「エルグランドよどこへゆく」 2023年末に新型発表…されたとして譲れないところ

「エルグランドよどこへゆく」 2023年末に新型発表…されたとして譲れないところ

 いまや国産高級ミニバンの代名詞といっても過言ではない、トヨタ「アルファード」。そのライバルであるはずの日産「エルグランド」は、販売面においては、いまやアルファードの足元にも及ばず、2022年9月の販売台数は、たったの100台。月販1万台を超える売り上げを誇ったかつての勢いは、もはや見る影もない。

 一時はモデル廃止も覚悟されたエルグランドだが、次期型のうわさが出始めており、ベストカー情報では2023年末にも発表か、とのこと。高級ミニバン市場を切り拓いたエルグランドだけに、王座奪還への期待は大きい。今回はそんな期待を込めて、エルグランドの活路について考えてみよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション
写真:NISSAN

【画像ギャラリー】月販10000台から、100台に… 日産「エルグランド」流転の軌跡(27枚)画像ギャラリー

商用モデルというイメージが強かったミニバンを高級車に仕立てた

 もともと日産には「キャラバン/ホーミー」というワンボックスミニバンがあり、装備の充実した高級グレードもあったのだが、商用バンの乗用車版、というイメージをどうしても拭えずにいた。そこへ1997年、乗用車とした開発されたエルグランドが登場。ボンネットタイプのスタイリッシュなフォルムと、ミニバンならではの広々とした室内、モダンな内外装を装備。「ファミリー向け」というよりも「高級感」を前面に打ち出すクルマづくりが功を奏し、大ヒットした。

 セダンの人気が低迷していた背景も手伝ったとは思うが、エルグランドは高級車としての魅力を分かりやすく伝え、新たな感覚をユーザーに届けた。堂々としたボディサイズは高級車としてのステータス性があり、かつセダンでは得られないくつろぎと実用性も兼ね備えている。会社の重役や大切なお客様を乗せても恥ずかしくなく、ファミリーユースにも応えられるミニバン。そんなモデルはそれまでなかったのだ。

よりニーズに合わせたアルファードに、あっという間に市場を奪われた

 2代目エルグランドは2002年に登場。基本的なコンセプトやメカニズムはあまり変えず、さらにモダンでエレガントなデザインと装備の充実で、魅力を向上させた。

 ところがここで、アルファードがデビュー。アルファードは、エルグランドのエレガントなデザインとは対象的に、ボディサイズを生かした押し出し感のあるデザインや大きな面積を持つ木目調パネル、FFベースのプラットフォームのメリットを活かした広大な室内空間など、日本人の美意識と高級感、おもてなし感覚に寄り添ったモデルとして登場。パワートレインもエルグランドの3.5L V6エンジンに対し、3.0L V6と2.4L 直4という税制面で有利なラインアップを用意してきた(2年後にようやくエルグランドも2.5Lエンジンを追加)。

 重量級のミニバンであれば、FRベースのエルグランドのほうが加速やハンドリングの面で有利になるのだが、ユーザーのニーズに合わせたという面では、アルファードのほうに分があり、高級ミニバントップの座は、あっという間にアルファードに奪われてしまうことに。以降、現在に至るまで、高級ミニバン市場はアルファードの独壇場となってしまった。

 3代目となる現行型のエルグランドは、FFベースとなり室内空間も広くなったのだが、アルファードと違い、全高が低く設定された(1,815mm。アルファードは1,900mm以上)。全高が低くなると全体のフォルムはスタイリッシュに見え、走りの良さをイメージさせることはできるのだが、真正面から見た面積はエルグランドのほうが小さく、高級ミニバンとしての堂々とした存在感に欠けてしまう。

 アルファードは、高い全高によって「周囲を威嚇できる」ことも高級車のステータスとして加えた。そうなるとやはり、「スタイリッシュ」なエルグランドのデザインはやや弱く、所有欲を十分に満たしてくれる要素に乏しいといわざるを得ないのだ。

次ページは : 「先進性」で市場奪還を!!

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