名車(迷車?)の影に名キャッチコピーあり!その魅力を分かりやすく、端的にまとめたのがキャッチコピーだ。すべてとはいわないが、少なくともカタログが存在するクルマであれば、何らかのキャッチコピーがあるのが自然だ。
当時を知る往年のクルマ好きには懐かしい、若い世代の方は父親(あるいは母親。もしかしたら祖父母も含む!?)との会話のネタとしてぜひご活用いただきたい「インパクト強烈すぎ!! 印象に残る名キャッチコピー7選」をご紹介したい。
文/松村透
写真/日産、三菱、スズキ、いすゞ、AdobeStock(mapo, lastpresent,MarekPhotoDesign.com, dragonstock)
※この情報は2022年11月30日現在のものです
■才能がモノをいう!? 名キャッチコピーが生み出されるまで
糸井重里氏をはじめとする「コピーライター」と呼ばれる職業の人がいる。スタジオジブリの映画のキャッチコピーを糸井氏が手掛けてきたことを知っている人も多いだろう。
「なんだこんなの簡単じゃん」と思う人がいるかもしれない。しかし侮るなかれ。
努力と経験があればある程度はモノになるかもしれないが、剛速球が投げられるとか、歌や絵が上手いとか、生まれ持った素質・・・つまりセンスや才能がモノをいう世界でもある。
まして、現代のようにYouTubeやTwitterなどのSNSから世に出るチャンスがあるだけに、突如、天才中・高校生コピーライターが現れても不思議ではない。
コピーライターはそのクルマや映画といった商品の魅力を、わずか数文字に「ギュギュギュギュッ」と凝縮して的確に伝えなければならない。
「このクルマ気になる。欲しい」とか「この映画観てみたい」といった具合に、世間の人たちの心を一瞬でつかむ必要がある。しかも、チャンスは1度きり。最初の印象でほぼ勝負がつくといっていい。
当然ながら売上にも左右するし、世間から「このキャッチコピーは何だ!」と炎上してしまうことだってある。責任重大だ。
■名キャッチコピーが生み出す「コピーライター」と呼ばれる人たちのある日常
このたった数文字の名キャッチコピーを生み出すまでに、何百通り、何千通りの案を考え、1つの正解を導きだす。
寝ても覚めても、遊んでいても飲んでいても、彼氏や彼女とデートをしていても、果ては夢にまでキャッチコピーのことが出てくる。それが何日も、何ヶ月も続くことだってある。
その一方で、ホンの一瞬で閃いたりすることもある。それこそ奇跡の瞬間だろう(笑)。
「会社以外では仕事をしたくない」というタイプの人は、あまりコピーライターという職業には向いていないかもしれない。
これだけ苦しんでもなかなかしっくりくるコピーが思い浮かばない。まさに「生みの苦しみ」だ。そして、ついに諦めかけたとき、突然「降臨」する。「これだ!」というキャッチコピーが。それは入浴中とか、寝る前とか、割とリラックスしているときが多い。
正解かどうかは本人はもちろんのこと、他の誰にも分からない。しかし「これだ!」というコピーが突然思い浮かぶ瞬間があるのだ。とはいえ、うっかり油断すると忘れてしまう。
そこで、枕元やトイレ、お風呂場の出入口にペンとメモ帳を置いているコピーライターの人もいるほどだ。
そんな生みの苦しみを乗り越えて後世に残る名キャッチコピーを7つ絞ってみた。当然ながら他にもあるだろうが、そこは忘年会の話題のネタとして盛りあがっていただけたらと思う。
■名キャッチコピー1:「マッチのマーチ」(日産マーチ)
・デビュー年:1982年10月
・エンジン:直列4気筒SOHC、直列4気筒OHVターボ&スーパーチャージャー
・排気量: 930cc/987cc/1235cc
・最高出力/最大トルク:52ps/7.6kgm、110ps/13.3kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3735×1560×1395mm
・新車価格:66.4〜128.6万円
・中古車平均価格:217.8万円
いまや歌手だけでなく、レーシングチームの監督しても知られるマッチこと近藤真彦。「マーチが街にやってきた」とテロップともに、初代マーチと街中をパレードするマッチ。
「マッチのマーチはあなたの街にマッチする」はダジャレでもなんでもなく、良い意味でCMとして成立していた。ひとまわりして、こういったノスタルジーなクルマのCMの方がインパクトは大きいかもしれない。
スーパーアイドルのマッチに引っかけて「スーパーアイドル マーチ」のキャッチコピーも懐かしい。
■名キャッチコピー2:「オレ・タチ、カルタス」(スズキカルタス)
・デビュー年:1983年10月
・エンジン:直列3気筒SOHC/直列4気筒SOHC
・排気量:1298cc
・最高出力/最大トルク:60ps/8.5kgm、75ps/11.0kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3585×1545×1350mm
・新車価格:98.8万円〜
・中古車平均価格:該当なし
初代カルタスのCMに起用されたのは、西部警察シリーズで絶大な人気を誇っていた舘ひろしだ。奇しくも、カルタスがデビューした1983年に石原プロモーションに入社している。
舘ひろしとカルタスのCMといえば「オレ・タチ、カルタス。」のキャッチコピーがあまりも有名だが、「Hard Touch, CULTUS」のキャッチコピー(とCMも)も存在する。
これは余談だが、1000台限定で「TACHI VERSION」が発売され、こちらもCMが制作された。いまやお宝鑑定団に出品してもいいくらい貴重な1台。果たして何台が現存するのだろうか・・・。
■名キャッチコピー3:「街の遊撃手」(いすゞジェミニ)
