ホンダ フィットRSとトヨタ アクアガチ採点 コスパもいいけど……改善点多数!?

■アクア

 ん? このパワーシートは操作しにくいですね。スイッチの形状が直感的ではありません。でも、ひとつのモーターで背もたれと前後スライドを切り替えて動かす機構は、コストを抑えてパワーシートを作るには、うまい工夫だと思います。

 パーキングブレーキが足踏み式というのは、最近のクルマでは珍しくなりました。これはコスト低減策ですね。

 いつものように、ゆっくりと歩くほどの速度でステアリングを大きく左右に切ると、しっかりとした反応が得られます。前型アクアは、この領域で反応が希薄で、車体の遊びの大きさを感じましたが、このモデルでは大きく改善されています。

 完璧だとは言いませんが、日常使いのコンパクトカーということを考えれば、多少の反応遅れは許容範囲です。ただ、左右で反応に差があります。左に切った時の反応がやや緩いです。

 車速を40km/h付近まで高めていくと、橋梁部の路面の繋ぎ目を超えた際に、ブルブルとした微振動が残ります。車速を抑制するために施された路面のペイント部でも、やはりブルブルが出ます。これは車体組み立て部材の合わせ込み精度です。設計上の問題ではなく、工場製造時の精度です。

 特に、フロントサイドメンバーがシルにつながるアウトリガー部の合わせです。ここの部品の合わせ込みを、精度を高めて詰めていけば、このブルブルは抑え込めます。特に助手席側足元付近、ホイールハウス部分がブルブル振動の発生源になっています。

 路面が荒れた箇所を走ると、サスペンション自体は突き上げることなくよく動いているのですが、前述の車体由来の微振動が発生します。足はよくできていると思います。

 車体由来の振動なので、ロードノイズにもつながってきます。Aピラー付け根の合わせも遊びを感じます。共振して振動音を増幅しています。車速を上げて横Gなどの入力を大きくしていくと、このブルブルや位相遅れは感じなくなります。車体の遊びが、入力荷重で詰められたためです。

 ターンパイクの上り坂でアクセルを踏むと、エンジンの吸気音が室内に響きます。先ほど指摘したようにエアクリーナーの容量不足と、吸気ダクトの開口部の向き、それとエアボックス周りのエンジンルームとのシール不足です。

 ブレーキは後輪の接地が抜けてフロント頼り。もっと後輪を接地させて後輪の制動力を活かしたいです。

■フィットRS

 シフトはセンターコンソールのレバー式ですね。最近ではむしろ珍しくさえ感じます。ただ、PからDに入れようとすると、一番下のBレンジまでスルっと動いてしまい、もうちょっとDレンジでの節度感を強くしてほしいです。

 では極低速で動きます。大きくステアリングを左右に切ると……これはいい!! 操舵に対する車体の反応はリニアで左右の反応差もありません。これは欧州コンパクトカーでも、なかなかありません。

 Aピラーとフロントウインドピラーの間にある三角窓がいいですね。視界がいい。死角が減って安全です。

 リアの足の動きは渋めで硬く、突き上げと底付きを感じます。ショックアブの0.03m/sec.付近、極微小入力域、動き出し領域の反力特性が“抜け”ていないので、リアサス全体の動きが渋くなっています。

 ここの領域でのショックアブの動きが、ドライバーが感じる「乗り味」に大きく影響するのです。これはもったいない。車体はしっかりしているのだから、ショックアブのセットで乗り味はまったく変わってきます。

 ここまでノーマルモードでの評価でしたがドライブモードをスポーツに切り替えます。

 全体的にさらに硬い乗り味になります。特にリアショックの伸び減衰を強めています。これによりリアの伸びが抑えられ、足が伸び切る前に次の入力があるとドスンとボトミングの衝撃が更に大きく出ます。

 フラットな路面のテストコースやサーキットではこれでスポーティな操縦性を得られるのですが、荒れた路面やアップダウン状態の旋回がある一般道では先ほど指摘したようなネガが出るのです。

フィットはスポーティさをアピールするRSなのだから、足をさらに煮詰めてほしい
フィットはスポーティさをアピールするRSなのだから、足をさらに煮詰めてほしい

 フィットRSの足のセットは、リアの動きを抑え込んで、フロントをソフトにして自由に動かすことでバランスさせています。

 操舵に対して動きが軽快で楽しいのですが、最近のFFスポーツは、むしろフロントをガシッと固めて、反対にリアを追従させてソフトに動かすことで“いなして追従させる”というのが主流です。

 どちらがいい、ということではありませんが、フィットのセッティングはトレンドではありません。ちなみに先代ゴルフはフィット方式でしたが、新型ゴルフはガラリと変えて、フロントを抑え込むセットです。BMW2シリーズやプジョー、そしてスズキのスイフトも同様です。

 全体的には車体剛性も高く、操舵に対する車体の反応もよく、クルマの作りとしては悪くはありません。それだけにショックアブのフリクションと、リアの硬さが目立ってしまうのです。

 ブレーキのバランスはいいですね。後輪がしっかりと接地して、リアブレーキをしっかりと生かせています。姿勢を乱すこともなく、よい前後のブレーキ配分と荷重バランスです。

 エンジンは高回転でも不快なノイズはなく、心地いい。モーターの駆動力も不足を感じません。

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