ヴィッツが20年目で取り戻そうとしているもの【年間世界販売50万台!!】

■顧客の意見を取り入れすぎて没個性的になったヴィッツ

 ところが、販売台数やバリエーションが増え、アジア圏での生産が始まるなどグローバル化が進むと、じょじょに初代ヴィッツが持っていた“らしさ”が薄れてくる。

 売れれば売れるほど、世界中のトヨタ営業部門から顧客の声が届く。それに真面目に対応すればするほど、初代ヴィッツが持っていた独特のキャラクターは薄れてくる。

 関係者すべてが「良かれ」と思ってやっているのだが、結果できあがったクルマは、悪くはないけどどうもピンとこない「どこにでもあるトヨタ車」。

 まるで”イノベーションのジレンマ”みたいなサイクルに陥ってしまうのだ。

 2010年にデビューした3代目ヴィッツはまさにその典型だったといえる。開発中にリーマンショックに襲われ、コスト面での締め付けが厳しくなったのは不運だった。

 しかしそこには初代ヴィッツが持っていた明確なビジョンはもはや存在せず、あるのは「コスパよく顧客満足度を高める」というおもてなし精神のみ。

3代目となる現行ヴィッツ。初代の持っていた気高さもなくなり、汎用的なコンパクトカーになってしまった。デミオやフィットなど個性的なライバルの出現も痛手

 それはそれでひとつの見識ではあるのだが、ブランドとしての個性や魅力が希薄化したことは否めない。

 販売については、グローバルで年間50万台を売る堂々たる成果を残しているが、懸念されるのは専門家やクルマに詳しいユーザー層の評価が低いこと。

 ヴィッツは基本的にエントリーカーだから、ユーザー満足度を高めようとすれば使い勝手の良さや便利装備が優先される。

 限られたコストをどう配分するかが開発者の腕の見せどころなのだが、それが「走る・曲がる・止まる」というクルマの本質部分ではなく、表面的な商品性アップに重点配分されている印象があり、それが評価を落としている。

■カンパニー制でヴィッツは生まれ変わるか?

 しかし、さすが危機管理に定評があるトヨタはわかってる。

 2016年4月にカンパニー制という組織変更を行い、Bセグまでを”コンパクトカーカンパニー”として統合。問題点の洗い出しと今後の改善に着手している。

 結果はすぐに現れた。コンパクトカーカンパニー発足後一年も経たないうちに、ヴィッツにハイブリッドを追加投入。

 輸出用としてはすでに存在していたとはいえ、7年目のモデル末期にハイブリッド追加なんて、野球でいえば8回裏に先発級ピッチャーを投入するようなもの。普通だったらありえない。

 また、ボディ骨格やサスペンションにも異例ともいえる改良が施され、実感として伝わってくるレベルで乗り心地や静粛性も改善。

ヴィッツにGRMNを投入するなどトヨタはもう一度ヴィッツに個性を取り戻させようとしている。4代目はまた初代のようなインパクトのあるクルマになるだろうか

 3代目ヴィッツは「ハンドリングも乗り心地もピリッとしたところがまったくない」と評価されてきたが、わずかではあるが上質さを感じられるクルマになってきている。

 次期ヴィッツはTNGAというのは周知の事実ながら、モデル末期でもできる改良はすべてやる!という姿勢は立派。組織が変わり造る人が変わるとクルマも変わる。

 あまりパッとしなかった3代目ヴィッツが、それを象徴するクルマとして変貌しつつあるのはじつに興味深い。

 トヨタが断行した”カンパニー制”という組織変更は、巨大企業病を未然に防止しクルマ造りのスピードアップを図るのが目的だが、少なくともコンパクトカーカンパニーではその効果は明らか。

 新しいTNGAプラットフォームで登場する次期ヴィッツ、かなり期待できるんじゃないかなぁ。

【次期ヴィッツは車名が変わると見られる】

TEXT:ベストカーWeb編集部

 次期ヴィッツは車名がグローバル市場と共通の「ヤリス」になると見られている。現行型は2010年12月に登場したが、もちろんグローバル市場ではヤリスを名乗る。

 日本市場では馴染みのないヤリスだが、ヨーロッパではこれまでの実績に加えてすでにWRCでのイメージが大きく浸透している。

 2019年に登場すると予測される次期ヴィッツ、いやヤリス。1L~1.5Lの3機種のエンジンに加えて、ハイブリッドもラインナップされるとみられる。

 スポーツモデルのGRは1.6Lターボを搭載されると見られ、WRCさながらのスポーツマインド高まるヤリスは今後いかに進化していくのだろうか?

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