「日本の屋台骨」は揺らいでいるのか? EV戦略見直し検討報道から考える トヨタが抱える問題点とリスク

「日本の屋台骨」は揺らいでいるのか? EV戦略見直し検討報道から考える トヨタが抱える問題点とリスク

 ナカニシ自動車産業リサーチ・中西孝樹氏による本誌『ベストカー』の月イチ連載「自動車業界一流分析」。クルマにまつわる経済事象をわかりやすく解説すると好評だ。

 第十三回目となる今回は、2022年10月24日の「トヨタが電気自動車(EV)戦略見直しを検討」の報を受けて。「『常に盤石』のイメージのトヨタが?」「しかも、EV戦略の発表から1年も経っていないうちに??」と、驚き(というよりは動揺だろうか)をもって受け止めた方も多いのではないだろうか。「2030年EV350万台」を目指すトヨタにどのような問題点があるのかを解説。

※本稿は2022年11月のものです
文/中西孝樹(ナカニシ自動車産業リサーチ)、写真/TOYOTA
初出:『ベストカー』2022年12月26日号

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■トヨタEV戦略が抱える「2つの問題点」

 外資系メディアが報じた「トヨタ、EV戦略見直し検討」という記事が注目を集めました。

 基本プラットフォームの見直しを含めて全体戦略の修正を検討しており、EV新車計画にも大きな変更があるというものです。

 トヨタはその件について肯定はしませんでしたが、あえて強く否定することもありませんでした。

 また、2021年12月に公表した「2030年に350万台(うちレクサス100万台)の目標に変化はない」ことが強調されました。

 トヨタのEVプラットフォームは「e-TNGA」と呼ばれ、bZ4Xが頭出しとなりました。

 bZ4Xは脱輪のリスクが判明したため、4カ月間近くも生産を停止する散々なスタートとなりました。

 さらに、その後にライバルのヒョンデが発表した「アイオニック5」と比較すると、性能面で魅力が欠けていることは、モータージャーナリストに指摘されてきたとおりです。

 筆者の理解では、問題は2つあります。

 第1に、ライバルに対しEV商品の競争力と収益性が劣後するリスクが生じていること。

 第2に、北米市場において重大な誤算が生じ、シェアダウンのリスクのみならず、CAFE(連邦政府の燃費規制)とZEV(カリフォルニア州主導のゼロエミッション車の一定割合の販売義務付け)という厳しい規制への対応が遅れ、トヨタに多額のペナルティが発生するリスクが発生していることです。

 トヨタは、世界のEV普及はそれほど急速には進まないと読んでいたふしがあり、その条件下で構築した戦略には誤算が生じています。

■「e-TNGA」の長所と短所

 e-TNGAの特徴は大きく2点あります。

 第1に、「多品種少量生産」を前提に、収益性と柔軟性を重視したこと。

 第2に、普通のガソリン車と一緒に生産(混流生産)できることにこだわったことです。

 テスラを代表格に、世界の自動車会社のEV専用プラットフォームは「効率性」の高い「スケートボード型」が採用されています。

 シャシーに電池パックを敷き詰め、ハードウェアの標準化を高めて、専用工場で効率性の高い生産を行っています。

 一方、e-TNGAは1)フロント、2)センター、3)リア3つのフロアを持つ3モジュール構造で設計されています。

 フロントとリアはガソリン車のプラットフォームであるTNGAから流用され、センターは電池パックと一体化して専用設計されました。

 トヨタが目指したのは商品開発の「柔軟性」です。

 小型エンジンをフロントモジュールに搭載すればプラグインハイブリッド、新型モーターができればリアモジュールだけアップグレード、蓄電池の進化にはセンターモジュールだけで受け止める構造となっており、柔軟性を持ってe-TNGAを投入できるわけです。

 逆に制約もあり、蓄電池の搭載量を増加させようにもセンターモジュールに搭載位置が限定されています。

 また、エネルギー密度のより高い次世代電池の開発が遅れれば、電池搭載量で不利となります。

次ページは : ■「誤算」から大きなビジネスリスクに

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