今のクルマは昭和の時代には想像できなかった機能が満載。だが、1980年代にクルマの未来を予感させる刑事ドラマ「西部警察」があった。思い返せば登場したマシンたちは現代の技術につながるモノも相当数存在するのだ。今こそ西部警察のマシンに注目だ!!
文/永田恵一、写真/NISSAN
■西部警察とは?
西部警察はお祭り好きの石原プロモーションらしい「映画を超えるテレビドラマを」というコンセプトを掲げ、1979年10月に放送がスタート。
そのプロセスは犯人との派手な格闘や銃撃戦、5年間で5000台近くが廃車になったというカーチェイスはほぼ毎回。爆破もエスカレートし煙突まで倒してしまうなど、この豪快さに当時の日本人が熱狂したのもよく分かる。
西部警察においてファンが多かったのが、映画「栄光への5000キロ」以来石原プロモーションを支援していた日産の協力のもと西部署に配備されたスーパーマシンたちである。
現在40代以上の人の中には西部警察のカーチェイスやスーパーマシンたちの激走を見てクルマ好き、日産ファンになったという人も少なくないだろう。以下、西部警察に登場したスーパーマシンたちに搭載された現在のクルマにつながる特殊機能を紹介していく。
■マシンXはコネクテッドカーだった!?
2リッター直6ターボを搭載した2ドアクーペの5代目スカイライン(市販車のニックネームはジャパン)をベースにしたマシンXは、PART1中盤に西部署に配備された西部警察最初のスーパーマシンである。
なおマシンXが西部署に配備された経緯は、逃走用に高性能なマーキュリークーガーを使う犯人を、通常のセドリックの覆面パトカーでは検挙できずピンチに陥っていた大門軍団への小暮課長からのプレゼントというものだった。
マシンXは最高速240km/hという高い走行性能による犯人検挙への貢献に加え、車内に小型モニターやコンピューターを搭載し、この2つを基盤にした現代につながる機能を備えていた。
1つ目は特殊発信ペイント弾発射銃だ。この機能はグリルの中にある拳銃の先端のような部分から、狙いを定めてシフトノブ上部のボタンを押すと特殊発信ペイント弾が発射され、犯人車などの走行位置が小型モニターに表示されるというもの。
走行位置の検知が可能なのは狭い範囲だけだったようだが、この機能は今になると現代のクルマに付く自車位置を管理センターが把握し、盗難に遭った際には自車のある地点に警備員を派遣してくれるなどのコネクテッド機能につながるところに感じる。
コネクテッドといえばマシンXのコンピューターは西部署のコンピューターとつながっており、西部署のコンピューターからマシンXの小型モニターに犯人の前科者カードなどの各種情報を送信するといったことも可能だった。
これはまさしく各種情報がモニターに表示される現代のクルマのコネクテッド機能の前身と言えるもので、インターネットもなかった1980年代前半にこんなアイデアが浮かび、ドラマの中だけだとしても形になっていたことには西部警察や日産の凄さを痛感する。
しかし、マシンXの最後は悲しいものだった。後述するようにマシンXは第一線を退き、その後は警視庁のガレージに保管されていたのだが、高性能なマシンXに飲酒運転によるひき逃げを検挙されたことを逆恨みした犯人に盗難されてしまった。
その犯人は自動運転車を研究していたエンジンニアで、盗難されたマシンXは元エンジンニアにより無人運転車に改造され、ひき逃げを繰り返す。つまりマシンXは元エンジンニアに悪用され、最後は時限爆弾を仕掛けられた上で誘拐された女の子を乗せ無人走行する。
大門軍団の手によりマシンXの無人運転状態は解除され、女の子は救出されたのだが、時原爆弾の解体は間に合わず空き地で爆発。殉職という最後となった。
マシンXの無人運転はカメラにより周囲の情報を収集し、その情報をもとに比較的近くを走る1BOXカーの中からラジコンのように遠隔操作するというものだった。
マシンXの無人運転車状態は、現代のクルマに付くカメラやレーダーからの情報をもとにした各種運転支援機能に通じるところがあり、今になると西部警察らしい未来への示唆が強く感じられる。
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