■ルノー・日産アライアンス解消はハードランディング必須
アライアンスを解消したケースで参考になるのはダイムラー・クライスラーの離婚劇だ。ユルゲン・シュレンプ主導で1998年に世紀の合併を敢行したダイムラー・クライスラーだったが、クライスラー側の業績低迷によってわずか10年で離婚。
クライスラーはその後フィアット傘下に収まり、現在はFCAとして存続しているのはご存知のとおりだ。
このケースでも、当初はプラットフォームの共用化などが進み、とりわけクライスラー社のレベルアップが顕著だったが、リーマンショックなどで北米市場が停滞するとクライスラーの業績が一気に悪化。ディーター・ツッチェによって切り捨てられてしまう。
ダイムラー・クライスラーのケースは、ルノー・日産のような資本提携ではなく、ダイムラー株1株対クライスラー株0.547という比率での対等合併で、最終的にはこの新会社から不要となったクライスラー部門が切り売りされるという結果になっている。
緩やかなアライアンス関係にあるルノー・日産・三菱では、逆にこういうハードランディングは無理。こじれればお互いに法的手段による応酬を繰り返して泥沼化するだろうし、日仏政府による干渉も不可避となる。
これは希望的な観測でもあるのだが、けっきょくはカルロス・ゴーンをはじめとする日産旧経営陣が退陣して人心を一新。
日産の自立性を高めるような人事を勝ち取れれば、資本構成としてはルノーの参加という現状維持を許容する。そういったあたりで一件落着のような気がする。
それにしても、1999年の日産危機の時、ルノーとの資本提携をまとめた当時の塙社長がルノーの出資比率を36.8%に留めたのが、今となって思うと英断だった(現在は43.4%)。
塙社長はルノーの前にダイムラーと提携交渉をしていたが、ダイムラーは51%を絶対に譲らず、結果的に交渉が破談になったといわれている。
経営者目線でいえば、企業買収では50%超の出資比率で完全な支配圏を獲得しなければ意味がないというのがセオリー。
当時のルイ・シュバイツァールノー会長とのぎりぎりの交渉で、現在の緩やかなアライアンスという枠組みを作ったからこそ、日産は首の皮一枚で独立性を保っているわけだ。
そういう意味では、関係者は塙さんのお墓に足を向けて寝られないと思うなぁ。
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