いつまで続く!! ゴーンショック再び!! 日産がルノーと組み続ける理由とメリット

■ルノーは日産の電動化技術を命綱にするしかない

組織というのは面白いもので、基本的には損得勘定で動いているのだが、それを超えたところに”大義”がないと大きな求心力が生まれない。

今回のゴーン騒動も、はじめは「日産再建」という大義を掲げたカルロス・ゴーン氏に求心力があったものの、それが「ルノー救済」というアンフェアな方向へブレたことで人心が離反していったのが伏線となっている。

さらに、その後マクロン政権の誕生によってフランス政府と日産の対立は激化。カルロス・ゴーン氏が内々に仏政府と何らかの手打ちをしたのではないかという疑心暗鬼が、今回のカルロス・ゴーン事件の引き金となっているようにみえる。

それにしても、カルロス・ゴーンが致命的にダメだったのは自分の後継者を育てなかったことで、有力な後継と言われていたカルロス・タバレスはPSAへ、アンディ・パーマーもアストンマーチンへ、それぞれ離脱している。

噴飯ものだったのは高級車部門インフィニティの立て直しにアウディから招聘したヨハン・ダネイスンだ。香港にインフィニティ部門を統括する独立法人まで立ち上げながら、わずか2年でダネイスンはキャデラックヘとらばーゆ。

こういう人事の動きを見ていると、この頃からアライアンス上層部におけるカルロス・ゴーンの求心力が衰えていったことが推察される。

日本人幹部でも中国市場を中心に実績を積んできた前COOの志賀俊之さんを業績不振で更迭したのも不可解。

西川社長は騒動後もルノー・日産・三菱アライアンスは継続すると断言している

その後釜に据えた西川さんに、けっきょくは寝首を掻かれることになるわけだが、そういう意味ではカルロス・ゴーン氏には人間的な魅力という属性は備わっていなかったのかもしれない。

今後、ルノー・日産・三菱のアライアンスがどう動くかは予断を許さないが、西川さんが「アライアンスを解消するつもりはない」と再三述べているのは本音だと思う。

グローバル生産台数が1000万台に達すると、その購買におけるパワーは桁外れに強力となる。原材料は部品の調達におけるメリットは、何をおいても魅力的なアライアンスの果実。

西川さんは購買・調達出身でそのことを熟知しているはずだから、メリットがあるところは3社のアライアンスを維持しつつ、それぞれの企業統治については独立性を高めるという落とし所を探っているものと思われる。

また、技術面ではこのアライアンスは日産におんぶにだっこ状態で、これから自動車が100年に一度の大変革期に入ろうというのに、EVやPHEVなどの電動化技術や自動運転/コネクネットといったIT技術など、次世代技術への投資は日産が主導。

ルノーにはこの分野で世界をリードするようなネタを見つけることはできない。

ルノーは当然ながらEVに関しては日産の技術が必要であり、今後もその需要は大きい。また三菱の4WD、PHEV技術に関しても大きな資産なのは変わらない

これはルノーだけの問題ではなく、ドイツ御三家を含めた欧州車全体の弱点だと思うのだが、彼らはついこの間までハイブリッドやEVを一時的なギミックと見て軽視していた。

そのくせVWのディーゼルゲイト事件や中国のNEV政策をきっかけに内燃機関(とくにディーゼル)への風当たりが強まると、手のひらを返すように一気に電動化へシフトしている。

幸いなことに、フランス勢は中国市場におけるシェアが小さいから、ドイツ勢のようなEVへの過剰投資はなさそうだが、それでも中長期的にみたら電動化やIT化への投資は不可欠。

それを日産にすべて頼っているのが現在のルノーの実態で、そういう意味ではアライアンスが崩壊したらいちばん困るのはルノーといえるわけだ。

次ページは : ■ルノー・日産アライアンス解消はハードランディング必須

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