世界中で加速しているカーボンニュートラルの取り組み。自動車業界においても、ガソリン車の今後や電気自動車の普及など、カーボンニュートラル実現に向けて様々な方法が検討・実行されている。
そんな中で最近話題に上がることが増えたのが「合成燃料」。CO2を増やすことなく燃料を作ることができるとあって、ガソリン車が生き残る道として注目されている。
そんな合成燃料の期待と課題、そして普及の実現性について国沢光宏氏が分析する。
※本稿は2022年9月のものです
文/国沢光宏、写真/トヨタ、日産、スバル、AdobeStock(メイン画像:luchschenF@AdobeStock ※画像はイメージです)
初出:『ベストカー』2022年10月26日号
■「合成燃料」注目されているけど… 電気には敵わない!?
素晴らしい政治家や役人に恵まれているためか、我が国におけるカーボンニュートラルの道はなかなか見えてこない。
「ギリギリで対応すればいいでしょ」ということなんだと思う。
一方、人を宇宙に飛ばしたり、高度な技術を必要とする航空機をたくさん作っている欧米といえば、カーボンフリーに時間が掛かると考えているらしく、たくさんの代案を出し、そちらに向かっている。
例えば前述の航空機。
ここにきて「液体燃料以外は不可能!」ということになっているようだ。
すなわち代替燃料です。すでにモータースポーツで使われている「P1」などの化学合成燃料を示す。確かに日本からアメリカまで飛べるような電力を貯められる軽い電池などあり得ない。
水素燃料もエネルギー密度が低く、これまた長距離飛行は物理的に不可能。といって石油由来の燃料を使うとCO2を出す。
空気中のCO2を回収して作る(光合成含む)合成燃料なら、燃やしても絶対的なCO2の量は増えないということ。
一番わかりやすいのがサトウキビやトウモロコシから作るアルコール燃料。大気中のCO2を吸収して大きくなる。そいつでアルコール作ったらCO2はリサイクルされるのみ。
すでに日本で販売しているガソリンの中にも植物由来のアルコールが含まれている。価格も100円/Lしないため、その気になればすぐにでもカーボンニュートラル実現です。けれど農作物由来のアルコールに頼ると、人間や動物の食糧と重なる。
ここまで読んで「だったら化学合成や光合成する藻類などから作った代替燃料でクルマを走らせたらいいじゃないの」と思うかもしれない。
実際、ヨーロッパでのガソリン価格は300円/Lに近い。代替燃料を大量生産することで可能な単価と言える。この件、欧州の自動車メーカーに話を聞くと、私らが考えているより一歩先を進んでいるのだった。
曰く「電気はどんなエネルギーよりコストが低いんです」。これ、私がいつも書いてること。
今や太陽光発電のコストは、Cセグのクルマ7km走らせるのに15円以下になってきた(大規模なら10円を切る)。自分の家に付けた太陽光発電のコストです。21km走らせようとしたら45円。
現時点では300円/Lのガソリン入れて走っている人も、近い将来、300円/Lの代替燃料使って走っている人も、電気の圧倒的に安価なエネルギーコストを考えたら、誰だって乗り換えることだろう。
20年先の着地点は代替燃料じゃなく電気だと欧州の人は考えている。
という観点で代替燃料を使うエンジン車も全廃させようという方向を選んだように思う。そいつが厳しい厳しい騒音規制と、厳しい厳しい排気ガス規制。
クリア不可能というレベルでこそないものの(日本の自動車メーカーはクリアしようと頑張っている)、多くの自動車メーカーにとって高いハードルになっている。むしろ電気自動車を選んだほうがリーズナブルなほど。
ということで代替燃料は航空機や船舶、高価なスーパーカー、競技車両に限られると思う。
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