世界各国のトラックをメーカーごとに紹介する連載シリーズ「世界のトラック」。第1回目となる今回は、ダイムラー・トラック・ノースアメリカを構成する「フレイトライナー」をピックアップ。米国大型トラック市場で断トツの販売台数を誇る同社を多賀まりお氏が徹底解説する!!
文/多賀まりお
写真/フレイトライナー
※2020年6月15日発売「フルロード」第37号より
ダイムラートラックの北米メインブランドに位置付けるフレイトライナー
1929年に設立されたオレゴン州ポートランドの運送会社コンソリディテッド・フレイトウェイズ社の車両製作部門がフレイトライナーのルーツ。当初は社内向けだったアルミ製キャブを持つキャブオーバートラックの販売を47年に開始した。
ホワイト社との販売協力などでシェアを伸ばした同社は、1981年にダイムラー・ベンツAG(当時)の傘下に。その後97年にはフォードの大型トラック部門、翌年にはスクールバスビルダーの「トーマス・ビルトバス」、2000年には「ウェスタンスター」などと買収を続けて規模を拡大。
現在はダイムラー・トラック・ノース・アメリカ(DTNA)のメインブランドとしてクラス5〜8(車両総重量16001ポンド=約7.2トン以上)の中大型車を展開している。
なおGMのディーゼルエンジン開発部門だった「デトロイトディーゼル」も2000年に「ダイムラー・クライスラー(当時)」によって買収され、DTNAの一部となっている。
オンハイウェイ用の「カスケディア」を旗艦とするラインナップは、中型クラスの「M2 112 Plus / 106 Plus」、M2のキャブ骨格を共用する大型特装系の「114SD Plus / 108SD Plus」、そしてメルセデス・ベンツ・エコニックのOEMであるローエントリー大型特装用シャシーの「エコニックSD」などと幅広い。
キャブオーバー車の「アーガシー」は2005年に米国での販売を終了しているが、現在も南ア/豪州やニュージーランドでは販売されている。
フレイトライナーの最新トラックラインナップ
●カスケディア
2007年にコロンビア/センチュリークラスの光景として登場したクラス8(車両総重量14969kg〜36287kg)のフラッグシップ。DTNAの実車風洞で磨かれた空力性能と軽量な車体によりクラストップの省燃費性能を誇る。17年に2回目のマイナーチェンジを受けフロント周りの意匠を変更した。
●M2 112 Plus / 106 Plus
M2はクラス5〜8の汎用シャシー。106 Plusは基本的に単車用でレッカーなどの特装やスクールバスシャシーにも対応。112 Plusは地場用の2もしくは3軸セミトラクタなどに使われる。FLシリーズの後継として2002年に登場した際の車名は「ビジネスクラスM2」だったが、現在はM2と改称している。
●114SD / 108SD
M2と共用のアルミ製キャブに専用のボンネットを組み合わせた特装用シャシー。M2のヘヴィデューティモデル(106V / 112V)からの発展形で「SD」は「背ヴェル・デューティ(直訳で「激しい業務」)」に由来する。
●エコニックSD
2018年に導入を開始したメルセデス・ベンツ「エコニック」のOEMモデル。主に塵芥車として使われるローエントリーのフルキャブオーバーモデルで、専用のフロントグリルを持つほかは本国のエコニックとほぼ同等。排気量7.7LのエンジンにトルコンATを介して3軸シャシーの後2軸を駆動する。