【最近の新車はみんなデカくて高い!!!】今こそ5ナンバー車と軽を推すこれだけの理由

 ひと昔前まで国産車のほとんどは、日本に向けて作られるのが当たり前だった。ところが、今では国産メーカーの海外進出が進み、日本で売る車=海外でも売る車という図式が、すっかり一般的になってしまった。

 そうなると、日本の環境には合わない“大柄で高価な日本車”が増えるのは必定の成り行き。逆に、タイなど新興国で生産された車を日本で発売した例もあったが、これもクオリティの低さが目立ち、日本のユーザーには受け入れられなかった。

 “日本車なのに日本に合っていない”というジレンマを解消するには何が必要なのか?

文:御堀直嗣
写真:編集部、TOYOTA、Honda、MITSUBISHI


かつてのカローラと同じ? 安いだけじゃない軽の価値

写真(上)は現行型ハスラーで全長3395×全幅1475mm。一方(下)の初代カローラは全長3845×全幅1485mmと幅は同等。今や軽自動車はSUVやスポーツカーもあり安さだけが売りではなくなった

 2018年の年間新車販売の順位を見ると、上位4位までが軽自動車だ。その後、10位までを見ても8位のプリウスを除いて、他は登録車でも5ナンバー車である。

 また、登録車では、5位のノート(販売の7割がe-POWER)をはじめ、アクア、プリウスともに、ハイブリッドが主体の小型車である。年間の新車販売台数約527万台のうち、4分の1近い約126万台の上位10台が、新車の販売動向を上記のように示している。

 なかでも軽自動車は、527万台の内昨年は192万台を販売し、それは全体の36%強を占め、3分の1以上という変わらぬ人気を維持している。軽は安いからとの印象が語られやすいが、その価格帯は80万円台から200万円を超える金額まで幅広い。

 また、廉価な乗用車から、ハイトワゴン、4輪駆動車、スポーツカー、スペシャルティカー的な位置づけなど、軽の枠の中だけで豊富な価値観が提供されている。必ずしも安価であることだけが軽自動車の魅力ではない。

 さらに着目すべき点は、現在の軽自動車規格の車体寸法であり、ことに車幅に関しては、1960年代の初代カローラやサニーとほぼ同じで、全長もカローラやサニーが3ボックスカーであったためやや長いが、それほど大きな違いがあるわけではない。

 1960年代にそうした大衆車が現れたことで、日本の自動車社会は発展した。発展のための道路や駐車場など社会基盤も、それら大衆車を含む5ナンバー車に合わせて整備されてきた。したがって日本の道路を走る上で、今日の軽自動車が、もっとも扱いやすい大きさなのである。

国産5ナンバー車が秘めるEVの可能性

2012年発売のフィットEV。東芝製のリチウムイオンバッテリーを床下に搭載した5ナンバー車だったが、リース販売のみで価格は400万円と高価だった

 登録車においても、「5ナンバー車」というといかにもガラパゴス的で、グローバルカー時代には不似合いな印象がもたれているが、たとえばイタリアの「マテオ神父の事件簿」というミステリードラマでは、ダイハツのテリオスやスズキのジムニーシエラが人々の足として出てくる。石積みの家や石畳の道といった古い町並みを残す欧州には、日本の5ナンバー車が適しているという一例ではないか。

 とはいいながらも、軽自動車や5ナンバー車は、基本的には実用車として生まれ、発展してきた経緯があるので、上質さや高性能さといった点で、車種によっては十分でないという思いがあるかもしれない。そこで、日本の軽自動車や5ナンバーでも高い満足を得られるクルマとして、電気自動車(EV)化の進展を提案する。

 EVというと、距離への不安や、価格の高さへの懸念がまだ根強い。実際、三菱i-MiEVは294.8万円からという値段で、200万円超えのエンジン車と比べても約80万円の差がある。安い軽が1台買えてしまう価格差だ。あるいは日産 リーフは、324万円からという価格であり、ノートe-POWERの190万円からに比べ134万円も高いのである。

 それら課題に対して、まず距離の問題から話すと、一充電でi-MiEVは164kmである。リーフは、400~570km(WLTCでは322~458km)を実現している。どちらも、比較の都合上JC08モードでの数値だ。

 日本でのクルマの使い方を考えると、軽自動車や5ナンバー車であれば、それら国産EVはすでに十分な距離を獲得しているといえるのではないだろうか。そのうえで、充電設備の普及において、これまでとは違った展開が強く求められるのも事実だ。

 それは、自宅と目的地(勤務先、ショッピングモール、レストラン、宿泊施設など)での200ボルト(V)による普通充電の拡充である。

 世界的に、所有されるクルマの利用状況は、9割が駐車で、走行は1割ほどとされる。その9割の駐車時間を充電に充てるというのが、普通充電普及の基本的考えだ。これこそ、EV利用の極意である。

 急速充電器を増やして、ガソリンスタンドの代わりにする発想だから、充電時間が論議の種になる。しかし、クルマは9割の時間止められているのだから、それを有効に活用しようという話である。

