■不利な点をモノともせず……
そこでセレナを2022年に登場したノア&ヴォクシーやステップワゴンと比較すると、設計が古いために不利な点も多かった。特に走行安定性と乗り心地はステップワゴンが優秀で、ノア&ヴォクシーも良好だった。セレナはステアリングの操舵感が曖昧で、乗り心地にも粗さが感じられる。
また、セレナは床の位置がノア&ヴォクシーやステップワゴンに比べて70~80mm高かった。そのために乗降用のサイドステップ(小さな階段)が装着され、乗降性もよくなかった。
床が高いと重心も持ち上がるから、先に述べた走行安定性にも悪影響を与える。安全装備などの先進メカニズムは、ノア&ヴォクシーが新型になって大幅に充実させたから、セレナは相対的に見劣りしていた。
■ライバルに比べて優れていた点も多かったセレナ
しかし、その一方、セレナには設計が古いわりに優れた機能も多かった。最も注目されていたのは3列目のシートで、販売の主力になっていたグレードには、スライド機能を装着していた。多人数乗車時でも荷室の広さを調節できる。ノア&ヴォクシーやステップワゴンの3列目にはスライド機能が装着されないから、セレナならではの特徴になっていた。
しかも身長170cmの大人6名が乗車して、2列目に座る乗員の膝先空間を握りコブシ2つ分に調節した場合、セレナの3列目では膝先に握りコブシふたつ半の余裕が生じた(3列目のスライド装着車)。ステップワゴンは握りコブシふたつ分、ノア&ヴォクシーはひとつ半だから、セレナはライバル車よりも3列目の膝先空間が広かった。
3列目シートのサイズも異なり、セレナの座面の奥ゆき寸法は、ステップワゴンに比べて約40mm、ノア&ヴォクシーと比べても25mmほど長かった。そのためにセレナは、多人数で乗車しても窮屈に感じなかった。
セレナは前述のとおり床が高く、乗降性や走行安定性では不利になるが、乗員の視線は持ち上がる。サイドウィンドウの面積も広かったため、販売店では「セレナでは見晴らしのよさがお客様の間で好評だった」とのこと。
シートアレンジも白眉で、セレナのe-POWERは一般的な方式だが、スマートシンプルハイブリッドでは、2列目シートがベンチタイプだった。2列目の中央部分には長いスライド機能が備わり、1列目の中央まで移動させると、収納設備として使える。この状態では、2列目の中央が通路になるから、車内の移動もしやすい。3列目の乗員が2列目のスライドドアから乗り降りできる。
このほかセレナは、サイドウィンドウの下端を低めに抑えてウィンドウ面積を広げていたから、見晴らしのよさと併せて外観では背の高さも強調されていた。標準ボディは5ナンバーサイズに収まり、e-POWERハイウェイスターVでも全長が4770mm、全幅は1740mmだが、ボディが実際よりも大きく立派に感じられたのも確か。
以上のようにセレナは、大勢で乗って楽しく移動するという、ミニバンの機能を徹底追求していた。そのために設計が古くなって走りや先進装備ではライバル車に負けても、根強い人気を得ていた。間もなく登場の新型セレナもこの特徴を受け継いで欲しいものだ。
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