“欧州のマーチ”ことマイクラは本格派コンパクトカー!
仮に日本向けの新型車を開発できないなら、海外で売られる日産車を国内に導入すれば良い。
例えばマイクラだ。かつてはマーチの欧州仕様だったが、現行型は別の車種に発展。タイで生産される現行マーチは、丸みのある外観で冴えないが、欧州で売られるマイクラは鋭角的で格好良い。
マイクラのボディサイズは全長が3995mm、全幅は1743mm、全高は1455mm。全幅は少しワイドで3ナンバー車になるが、全長は4100mmのノートよりも短く、ホンダ フィットと同程度だ。
エンジンは直列3気筒1Lターボを用意しており、シリンダーの壁面にGT-Rと同様のコーティングを施す。ピストンの動きが滑らかになって抵抗が減り、動力性能と燃費を向上させられる。
このようにマイクラは意欲的な小型車だから、日本に導入しても堅調に売れそうだ。マイクラはスポーティ指向、ノートは実用指向で、商品の性格もあまり重複しない。欧州のマイクラには「N-SPORT」という仕様もあり、クルマ好きに受けそうだ。
今はなきパルサーなど海外には魅力的な日産車ズラリ
また、ひとまわり大きな車種としてパルサーもある。パルサーは1978年から2000年頃まで日本でも売られていたので、覚えている方も多いだろう。
現行型パルサーはドイツやフランスで販売され、ゴルフのライバル車のようになっている。マイクラがスポーティとすれば、パルサーは以前のティーダのような上級指向に位置付けられ、日本でも成立する商品だ。
販売店からは「スカイラインには今でもファンが多い。スカイラインクーペを発売すれば、必ず買うと待っているお客様もおられる。それなのに発売されない……」という意見もある。スカイラインクーペはインフィニティQ60として北米などで売られているから、日産がその気になれば導入は可能だ。
このほかインフィニティには、コンパクトSUVのQX30もあり、これも国内市場と相性が良さそうだ。レクサスUXのライバル車になり得る。
国産メーカーに問われる「日本をどのように考えるか」
以上のように、海外市場には魅力的な日産車が数多く投入されている。それなのに日本には新型車が入らない。その結果、古い車ばかり並んでいる。
こうなった理由は、国内市場の規模が小さく、なおかつ将来性が乏しいと見られているからだ。日産の言い分は「海外市場と同じように日本の市場を捉えれば、今の投資対効果が妥当だ。日産が日本の会社だからといって、国内を贔屓(ひいき)することはない」というものだ。
“日本の”ではなく、世界の日産が考える市場戦略としては理解できるが、国内を軽く扱っていると商品の無国籍化が進む。どこの国の車だか分からなくなる。
ある商品企画担当者は「今はインターネットが普及したから、日本でどのような車種を販売しているかが分かる。この時に日本で売られていない日本車は、クルマ好きのユーザーから敬遠される傾向が見られる」と言う。この気持ちは「ドイツで売られていないメルセデスベンツやBMWを買うか?」と考えれば何となく分かる。
1970年代に入って対米輸出が活発化したが、それでも主力市場は国内だった。1990年頃になって国内と海外の販売比率が半々になり、2000年頃から海外偏重を強めていったのだ。日本メーカーが海外で好調に稼げるようになったのは、この20~25年程度に過ぎない。
それを顧みずに、国内市場を規模が小さく将来性もないと判断して冷遇するのは、法人のあり方としてどうなのか。このままでは、自動車産業は国内で魅力を失っていく。国内でも自動車は基幹産業だから、経済的にもマイナスだ。
そして自動車産業が魅力を失うと、自動車メーカーの人材にも影響を与える。海外で売られる車種も、開発するのは日本のエンジニアだから、国内市場は活性化させなばならない。
自動車産業は100年に一度の変革期といわれるが、それは技術だけではない。「日本をどのように考えるか」という根本的な課題にまで及んでいる。
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