 こうすれば、自宅を出て、用事のある場所へ行くまで100km以上連続して走る例はまれであり、目的地で充電できれば、次の場所や、自宅へまでの電力は満たされる。数百キロの移動であれば、日本なら鉄道や高速バスなどを利用するのが一般的ではないか。

 そして急速充電器は、万一足りない時の臨時の設備となり、例えていうなら公衆トイレのような価値観で考えるといい。ガソリンスタンドの代替的発想は、EVには適さないし、本質を活かす取り組みではない。

軽トラが鍵握る!? EV作りは車の高額化を見直すチャンス

軽商用EVのミニキャブ・ミーブバン(トラックは2017年生産終了)。4シーターの高バッテリー容量仕様で215万280円という価格はネックだが、41ps/20kgmとトルクでは既存の軽トラを大きく上回るモーターを搭載

 次にコストの問題だ。誰もが、リチウムイオンバッテリーの部品代は高いと知っている。だが、ハイブリッド車を例にすれば、エンジン車にモーターやバッテリー、制御システムなど部品を追加して作られている。ハイブリッド車こそ、コスト高の体質だ。そこから、エンジンやトランスミッション、排ガス浄化システムなどを取り去れば、部品代は減って、それをバッテリー代へまわせばいいのではないか。

 また、エンジン車で付加価値とされたシートヒーターやステアリングヒーターを標準とする代わりに、車内全体の冷暖房をしなければならないエアコンディショナーは、電力使用量が10倍以上多いので、副次的装備に考えるなど、冷暖房の考え方にも新しい発想が求められる。実際、空調関係者の間では、輻射熱の利用などの検討がはじめられている。

 そのように、エンジン車で標準とされてきた装備と、注文装備とされてきたものの価値を、EV専用にゼロから見直しを行えば、コストの再評価も可能だろう。

 さらに、劇的な原価低減への挑戦のため、私は「100km・100万円・軽EV」という構想を、3年前から提唱し、国内自動車メーカーへ提案してきた。これは、850万台近い保有台数の軽貨物を、まずEV化し、生産財として厳しい目がもたれる軽トラックや軽バンでEV原価を切り詰める挑戦である。

 ただし、バッテリーを多く積めば価格は上がるので、一充電走行距離は100kmで納得する。仕事で使われる機会の多い軽商用車であれば、合理的な走行距離の目途もたつだろう。そのうえで、仕事のクルマとして4輪駆動への要望が高いので、パートタイム式であっても、モーターを2個使うのであっても方式は問わず、4輪駆動は用意する。

 車種を問わず、商用車は全体的に快適性が犠牲になっている場合が多く、働く時間の多くを不快な運転環境に居ることは健康的ではない。EVになれば振動・騒音は軽減され、労働環境も改善される。当然ながら、電気代はガソリン代より安く、少なくとも半分にはなるはずだ。経費節減につながる。

“日本主体の車”をもう一度作るには何が必要?

レンジエクステンダー仕様も展開するBMW i3。全長4m未満の小型ボディながら後輪駆動とするなど、ゼロベースのパッケージングもEV化の面白い可能性を提示している

 軽商用EVで原価を突き詰めたら、軽乗用や登録車の5ナンバー車へもコストが見合っていくのではないか。

 ガソリンスタンドが半減した今日、タンクローリーから直接給油することを認める特区を設けるより、自宅で充電できる軽EVで働く方が、よほど手間が省ける。

 そのうえで、EVは、静粛性はもちろん、走行中の乗り心地もバッテリー重量が増える分、落ち着きのある快適さが得られる。たとえばi-MiEVに乗っていると、寸法的広さはともかくとして、走行感覚は軽に乗っているとは思えなくなってくる。

 さらにモーターは、その動力特性によって、アクセルを深く踏み込んだ際の加速が強烈だ。
 
 つまり、EVは静かで乗り心地が良く、加速が鋭い、すなわち従来エンジン車で高級車だとか、高性能スポーツカーだとかいわれてきた3ナンバー車が追い求めた性能を、軽自動車や5ナンバー車でも実現できるのである。

 これを、日本独自の市場に合わせた魅力的新車として普及していけば、小さくて質の高いクルマとして消費者は喜ぶのではないか。

 そして日本には、クラウンやレヴォーグといった国内市場向けのクルマに人気がある。そういう3ナンバー車に対しても、バッテリーを多く積めば適応できるし、あまりたくさんバッテリーを積みたくないなら、発電用のエンジンを搭載するレンジエクステンダーという応用も可能だ。

 米国のテスラは、バッテリーをたくさん積むことで高級EVを作り、ドイツのBMWは距離を求める人のためにi3にレンジエクステンダーを用意している。

 日本仕様としてしっかり原価を追求し、軽自動車や5ナンバー車に適用できる理想のEVを構築できれば、それはグローバル展開できるのである。

 最大の問題は、車両開発にしても充電などの社会基盤整備にしても、エンジン車の延長でしか考えられない思考の頑固さにある。

 柔軟にEV最良を求め、市場が無いのではなく市場を開拓する挑戦ができれば、私の提案は実現できるはずだ。そうした柔軟性は、やはりベンチャーであったり異業種であったりするというのが、現状ではないだろうか。

 日本最良のクルマの回答は、EVにありと言いたい。

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