ホンダ フィットRSとトヨタ アクアガチ採点 コスパもいいけど……改善点多数!?

■生産性を考慮したアクアの構造

トヨタ アクアのエンジンルーム
トヨタ アクアのエンジンルーム

 エンジンルームを見てみましょう。アクアのパワートレーンは基本的にはヤリスやシエンタと同じ、1.5L直列3気筒エンジンのTHS。車体構造の基本はヤリスと同じで、ストラットアッパーがダッシュパネルに直付けされた、ガッチリした構造です。

 それにしてもエアクリーナーの容量が小さい。これでは吸気騒音も大きくなります。

 グリルから流入したフレッシュエアを、樹脂製ラジエターコアの上部に這わせたダクトを通じてエアクリーナーに導いていますが、このダクトの吸入口がエンジンルーム内に向いています。ラジコア背面にはクーリングファンもあり、ちょうど吸気口の下に位置します。

 これでは夏場、ラジエターを通過し、エンジンルーム内に拡散した熱気を吸気することになります。なぜ外に向けて外気を取り入れる吸気口にしないのでしょう?

 それに加えて、吸気管から発生する騒音がこの吸気口から逆流してエンジンルーム内に漏れ、それがダッシュパネルの空調用の空気取り入れ口から入り、吹き出し口から室内に拡散されます。

ホンダ フィットRSのエンジンルーム
ホンダ フィットRSのエンジンルーム

 フィットのエンジンルームを見ましょう。エアクリーナーはエンジン上部に置いて、容量も大きいです。フレッシュエアはフロントグリルの下部から取り込んで、ラジエターの前でいったん上にあげて吸気しています。この構造ならば冷気を取り込めるし、冠水路での水の侵入も抑えられます。

 ただ工場での生産方法をみると、フィットではラジエターコアを含めたフロントセクションは、各部品すべてをエンジンルーム内に入り込んで組みつける構造です。

 対してアクアは、樹脂製フレームに構成部品をサブアッセンブリーしたモジュラー構成にして、車両に組み付ける構造。生産効率は圧倒的にトヨタが優れていますし、コストも圧縮できます。

 フィットもハイブリッドですが、直列4気筒1.5Lエンジンで発電をしてモーターで走らせるシリーズ方式を基本としながら、エンジン効率のいい高速域ではエンジンで駆動する方式です。

 エンジンマウントはずいぶんと華奢ですね。エンジン側のブラケットはアルミ鋳物でマウントそのものは流体マウントを使っていますが、車体側の取り付け部が華奢。ただ、樹脂製のために振動打音が吸収されるので車体に伝わりにくい。

 アクアのほうが形状的にはしっかりとした車体側ブラケットですが鉄板プレス製で、エンジンの振動が打音になって取り付けているメンバーから屋根のルーフレールに伝わって室内に入ってきます。指先でエンジンマウント部分を軽く叩くと室内に響く音の大きさで、その差がわかります。

■インテリアはフィットが優れる?

トヨタ アクア インテリア
トヨタ アクア インテリア

 室内を見ましょう。

 まずはアクアから。メーターパネル内の書体や小さな文字サイズなどバラバラで、私には視認しにくい。運転しながらの瞬間での視認性が大切なこの部分は人間工学とメーターデザインの基本ですし、R35GT-Rでは何回もデザインをやり直させました。ここまでまちまちな書体とサイズは初めてです。

 インスト全体で見ると、両サイドに、艶消しグレーのソフトパッドが貼られていますが、カーナビモニター周りのピアノブラック処理との対比がちぐはぐで、色味のコーディネート感が感じられません。艶消しが中途半端なグレーなのです。

 思い切ってビビッドな差し色をしてアクセントにするなど、愛らしくするための思い切ったセンスが欲しいです。

アクアの後席は、座ってしまえば居住性に問題はないのだが、乗降時に座面端の張り出しが腿に当たる
アクアの後席は、座ってしまえば居住性に問題はないのだが、乗降時に座面端の張り出しが腿に当たる