・デビュー年:1985年5月
・エンジン:直列4気筒DOHC/直列4気筒DOHCディーゼル/ディーゼルターボ
・排気量:1471cc
・最高出力/最大トルク:86ps/12.5kgm、203ps/24.3kgm/178ps/22.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):3995×1615×2400mm
・新車価格:117.3万円〜
・中古車平均価格:100万円
数あるクルマのキャッチコピーのなかで、アラフィフ以上の世代のクルマ好きで知らぬ人はいないであろう「街の遊撃手」のキャッチコピーといれば、いすゞジェミニだ。
パリの街並みや駅、飛行場などで2台、4台・・・時には10数台のジェミニがダンスするかのように走り(踊り)狂うは、あまりにも強烈なインパクトを与えた。
この撮影を可能にしたのは映画007シリーズでカーアクションを担当したチームの存在が大きい。ちなみに「遊撃手」とは、野球でいうショートのポジションだ。映像は途中から「。」が消えて「街の遊撃手」となる点も興味深い。
■名キャッチコピー4:「くうねるあそぶ」(日産セフィーロ)
・デビュー年:1988年9月
・エンジン:直列6気筒SOHC/直列6気筒DOHC/直列6気筒DOHCターボ
・排気量: 1998cc/2498cc
・最高出力/最大トルク:125ps/17.5kgm、196ps/23.3kgm、205ps/27kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4690×1695×1375mm
・新車価格:221.8万円〜345万円
・中古車平均価格:160万円
バブル熱がいよいよ頂点を極めようとしていた1988年、日産セフィーロでデビュー。キャッチコピーは「くうねるあそぶ」。
なぜか助手席から井上陽水(当時運転免許を取得していなかったのだとか)が「みなさんお元気ですか?失礼します」とにこやかに問いかける構成は、いろいろな意味で時代を感じさせる名(迷?)演出だ。
人によっていろいろな捉え方があるとは思うが、強烈なインパクトを与えたという点においては大成功といえるのではないだろうか。
■名キャッチコピー5:「スズキのマー坊とでも呼んでくれ」(スズキマイティボーイ)
・デビュー年:1983年2月
・エンジン:直列3気筒SOH
・排気量: 543cc
・最高出力/最大トルク:28ps
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):31951395×1450mm
・新車価格:49.8万円〜
・中古車平均価格:76.5万円
「スズキのマー坊とでも呼んでくれ」がそのままクルマの愛称になってしまった。「マー坊」は知っていても、マイティボーイの車名を知らないほどのインパクトを受けた一例といえるだろう。
さらにはCMで堂々と「金はないけどマイティーボーイ」と言い切ってしまう点も強烈だ。ホントに役員会議通過したんですか??? と、当時のスズキ関係者の方たちに問いただしたくなる。
CMソングを歌っている「東京JAP」のメンバーの1人は、現在ラジオ番組や夜もヒッパレなどでお馴染みのDJ赤坂泰彦だったりする。
■名キャッチコピー6:「あのクルマとは違う」(三菱ディアマンテ)
・デビュー年:1990年11月
・エンジン:V型6気筒DOHC
・排気量: 1998cc/2497cc/2972cc
・最高出力/最大トルク:315ps/38.4kgm、175ps/22.6kgm、210ps/27.5kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4740mm×1775mm×1420mm
・新車価格:2453〜481.6万円
・中古車平均価格:91.9万円
三菱が1990年に放った3ナンバーボディを持つセダン「ディアマンテ」。「和製BMW」と揶揄する人もいたが、手が届く3ナンバー高級車として当時絶大な人気を誇った。
30数年前は、いまとは比べものにならないくらい、3ナンバーへの憧れ、ステータスがあった時代だったのだ。
ディアマンテが示す「あのクルマ」とは・・・これはあくまでも推察に過ぎないが、当時、ミドルクラスのセダンで圧倒的な強さを誇っていたマークII 3兄弟を強く意識したのではないかと思われる。
■名キャッチコピー7:「マイナス21秒ロマン」(日産スカイラインGT-R)
・デビュー年:1995年1月
・エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
・排気量:2568cc、2771cc
・最高出力/最大トルク:280ps/37.5kgm、400ps/47.8kgm
・ボディサイズ(全長×全幅×全高):4680mm×1780mm×1360mm
・新車価格:478.5〜1200万円
・中古車平均価格:773.4万円
ディープ・パープルの“SPEED KING”をBGMに、パワースライドしていくR33GT-R。
ニュルブルクリンクオールドコースで、R32GT-Rが1989年に記録した8分20秒のタイムを上回るだけでなく、当時としてはひとつの壁であった8分を切ることに由来する「マイナス21秒ロマン」のキャッチコピー。
このCMを観て血が騒ぎ、R33GT-Rへの乗り換えを決意した人も多いことだろう。
ちなみに、別バージョンCMでは「私たちの国には、GT-Rがあることを誇りたい。」のキャッチコピーが使われた。次期GT-Rが発売されるとしたら、まさにうってつけのような気がする。
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