■専用の9速ATがMTと遜色のない走りを実現
では、ATモデルはどうでしょう? じつは試乗する前、上から目線でATを見ていたのでした。ところが、いざ走らせてみるとそん色ないところや、部分的にはMTより優れている部分もあるのです。
例えばアクセル操作によってクルマの姿勢をコントロールできる、というMTの良さ。これATにもちゃんと備わっているんです。
Zには専用に開発された9速ATが組み合わされています。このミッションが想像以上に秀逸なんです。低いエンジン回転でもロックアップが働き、トルコンの滑りがなくなります。
具体的には3000回転くらいからロックアップがきいていました。ロックアップが解除されるのは2000回転ほど。かなり低い回転までロックアップを維持してくれるのです。
エンジンパワーが、トルコンの滑りによってダイレクトな感触が薄れてしまうのがデメリットだったのですが、新型の9速ATは走り出したらほぼダイレクトなパワーフィールが得られるわけです。
しかもこの9速ATは最終減速比を含めたギヤ比と各ギヤ同士の間隔=ステップ比をみると、6速までATのほうがギヤ比が低く、7速と8速はオーバードライブギヤとなっています。
また各ギヤ間のステップ比は1速から5速まではMTに比べATのほうがギヤ間隔がわずかに広くなっています。
と言ってもメーター読みで2速90、3速125、4速175(km/h)といったところですから、特にワイドレシオなわけではなく、ターボの伸びのいい加速を考えると速さを損なわずに伸びの良さを味わえるギヤ設定と言っていいと思います。
MTの魅力の一つに挙げていたアクセルコントロールのやりやすさについては、低い回転域かロックアップが効くのでコントロールしやすさは損なわれていません。
■パドルシフトでMT的な楽しみかたもできる
実際にATに乗って驚いたのは、ギヤのつながりが良いことでした。数字上5速まではわずかにワイドレシオになっているのですが、伸びのいい加速を見せながらテンポ良くシフトアップしていきます。
シフトチェンジ時のギヤの滑りもありません。予想以上にアクセルとリヤタイヤが直結している感覚が強く、新搭載のターボエンジンの良さや楽しさをアクセル操作で確かめることができました。
もう一つのMTの楽しさの要因である積極的にギヤを選べる魅力も、パドルシフトでかなりの部分をカバーすることができます。
クラッチを踏む操作こそないものの、任意の場所でパドル操作を行えば瞬時にシフトアップ/ダウンしてくれます。
日産によれば油圧システムの応答性を高めているそうで、これが切れのいいシフトフィールを作り出しているのだと思います。
加速性能も、計測はしていませんが400psクラスのターボになると、ATとの相性がぐっと良くなってきます。ゼロヨン加速はMTで13秒代前半くらいと予想しますが、ATだと12秒台に入る可能性があります。MTのようにシフトごとにクラッチを踏んで過給圧を下げてしまうことがないからです。
MTにもATもローンチコントロール機能がついているので、これを使った場合の速さは試してみないとわかりませんが、少なくとも同等の加速性能は見せてくれるはずです。
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