時代の波に乗り、街中でも見ない日はないほど大人気となったクルマが存在するいっぽう、これまでにない独創的なコンセプトを掲げながら、流行とズレてしまったというだけで日の目を見ず、ひっそりと消えていった影の名車が過去には数多く存在した。
今回は、そんな不遇な時代に生まれたクルマたちをピックアップ。いま存在すれば大人気になっていた……かもしれない魅力に溢れる5車種を振り返っていく。
文/井澤利昭、写真/スバル、ホンダ、マツダ、FavCars.com
「スバル・R1」愛くるしいスタイルと鋭い走りが魅力のスーパースモールカー
「てんとう虫」の愛称で親しまれた往年の国民車「スバル360」のコンセプトを受け継いだ愛くるしいスタイルで当時話題を呼んだ異色の軽自動車が、2005年に登場したスバルの「R1」だ。
市場では軽自動車の規格サイズいっぱいまで拡大したワゴンタイプがもてはやされるなかにあって、あえてその規格をフルに使わないクーペスタイルを採用した「スーパースモールカー」として誕生。小さいボディでありながら、実質的に大人2人で乗ることを想定した2+2パッケージの室内は決して窮屈ではなく、高い質感を持つインテリアとあいまって快適な車内空間を実現していた。
また軽自動車としては当時でも異例であった4気筒エンジンや、4輪ともストラット式の独立懸架サスペンションを採用するといったスバルらしい走りに対するこだわりも盛り込まれ、後にスーパーチャージャー搭載モデルも追加設定されるなど、スポーティな走りを好むユーザーからも高い評価を受けた。
いっぽう、この尖がった造りは軽自動車のメインターゲットとされる女性やシニア層にはイマイチウケず、後継モデルが登場することなく一代限りで2010年に販売は終了。とはいえ走行距離の少なく程度の良いものは中古市場では高値で取引されるなど、一部ではいまなお高い人気を誇っている。
そのルーツは2003年の第37回東京モーターショーで公開された電気自動車のコンセプトモデルだっただけに、EVになって再び登場……となることを期待したいものだ。
「いすゞ・ビークロス」コンセプトカーそのままの姿で登場したスタイリッシュSUV
個性的で記憶に残るクルマを数多く世に送り出してきた日本の自動車メーカーといえば、その筆頭に上がるのはやはり「いすゞ」ではないだろうか。国内での乗用車の製造販売から撤退してすでに20年余りが経過した現在もなお、多くのファンから愛され続けるいすゞ車だが、1997年に登場した「ビークロス」もそんななかの一台だ。
その最大の魅力はやはり他に類を見ない個性的なエクステリア。1993年に開催された第30回東京モーターショーで参考出品され注目を集めたコンセプトモデル「ヴィークロス」をほぼそのままの姿で市販化した個性的なクーペスタイルのボディは、フロントマスクから前後のフェンダー、リアゲート一体のタイヤカバーに至るまで、曲面を多用した有機的なデザインでまとめられ、現代の目で見ても古臭さを感じるどころか、むしろ未来的な雰囲気さえ醸し出す。
個性的なスタイルでありながら他車種の部品をうまく流用することで価格面でも健闘していたビークロスだが、アウトドアユースではやはり使い勝手悪い3ドアや4名という定員の少なさがネックとなってか売り上げはあまり伸びず、国内ではわずか2年余りで販売終了となってしまった。
その登場からすでに四半世紀以上。クロスオーバーSUVがもてはやされる今こそ需要がありそうなビークロスは、まさに“時代を先取りしすぎたクルマ”の代表格と言えるだろう。
コメント
コメントの使い方わたしも含め、個性的な車が好きな人は多いですよね(わたしなんてドラァグクイーンだし)。わたし、スイスポ、アルトワークス、ジムニー、Kei、ハスラー、ソリオ、ワゴンR、X-90、ラパンといった新ジャンルを生み出したスズキ車が取り上げられていいと思います。
オデッセイは4代目で既に売れなくなっていたから、もし5代目でスライドドアにしていなかったらもっと早く生産終了していたと思うよ。
スライドドアにしたのは正解。
タイトルの「没個性を追求」とは?
「没個性」=「個性がない・薄い」という意味ですよね?