■上級のエルグランドにルキシオンは迫れるか
セレナe-POWERルキシオンの価格は479万8200円だから、エルグランドに当てはめると、2.5Lエンジンを搭載する250ハイウェイスタープレミアムアーバンクロム(477万8400円)、あるいは3.5Lの350ハイウェイスターアーバンクロム(480万9200円)に近い。セレナe-POWERルキシオンの価格は、エルグランドの主力グレードと同等だ。
これは意図的な設定でもある。エルグランドは前述の通り設計が古く、ハイブリッドも用意されないため、2022年の1か月平均登録台数は約190台に留まった。セレナもフルモデルチェンジの直前で、2022年の売れ行きは伸び悩んだが、1か月平均が約4800台に達している。
エルグランドはセレナの4%だ。そこでエルグランドの乗り替え需要をカバーすべく、セレナにe-POWERルキシオンを設定した面もある。
ちなみに初代エルグランドは1997年に発売され、翌年には、今のセレナと同等の1か月平均約4700台が登録された。
現行エルグランドも、2011~2012年には1か月平均で約1400台が登録され、保有台数は相応に多い。この乗り替え需要が他社に逃れるのを防ぐためにも、日産としては、エルグランドからセレナe-POWERルキシオンなどに乗り替えて欲しい。
■エルグランドからの乗り換え需要は?
問題は実際に、エルグランドからセレナe-POWERルキシオンへの乗り替えが発生しているか否かだ。この点を販売店に尋ねると以下のように返答された。
「セレナe-POWERの試乗車が店舗に配車されるのは、納車が始まる2023年5月頃だ。現時点ではセレナe-POWERの販売は本格化していないが、エルグランドから乗り替えるお客様も見られる。e-POWERはノイズが小さく、加速も滑らかで、エルグランドに負けない上質感を備えるからだ。
その一方で、エルグランドとセレナでは、サイズや外観の存在感に差がある。エルグランドのすべてのお客様が、セレナe-POWERルキシオンに興味を示すわけではない」。
それでもセレナは、設計の古いエルグランドに比べて、さまざまな機能や装備が上まわっている。特にエルグランドは、2列目のシートベルトに問題を抱える。
セパレートタイプのキャプテンシートでも、シートベルトが背もたれではなく、ピラー(柱)から引き出す方式になるためだ。キャプテンシートはスライド量が多く、シートベルトは背もたれから引き出して、乗員の体にフィットさせるのが今では常識になっている。
セレナもベンチシートを含めて、このタイプを採用するが、エルグランドはピラーから引き出す。古い方式だから、他メーカーのミニバン開発者も「安全性を考慮すると好ましくない」と指摘する。
3列目の居住性も、エルグランドは床と座面の間隔が足りずに足を前へ伸ばす座り方だが、セレナなら着座姿勢に無理が生じない。シートアレンジや荷室の使い勝手もセレナが優れている。
以上のように設計の古い現行エルグランドを購入するなら、セレナe-POWERルキシオンに乗り替えた方が、安全かつ快適に使えて満足度も高い。
問題はボディサイズと外観の存在感で、この点だけは、セレナはエルグランドにかなわない。従って今でもエルグランドの購入を希望するユーザーもいるため、前述のシートベルトを含めて、日産はエルグランドの販売を続けるなら進化させる必要がある。
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