■一時SUVで1位に! ハイブリッドがあれば生き残った可能性も
ヴァンガードは、販売面で大健闘したクルマだ。初期受注は月販目標の3倍以上に到達し、好調にスタートを切る。2008年には並行して販売されていたハリアーの3.5Lモデルがドロップアウトしたため、3.5Lのヴァンガードに注目が集まり、翌2009年にはSUV販売台数1位を記録する月も出てくる。
好調な販売を維持していたが、時代はミニバン全盛期。SUV市場の盛り上がりは現在ほど大きくなく、販売規模も小さいため予算も大きくは割けなかった。
また、環境問題にクルマがいかに対応するのかが議論されていた時代でもある。近しい存在であったクルーガーやハリアーに用意されていたハイブリッドモデルが、ヴァンガードには用意されなかった。
高級車としての位置づけだが、性能面でのチグハグな印象が出てきて、ヴァンガードの販売は低迷していってしまう。
■販売チャネル跨ぎで中途半端に……もう少し高級路線にしたら運命は違った!?
ヴァンガードは、カローラ店とトヨペット店の2チャネルを跨いでしまったため、クルマの方向性を出しにくくなった。
トヨペット店とカローラ店では、購入車両価格帯が被るところもあるが、全体として見ればカローラ店は安価、トヨペット店は上級というイメージが強く、購入ユーザー層もこのイメージを引き継ぐ。
発売当初、ヴァンガードの最上級グレード350S“Gパッケージ”は334万9500円、ハリアーのAIRは343万円とヴァンガードの上を行く。微妙な差だが、価格=車格として考えるとハリアーが上位に座ってしまうのだ。
ハリアーの跡継ぎを作るのであれば、ハリアーを超えなければならない。しかし、チャネル跨ぎを行ったことにより、ヴァンガードを「高級」に振り切れなかったのも事実としてあろう。
当時はトヨタ店にいて、ヴァンガードについては蚊帳の外にいた筆者。フラットな目線で見ていても、トヨペット店の高級SUVはハリアーであり、ヴァンガードにはカローラ店のイメージが強かった。ハリアーを専売していたトヨペット店でも、同じような感覚を持っていたはずだ。
クルマとしては十分な質感と性能を持ち、販売も安定していた。ただヴァンガードは、一つのブランドを作り上げるというところまでには届いていない。日本の高級車には、単純な質の良さに加えて、ある程度の歴史を醸成している必要がある。
ヴァンガードは、時代と戦略に惑わされてしまった。道に迷った「迷車」となり、1代で幕を閉じてしまったのだろう。
【画像ギャラリー】なんという運命のいたずら!! 消滅する予定だったトヨタ ハリアーと後継車となるはずだったヴァンガード(10枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方リンクミス。2ページ目へ行けない。
android版chromeでは1ページ目にリンクされ、
windows版Edgeでは普通に機能する。
カローラワゴンのSUV版ってイメージ。走行性能とか見栄張れるとかは二の次で、
全然高級車ではなかったけれど、その分、非常に安くて実用、癖もなく使いやすい見た目と中身なクルマ