比較的新しく、走行安定性と乗り心地のバランスも良い。

現代のセダンとして被害軽減ブレーキも優れており、評価が高いのがインプレッサG4

 緊急自動ブレーキはアイサイトバージョン3だから、歩行者や自転車も検知できる。さらにミドルサイズセダンの割に後席が広く、足元空間はLサイズセダン並みだ。

 視界は先代型に比べて少し悪化したが、セダンの中では優れた部類に入り、街中でも運転しやすい。雰囲気は地味だが、内装は上質でコスパの優れたセダンに仕上げた。

 買い得な推奨グレードは2.0i-Lアイサイトで、2WDの価格は218万1600円、スバルが得意な4WDは239万7600円だ。機能と装備を充実させた3ナンバーセダンの中では価格が安い。

【従来型はどうだったのか】

 2000年に発売された2代目のインプレッサスポーツワゴンが買い得だった。1.5iの4速ATは130万円弱の価格設定だから、コンパクトカーの10万円アップ程度に抑えられている。

セダンもラインアップされた2000年当時のインプレッサ。ボディサイズも小さかったが、さすがスバルともいうべきこだわりがあった

 ワゴンでは質感や機能、装備の割に価格が安く「コンパクトカーの低価格は魅力だが、実用重視の外観が嫌い」と考えるユーザーの間で人気を高めた。

■軽自動車はミライースがダントツ!?

【現行型はこうだ】

 軽自動車は国内向けのカテゴリーで、税金や価格の安さが特徴だ。そのためにコスパの優れた車種が多い。

 今は軽乗用車の75%を、全高が1600mmを超える背の高い車種が占める。N-BOXやワゴンRが代表で、車内はコンパクトカーと同等かそれ以上に広い。自転車などを積みやすく、安全装備も充実させて、売れ筋の価格帯は130~170万円だ。

 しかしコスパをさらに追求すると、全高を立体駐車場が使える高さに抑えたミライースとアルト、およびそのOEM車が該当する。

 外観からは後席が広そうには思えないが、プラットフォームの空間効率が優れているため、ヴィッツなどと同程度の居住性が確保される。

 スイフトやデミオよりはゆったりしている。そのために長距離の移動を除けば、ファミリーカーとしても使える。

軽い車重で燃費も優位に立つミライース。市街地の移動などファミリーユースでも問題なし

 ミライースとアルトは車両重量が700kgを下まわるために、ノーマルエンジンでもパワー不足を感じにくく、燃費性能は軽自動車の中でも最高峰に位置する。

 価格は緊急自動ブレーキを備えた買い得グレードが100~110万円の間に収まるから、全高が1600mmを超える軽自動車に比べると15~20万円は安い。

 特にミライースは、緊急自動ブレーキを作動できる安全装備がスマートアシストIIIに進化した。歩行者検知も可能になって安心感が高い。実用的な安全&快適装備を充実させたX・SAIII(108万円)が最も買い得だ。

【従来型はどうだったのか】

 2011年に発売された初代ミライースは、優れたコスパで注目された。JC08モード燃費は30km/Lと優れ、実用装備を充実させたXが99万5000円だ。

安さと30km/Lのインパクトは大きかった初代ミライース

 当時のムーヴXは122万円だったから、ミライースは約22万円安い。しかも後席の足元空間は相応に広く、広々感はないものの、大人4名の乗車も可能だ。

 低燃費と低価格に加えて実用性も優れ、軽自動車の本質を突く商品であった。

最新号

ベストカー最新号

さらばゴーン! どこへ行く? 日産 大特集|ベストカー 1月10日号

 いよいよ2018年は師走も中盤。12月10日に発売の「ベストカー」は、2019年1月10日号となる。そんな最新号では、来年登場が期待されるスモールカーの革命児、4台のスクープはもちろん、自動車業界内外で大きな話題となっている日産を大特集!…

カタログ