「ミニバン王者」から凋落……エルグランドになにが!? 新型でアルファードに勝つための提言

違うよ日産……求めているのは走りではなく高い全高なのよ

2019年にマイチェンを実施。アルファードに負けないほどのオラオラ顔となったが、起死回生とはならず、販売台数には殆ど影響を及ぼさなかった
2019年にマイチェンを実施。アルファードに負けないほどのオラオラ顔となったが、起死回生とはならず、販売台数には殆ど影響を及ぼさなかった

 アルファードにあってエルグランドにないもの、それは「視界の高さからくる優越感」だ。現行エルグランドは「走り」のために低床低重心を狙ったことで、「視界の高さ」を感じにくくなってしまった。

 現行エルグランドのデビュー当時に販売されていた2代目アルファードは全高1915mm(3代目となる現行アルファードは1950mm)であるから、アルファードと比べると明らかに低い。

 走りを好むミニバンユーザーからは否定的な意見が出るだろうが、コーナリングの安定性なんてのは、ドライバー以外の乗員にとっては優先度が低い。高速走行ではまっすぐふらつかず、乗り心地もクルマ酔いをしない範囲でふんわりと柔らかく走ってくれればいい。

 そんなことよりも、迫力ある全高が欲しい。エルグランドは3代目も「走りが良いミニバン」として評価はされたが、ヒットすることはできなかった。

 2019年にはマイナーチェンジを実施したが、顔面は力強くなっても、最も欲しい全高が足りていない。結果として進化するアルファードに追従するどころか、冒頭で紹介した通り月販100台という無残な状況となってしまった。

 エルグランドを復権させるには、何よりも、2代目エルグランド並みの全高1910mm以上の背高なプロポーションが必須であろう。「走りへの強いこだわり」を打ち出したコンセプト自体を極めたいのならば、「背高ミニバン」で、ナンバーワンの走りを実現するべき。それこそが「技術の日産」としての腕の見せ所だ。

 マイチェンの際、テレビCMで日産はまたしても「走りのミニバン」をアピールするかのような映像をつくった。

 しかし、当時すでに、日産としても、ミニバンに走りがそれほど求められていないのはわかっていたはず。アルファードとの差別化という意味では、それしかできなかったのかもしれないが、顧客の需要にまっすぐに答えないことは、顧客を無視した行為であり、ヒットするはずもない。

新型エルグランド全車e-POWERはダメ!! アルファードの売れ線はガソリンなのだから

中級グレードでありながら最上位モデルに近い装備を備えるアルファードS Cパッケージ。しかもガソリンモデル!! 新型エルグランドにもこんなグレードを切望!!
中級グレードでありながら最上位モデルに近い装備を備えるアルファードS Cパッケージ。しかもガソリンモデル!! 新型エルグランドにもこんなグレードを切望!!

 全高改良の他にも、新型エルグランドに期待したいポイントはいくつかある。

 そのひとつが、新型エクストレイルで新たに登場したVCターボe-POWERのシステムの搭載だ。現行エルグランドは燃費がよくなく、3.5L V6 NAエンジンの燃費は8.7km/L(WLTCモード)、2.5L直4 NAエンジンは10.0km/Lだ。

 新型エクストレイルのVCターボe-POWERは、圧縮比をバリアブルに可変できるので、燃費重視に振りながらも、ときにはパフォーマンスを絞り出すことも可能なはず。

 新型エクストレイルは、排気量1.5Lの直列3気筒VCターボエンジンだが(エンジン単体の出力は、106kW/250Nm)、北米アルティマの2.0LクラスのVCターボ、という手もある。どちらも上級モデル用のユニットであるため、廉価な2.5Lのガソリン仕様(もしくはマイルドハイブリッド)は残してほしい。

 ただ、ラージサイズミニバンのユーザーは、「燃費性能の高さ」よりも、「見栄えの良さ」や「価格」を重視する方が多い。例えば、アルファードで最人気のグレードは、エアロバンパーや18インチアルミホイールが付いた2.5LのS_Cパッケージだ。

 価格は税込468万円、アルファードの価格帯394~775万円)の中では安く、リーズナブルな仕様だ。ただし、燃費は10.6km/Lと決して良いわけではない。そこを見誤ってしまうと、また現行エルグランドのような悲劇を繰り返すことになりかねない。

 電動化を推進する日産は、ノートやエクストレイルで、ガソリン仕様を廃止するという大英断をかました(新型セレナでは販売サイドの声に負けたのか、ガソリン仕様をつくると聞くが)。環境性能の高さを示す戦略も重要だが、顧客の需要にこたえる商品企画も必要だ。

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