■C5へと受け継がれたハイドロサス
ハイドロ系シトロエンは、このあたりの世代までは、欠点も多いけれど美点がそれをしのぐ、いかにもマニア受けな仕上がりだったと言える。
ハイドロ系シトロエンというと、油圧系統の故障が非常に恐れられていたが、エグザンティアは信頼性が大幅に向上しており、私の場合、7年間の所有期間中、その手のトラブルは一度もなく、スフィアの交換も必要なかった。トラブルと言えば、サビによるマフラーの折損とパワーウィンドウ落ち、リアゲートからの雨漏りの3回のみ。「緑色の血(LHMオイル)を噴き出して息絶える」という伝説の故障には一度も出会えなかった。マニア的には若干無念である。
エグザンティアの後継モデル、初代C5は、ハイドラクティブIIIに進化して、ブレーキとステアリングの油圧制御がサスペンションとは別系統となり、乗り味もかなりしっかりとフツーになった。後期型のV6モデルは、ハイドロらしさをかなり取り戻していたが、初代C5はデザインが不評で、シトロエンファンはあまり飛びつかなかった。
続く2代目C5は、デザインの質感が大幅に向上したことで、ファンの注目度は急回復。日本への導入は2008年からで、当初は3.0L V6と2.0L直4(ともにガソリン)が用意されたが、2010年、2.0Lに代わって、PSAグループがBMWと共同開発した1.6Lのダウンサイジングターボ(156ps)が投入された。
当時、ダウンサイジングターボ技術は欧州を席巻中で、私はハイドロ系サスよりもむしろこのエンジンに大きな魅力を感じ、C5セダンセダクションを購入。大きなボディを比較的小さなエンジンでゆったり走らせるのは、シトロエン本来の在り方なのである。
ただ、ハイドラクティブIIIの乗り味は、ハイドロっぽさが薄まっていて、エグザンティアの濃厚な味わいには及ばなかった。1.6ターボエンジンも、燃費はまあまあだったが、理詰めで味わいが薄く、結局2年で飽きて手放した。その後、C5の生産終了によってハイドロ系サスが絶滅したのは前述の通りだ。
■最終型ハイドロ・C5後期型に乗る男
が、実はこの直後に「名車」が登場していた。2011年のマイナーチェンジ後の、「2代目シトロエンC5後期型」である。マイチェンの中身は、エクステリアの小変更程度だったが、実はサスペンションのセッティングもかなり変えられているらしく、乗り味が非常にシトロエンらしくなっていた!
私のカーマニア仲間で、2013年式のC5ツアラーのオーナー、K氏はこう語る。
「あまり故障しない、安心安全なハイドロが欲しくて、これを選びました。超絶フラットライドで高速クルージングが最高! 首都高のジョイントすら気持ちいい! ジョイントを越えるのが楽しみで仕方ありません。中期型も数回、清水さんの愛車を運転させてもらいましたが、首都高のジョイントを越えた時のいなしは、うちのほうがいいように感じます」
「自分のC5こそ、最後の、そして至高のハイドロらしいです。最近、水漏れなどトラブルが始まっていて、今後、地獄が待っているかもしれませんが、最後のハイドロ・シトロエンのオーナーとして、延命にいそしみます!」(K氏)
シトロエン好きの間では、現実的な選択肢として、「C5後期型の中古車がベスト」との評価が固まりつつある。流通台数は極めて少ないが、相場的には100万円前後とリーズナブル。いま手に入れて大事に乗っていれば、いずれ化ける……可能性もゼロではない。最後の最後に出た最終ハイドロC5は、マニア感涙の「さよなら名車」と言えるだろう。
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