■GMとは別の「Honda e:アーキテクチャー」も進行中
だが、ホンダとしての勝負はこの先となる。2027年以降の「数百万台規模でのEV生産」としているのだ。ここでもホンダとGMが共同開発するが、価格帯としてはプロローグやZDXよりもリーズナブルとなって登場する予定だ。
これを「Honda e:アーキテクチャー」と呼び、EVのハードウエアとソフトウエアを組み合わせることを目指す。
2022年10月11日のニュースリリースでは、米オハイオ州の3つの既存工場に合計7億ドル(1ドル149円換算で1043億円)を投じ、「Honda e:アーキテクチャー」を採用したEVを生産するためのハブ拠点に改良すると発表した。
このほか、ホンダが独自に研究開発を進めるEVがあり、すでに中国市場では東風ホンダが「e:NS1」を2022年4月に発売している。経済系のテレビ番組では現地での開発の模様が紹介され、ホンダ本社の肝いりプロジェクトであることをホンダが強調していた。
中国向けEVについても、将来的に「Honda e:アーキテクチャー」を採用する可能性があると考えるのが自然だろう。
そして日本についてだが、アメリカや中国と比べると”スロースタート”という印象が否めない。2024年前半に、商用の軽EVを100万円台で投入することのみが明らかになっており、その後もパーソナル向けでの軽EVやSUVタイプのEVを”適時投入予定”という表現にとどめている状況だ。
■当面はアメリカと中国を軸に電動化を進める
このようにホンダのEV戦略では、ホンダがすでに高い販売実績があるアメリカと中国で量産効果を狙うというのが基本的な考え方である。
さらには、アメリカと中国では国としてEVシフトに積極的であることも、ホンダが両国でのEV普及を促進する主な要因だ。
2021年8月にバイデン大統領が「自動車の電動化に対する大統領令」を発令。連邦政府としての方針を打ち出したことで、アメリカ自動車業界内の風向きが大きく変わったといえる。
アメリカでのEV政策といえば、1990年に始まったカリフォルニア州のZEV法(ゼロエミッションヴィークル規制法)が、アメリカのみならずグローバルに対して長年に渡り強い影響力を保持してきた。
今回の大統領令は、アメリカとしてアメリカ全土に対する事実上の電動化規制という見方ができる。そのため、ホンダ関係者も「欧州よりアメリカのほうが、EVシフトの速度が速いのではないか?」という見解を示している。
一方、欧州では欧州連合(EU)の執務機関である欧州委員会(EC)が進める欧州グリーンディール政策を強化しているところだ。2021年4月には「2035年までに、欧州域内で新車100%を(事実上、EVまたはFCVでの)電動化」という方針を打ち出している。
これを受けて、欧州メーカー各社は本格的なEVシフトの準備に取り掛かっている状況だ。ただし……ホンダは欧州内での販売が少ないこともあり、結果的にホンダは米中を重要視したEV戦略をとっているといえるだろう。
そして、日本では日本自動車工業会が中心となり、カーボンニュートラルに対してEV主体ではなく、各種電動車や水素燃料の利用など様々な方法を平行して挑戦していく姿勢を示しているところだ。
ホンダは「2040年までにグローバルで新車のEVとFCV(燃料電池車)販売比率を100%」という、現時点では日系メーカーとして唯一、完全電動化メーカーへの転換を明言している。
当面は米中を先頭に進むホンダのEV戦略の動向を、これからも注意深く見守っていきたい。
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