かつてのカローラと同等? 今こそ5ナンバー車と軽を推すこれだけの理由

軽トラが鍵握る!? EV作りは車の高額化を見直すチャンス

軽商用EVのミニキャブ・ミーブバン(トラックは2017年生産終了)。4シーターの高バッテリー容量仕様で215万280円という価格はネックだが、41ps/20kgmとトルクでは既存の軽トラを大きく上回るモーターを搭載

次にコストの問題だ。誰もが、リチウムイオンバッテリーの部品代は高いと知っている。だが、ハイブリッド車を例にすれば、エンジン車にモーターやバッテリー、制御システムなど部品を追加して作られている。ハイブリッド車こそ、コスト高の体質だ。そこから、エンジンやトランスミッション、排ガス浄化システムなどを取り去れば、部品代は減って、それをバッテリー代へまわせばいいのではないか。

また、エンジン車で付加価値とされたシートヒーターやステアリングヒーターを標準とする代わりに、車内全体の冷暖房をしなければならないエアコンディショナーは、電力使用量が10倍以上多いので、副次的装備に考えるなど、冷暖房の考え方にも新しい発想が求められる。実際、空調関係者の間では、輻射熱の利用などの検討がはじめられている。

そのように、エンジン車で標準とされてきた装備と、注文装備とされてきたものの価値を、EV専用にゼロから見直しを行えば、コストの再評価も可能だろう。

さらに、劇的な原価低減への挑戦のため、私は「100km・100万円・軽EV」という構想を、3年前から提唱し、国内自動車メーカーへ提案してきた。これは、850万台近い保有台数の軽貨物を、まずEV化し、生産財として厳しい目がもたれる軽トラックや軽バンでEV原価を切り詰める挑戦である。

ただし、バッテリーを多く積めば価格は上がるので、一充電走行距離は100kmで納得する。仕事で使われる機会の多い軽商用車であれば、合理的な走行距離の目途もたつだろう。そのうえで、仕事のクルマとして4輪駆動への要望が高いので、パートタイム式であっても、モーターを2個使うのであっても方式は問わず、4輪駆動は用意する。

車種を問わず、商用車は全体的に快適性が犠牲になっている場合が多く、働く時間の多くを不快な運転環境に居ることは健康的ではない。EVになれば振動・騒音は軽減され、労働環境も改善される。当然ながら、電気代はガソリン代より安く、少なくとも半分にはなるはずだ。経費節減につながる。

“日本主体の車”をもう一度作るには何が必要?

レンジエクステンダー仕様も展開するBMW i3。全長4m未満の小型ボディながら後輪駆動とするなど、ゼロベースのパッケージングもEV化の面白い可能性を提示している

軽商用EVで原価を突き詰めたら、軽乗用や登録車の5ナンバー車へもコストが見合っていくのではないか。

ガソリンスタンドが半減した今日、タンクローリーから直接給油することを認める特区を設けるより、自宅で充電できる軽EVで働く方が、よほど手間が省ける。

そのうえで、EVは、静粛性はもちろん、走行中の乗り心地もバッテリー重量が増える分、落ち着きのある快適さが得られる。たとえばi-MiEVに乗っていると、寸法的広さはともかくとして、走行感覚は軽に乗っているとは思えなくなってくる。

さらにモーターは、その動力特性によって、アクセルを深く踏み込んだ際の加速が強烈だ。

つまり、EVは静かで乗り心地が良く、加速が鋭い、すなわち従来エンジン車で高級車だとか、高性能スポーツカーだとかいわれてきた3ナンバー車が追い求めた性能を、軽自動車や5ナンバー車でも実現できるのである。

これを、日本独自の市場に合わせた魅力的新車として普及していけば、小さくて質の高いクルマとして消費者は喜ぶのではないか。

そして日本には、クラウンやレヴォーグといった国内市場向けのクルマに人気がある。そういう3ナンバー車に対しても、バッテリーを多く積めば適応できるし、あまりたくさんバッテリーを積みたくないなら、発電用のエンジンを搭載するレンジエクステンダーという応用も可能だ。

米国のテスラは、バッテリーをたくさん積むことで高級EVを作り、ドイツのBMWは距離を求める人のためにi3にレンジエクステンダーを用意している。

日本仕様としてしっかり原価を追求し、軽自動車や5ナンバー車に適用できる理想のEVを構築できれば、それはグローバル展開できるのである。

最大の問題は、車両開発にしても充電などの社会基盤整備にしても、エンジン車の延長でしか考えられない思考の頑固さにある。

柔軟にEV最良を求め、市場が無いのではなく市場を開拓する挑戦ができれば、私の提案は実現できるはずだ。そうした柔軟性は、やはりベンチャーであったり異業種であったりするというのが、現状ではないだろうか。

日本最良のクルマの回答は、EVにありと言いたい。

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