本来は乗車券を購入する運送契約
鉄道であろうがバスであろうが、現金であろうがICカードであろうが、本来は乗車券を購入して乗車するのが決まりだ。乗車券を購入することで、バス事業者と乗客の間には運送契約が締結されたことになる。
しかしいちいち乗車券を購入していたのでは手間がかかるので、ワンマンバスでは乗車したときに運送の申し込みがあったとみなし、乗せた段階で事業者はその申し込みを承諾をしたとみなされる。
これにより乗車券の発売・購入に代えて契約が成立する。よって運賃の不払いは民法上の契約不履行ということになるのだが、現実としては「遅れても後日に払ってね」ということで契約を履行させることを期待して丸く収まっている。
その後の回収は?
こんな“神対応”ともいえるような運賃の未収受時の対応だが、実際に「この前お金が足らなくて降ろしてもらったので前回のいくら分をまとめて払います」と運転士に告げてまとめて払うことも、実はよくあるという。元運転士にそのあたりの実際を聞いてみると、営業所まで未払い運賃を持ってくる乗客もいるとか。
しかし元運転士によると、こういう対応をすることをいいことに「しょっちゅうお金を忘れる」乗客もいるようだ。これについても話を聞いてみた。
「そういう常習犯は営業所内でその人物の資料が回ります。別に警察の手配書ではないですが、こういう顔つきでこういう身なりの常習犯として、運転士に注意喚起がされます。最近のバスは防犯カメラやドラレコが付いていますから、その気になれば画像解析して人物や乗車区間を特定することは容易だと思います」
世の中にはなかなか「図太い人」もいるようだが、うっかり金が足らなくて乗った民法上の「契約不履行」ではなく、金がなく運賃を払う気がそもそもないのに乗った場合は法的には刑法上の「詐欺罪」に問われかねないのだ。
いずれにしてもうっかりというのは誰にでもあるので、その場合は素直に運転士に申し出て後日、違うバスでも営業所でも構わないのでキチンと乗車した分の運賃は支払うよう、お願いします。