■転売禁止のハイエースやランドクルーザーなどを海外に輸出
商売のほうで大きな打撃となったのは、トヨタ・ハイエースとランドクルーザーの輸出失敗である。
小谷氏の店に出入りしていた卸業者が話をしてくれた。
「デュナミス・レーシングへの卸担当でした。私自身はなんの被害もありませんでしたが、社長はいつもお金がないと言っていましたね。デスクの前には常時、納車を待つお客様の注文書がずらりと貼ってありました。大量の注文書を前に社長は『次の納車までにいくら用意しなきゃ』などといつも言っていました」
「4年くらい前でしょうかね。小谷社長はマレーシアなど東南アジア向けのハイエース輸出で失敗した経験があります。当時、私に『トヨタのセールスを誰か知らないか』と聞いてきたので理由を聞いたら、『ハイエースをたくさん注文して東南アジアに輸出したい』とのことでした。『成功したら借金が全部返せる!』とも。結局、うまくいかなかった。途中でほぼ全滅。多額の借金だけが残ったのです」
別の被害者はこう話す。
「新車では長野トヨタにばれてすぐダメになったようですが、それまで何度か中古のハイエースやランクルを輸出していましたね。その時はかなり儲かっているはずですよ。中古車を国内の輸出業者に売っていました。『それ(新車を転売して海外に輸出すること)違法じゃないの?』って聞いたこともありました。そしたら社長は『正規輸出だから問題ない』って。結局、輸出事業に失敗したあとは、『騙された!』と怒っていました。誰に騙されていたのかは不明です」
小谷被告は転売禁止のはずの新車のハイエースやランドクルーザーを輸出業者へ転売していたことが発覚し、長野県内のトヨタディーラーからは「出入り禁止」にされてしまった。
■トヨタ以外も長野県内のディーラーからは相手にされず…
もちろん「出入り禁止」になった理由は不正な転売が発覚しただけではない。すでに、このころ(2018~2019年)から業販で新車の販売契約をしたものの、トヨタ以外でもディーラーへの支払いが遅れることが増えていた。
ディーラーの責任者が立ち会って誓約書を書かせたケースも複数ある。そんなこんなで長野県内の自動車ディーラーにはもう相手にされなくなっていたため、小谷被告は近隣の新潟、埼玉、そして東京などのディーラーに取引を持ち掛けるようになった。
ドイツ製SUVを購入するために代金のおよそ半額となる731万円をデュナミス・レーシングの口座に入れた関西在住のKさんの例も、実にひどい話である。Kさんはほかに国産ミニバン数台など合計3000万円を2021年10月に入金している。ドイツ製SUVは新潟県内の輸入車ディーラーに発注されていた。
「遠方ですし、納車までの期間も長いので正規ディーラーの営業マンXさんを付けますね。安心してください」
と、小谷被告から言われたKさん。営業X氏とも話をすることができ、安心して入金したのだが…。
小谷被告の口座に入金して間もなく、小谷→ディーラーにちゃんと入金されているか不安になったKさんは営業X氏に電話をする。
「731万円を入金したのですが、小谷社長から御社への入金は完了していますよね?」
と尋ねると、営業X氏は「はい。振り込まれています」と答えた。名のある正規ディーラーの営業マンがこのように答えれば当然、信用するだろう。ちなみにこの時、Kさんは録音もしている。
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