■デザイン優先で決まってしまうことも
昨今は、液晶ディスプレイを多用したインテリアのクルマが増えてきた。
なかでも、早い時代から使ってきたのがメルセデスだ。メルセデスEQSのMBUXハイパースクリーンなど、ダッシュボードの幅いっぱいにまで、液晶ディスプレイを使っているのを見ると、「いよいよ未来のクルマがやってきた」ように感じる。
タッチ操作は、スマホ操作の延長線にあるので、誰でも馴染みやすい、といった良さがある。
ただ、スマホは手で持つので揺れても操作できるが、クルマのタッチパネルには支えがない。
走行中のクルマは、場合によっては大きく揺れていることもあるし、そもそもドライバーは、走行中、前を見ていなければならず、タッチパネルを操作するには、チラチラ画面に視線を落とす必要がある。
もちろん、ナビの設定などは、走行中にはできないようにしているメーカーも多いが、クルマによっては、エアコンの設定なども、タッチパネルのなかに組み込まれてしまっているものもあり、これが非常に操作しづらい。
かつて某メーカーの設計担当者へ、「どうして液晶ディスプレイを使うのか」と聞いたことがあるのだが、その答えは「デザインのトレンドだから」ということだった。機能性よりも、デザイン性を優先して設計しているというのだ。
ステアリングスイッチの設置でカバーできているものはいいが、そうではない操作に対して、どのように考えているのか疑問だったのだが、「デザイン優先で」という言葉がでてきたときには、元自動車メーカーエンジニアとしては、非常に残念に感じた。
例えばランドクルーザーの場合、起伏のある砂漠や悪路を走行するため、揺れる車内でも操作できるよう、あえてスイッチには物理スイッチを多く使っているという。
先進性という面では一歩足りない、無骨なインテリアだが、この方が安心できる、といった方も多いはずだ。何でもかんでも液晶タッチディスプレイに機能を集約すればよい、というわけではないと思う。
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いかがだろうか。操作スイッチに関して、筆者が考える理想は、液晶ディスプレイには触れずにコントロールができる「マルチ操作ダイヤル」だ。
メーカーごとに操作のクセがあって最初は困難だが、慣れてしまえばこの操作法が、もっとも合理的で安心できる。だがこのマルチ操作ダイヤルを廃止し、代わりに大型液晶を採用するメーカーも増えている。
ボタン式、タッチ式、ダイヤル式など、形式には正解はないのかもしれないが、「人がストレスなく使いやすいこと」を最優先に設計してほしいと思う。
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コメント
コメントの使い方フィットのエアコン操作パネルが、先代ではタッチパネルだったけど現行型では物理スイッチに戻したからな。
現行型のダイヤル式は本当に操作しやすいよ。
「デザインのトレンドだから」というメーカーの設計担当者の頭の悪さが垣間見える。