 シートそのものはいいですね。大衆車でコストを抑えたシートなのですが、ゆったりとして包み込むような着座感。柔らかすぎることはなく、よくできています。

 ただ、座面先端が角張っていて腿の裏に強めに当たる。これは残念。シート全体がいいだけに、ここのネガが目立ってしまいます。表皮は滑らなくてよいです。

 後席の側窓はパワーウィンドウが、速い動きで全開するのでいいですね。

 後席のドアを開けると、ドアの後端が長く伸びているために、通常の動作でドアハンドルを引いてドアを開けながら乗り込もうとすると、顔面か胸にドアの後端が当たってしまいます。この設計はもう少し考えてほしい。私が責任者だったら修正させます。

 ドアパネルの下部は斜めに前方にラウンドしているため、身体はドアに干渉せずかわせますが、ちょうど私の身長だと顎が窓部の先端に当たります。

アクアはリアドアの開閉ノブが比較的前方にあり、側窓後端が長いため、開閉動作時に顔面をヒットしてしまう危険が!!
アクアはリアドアの開閉ノブが比較的前方にあり、側窓後端が長いため、開閉動作時に顔面をヒットしてしまう危険が!!

 このドア形状にするのであれば、C-HRのように側窓後端にノブを配置すれば、この位置を引くので顔に当たることはありません。高齢者を含めて乗降確認をしたのでしょうか?

 下半身の通過性は問題ありません。足元の開口は充分ですし、乗り込んだあとの足元空間も充分です。ただ、後席座面の端は斜めにラウンドさせたい。もっとスムーズに腿が通過して身体の動きが楽になります。特に高齢者にはこのような動作はきついです。アクアの狙いは生活実用車ですからなおさらです。

 ドアを閉めると、側窓の嵌め殺し部分のピラーがちょうど目線の位置に来てしまい、後席乗員の視界を奪います。

 後部荷室は車体サイズを考えれば充分な奥行きと左右幅です。フロアボードは下段と上段に設置でき、上段にすると後席を倒した際の段差が小さくなります。

 毎回言っていますが、なぜ日本車は三角表示板をトランクリッドやハッチゲート側に装着しないのでしょう? 荷室床下に入れていたら、緊急時に取り出せません。それと同時に、重量のある三角表示板をバックドアに置くことでマスダンパー効果を発揮し、走行時の共振を抑えてくれます。一石二鳥です。

 フィットの荷室も基本的には同じです。ただ、全体的にフロアが低く天地高があります。

ホンダ フィットRS インテリア
ホンダ フィットRS インテリア

 フィットは後席を前倒させる際、リンク機構で座面が下がるため、低くフラットな荷室ができます。

 ホンダは重点アピールポイントにしていますが、あらゆるマルチパーパス車やミニバン、そして軽自動車が充実した現在では、この機構に要するコストやリンク機構による重量増などを考慮して、一度オプション設定にして装着率などで市場の需要確認をしたほうがよいのでは? と思います。

 メーターパネル周辺はスッキリした造形で、悪くはありません。が、対照的にセンターコンソールがスイッチ類やシフトノブでごちゃごちゃして、後付け部品感が少しあります。

 RSグレードのステアリングは3本スポークですね。これはいい。シートは特筆点はないものの、悪くはありません。座面先端が張り出していないので腿裏が自由に動きやすい。表皮は滑らない素材で、しっかりと姿勢を維持してくれます。

 ペダルは全体に3cm程内側にオフセットしているため、ドラポジがちょっと窮屈。

 フィットの後席ドアは何の意識もすることなく開けて、顔を打ち付ける心配はありません。これが当然の設計です。

フィットの後席は乗降性がいいことに加え、クッションが厚く座り心地がいい。これは大きな魅力となる
フィットの後席は乗降性がいいことに加え、クッションが厚く座り心地がいい。これは大きな魅力となる

 後席の乗降性はとてもいい。足元も広く、しかも床面が軽く傾斜しているので足のおさまりがいい。後席の座面、背もたれとクッションは厚みがあって座り心地がいい。コンパクトハッチの後席とは思えません。セダン並みの後席です。

 これは先ほど見た、収納する際にリンクで座面を落とす機構により、厚いクッションを使えているためです。アクアの後席がコンパクトカーの標準。後席の使用頻度が高ければ、フィットが圧倒的にいいです。

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