ホンダ フィットRSとトヨタ アクアガチ採点 コスパもいいけど……改善点多数!?

ホンダ フィットRSとトヨタ アクアガチ採点 コスパもいいけど……改善点多数!?

 大人気企画の「水野和敏が斬る!!」。マイナーチェンジを機にホンダ フィットに追加された「RS」と、ハイブリッド専用モデルとして2代目になったトヨタ アクア。今回はどんな辛口コメントが飛び出すのか!?

※本稿は2023年1月のものです
文/水野和敏、写真/TOYOTA、HONDA、ベストカー編集部、撮影/池之平昌信
初出:『ベストカー』2023年2月26日号

■生活に密着した2台を徹底解剖!

マイナーチェンジを機にホンダ フィットに追加された「RS」(右)と、ハイブリッド専用モデルとして2代目になったトヨタ アクア(左)
マイナーチェンジを機にホンダ フィットに追加された「RS」(右)と、ハイブリッド専用モデルとして2代目になったトヨタ アクア(左)

 今回は、生活に密着した2台を取り上げてみました。マイナーチェンジを機に「RS」モデルを追加したフィットと、トヨタのアクアです。

 フィットは2020年のフルモデルチェンジから2年を経て昨年10月にマイナーチェンジを実施しました。パワートレーンでは、ガソリンエンジン車が従来の1.3Lから1.5Lに変更。またハイブリッド車ではモーターの最高出力が14ps引き上げられ、123psとなるなどの変更が加えられました。

 そして注目は今回取り上げる「RS」の追加設定です。ホンダの説明では、操縦安定性能など走りの性能を引き上げた、ということですが、そのあたりはしっかりと確認したいと思います。

車体やフロア剛性の高さはフィットがワンランク上。アクアは日常使いでは充分だが、入力負荷が大きくなるとやや弱さを感じる
車体やフロア剛性の高さはフィットがワンランク上。アクアは日常使いでは充分だが、入力負荷が大きくなるとやや弱さを感じる

 一方アクアは、トヨタのコンパクトカーのハイブリッド専用モデル。ヤリスが欧州でも販売するグローバルモデルとしての役割を担うのに対し、アクアは日本国内での販売に特化したモデルとしているのが特徴です。

 フィットですが、RSらしさを演出するためでしょう。フロントバンパーの形状を変更しています。他グレードに対し下顎を張り出して、側面部のフェンダーにつながる角を切り立たせています。角部には導風用のスリットが設けられ、フェンダー内部に風を送り込んでいます。

 しかし、フェンダー内部の風の吹き出し口が2cm程内側に入り過ぎています。現状ではタイヤに風が当たるだけで、本来の目的である「タイヤハウス内に入り込む風を、押し戻して排出する」効果は薄れています。この2cmの違いは、もの凄く大きいのです。

フロントバンパーは先端部が10cm程度張り出しすぎ。角部分で風がスムーズに流れず、渦を発生してしまう
フロントバンパーは先端部が10cm程度張り出しすぎ。角部分で風がスムーズに流れず、渦を発生してしまう

 それに……そもそもフロントバンパーの張り出しが大きすぎます。正面をフラットにして風を受け止めるのはいいのですが、両サイドの空気取り入れ口に向けて、より多くの風を集めてスムーズに流す、ガイド機能を持つ形状になっていません。

 むしろ空力的にはバンパー下部に設けられている、床下に入り込む風を激減させる、スプリッターが効いていますね。フラットなカバーがなく、凹凸が激しい床下を流れる風量を減らすことで空気抵抗を減らす狙いです。

 一方アクアには空力関係の技術の投入はあまり見られません。日本国内だけを考えたクルマなので、空力性能は割り切ったのでしょう。しかし、国内の高速も120km/h区間のある時代では、空力は燃費や動力性能や操安性に大きく効いてきます。あくまでも日常ユースの一般道をメインに想定しているのでしょう。

 フィットのリアタイヤはずいぶんと奥にオフセットして、リアフェンダーとの段差が大きいです。車体側面を流れる風がフェンダー内部に巻き込み、空気抵抗やリフト要因になります。それはアクアも同様。

 欧州車のように、タイヤの側面とフェンダー面は極力ツライチにするように、エクステリアデザイナーとシャシー設計担当が連携して、トータルでの“デザインの性能設計”をしなければダメ。それをまとめるのがチーフエンジニアの役割です。

フィットもアクアも基本的には空力についてはほとんど考えられてはいないエクステリアの形状だ
フィットもアクアも基本的には空力についてはほとんど考えられてはいないエクステリアの形状だ

 最近の空力技術を取り入れた車体造形では、リアドアからリアバンパーまで段差や大きな隙間をなくして、風がスムーズに流れる形状にします。さらにバンパー側面の角部は直角的にエッジを立てて、車両後方に巻き込む風を減らすのが主流です。

 欧州車や、ヤリスはそのような形状になっています。真後ろから見た車体の形状が台形で、踏ん張ったようなプロポーションは、レース車もそうですが、空力要件からの形状なのです。ヤリスとアクアでは高速での燃費や安定性、それによって軽減されるドライバーの疲労などに相応の違いが出ると思われます。

 欧州的な機能イメージのヤリスに対して、カウンター的に日常での親しみを狙ったと思われるアクアですが、タイヤとフェンダー間の大きな隙間や段差、そしてフロントドアの単純で“のっぺらぼう”なパネル面に入れられた煩雑なキャラクター線により、走る躍動感やソリッドな質感が感じられません。

 これはフィットも同様ではありますが……。

 ここはデザイナーの「面造り」の技量です。フロントドアの側面が“3次元で構成された面”として立体感を持つと、見栄えの対比としてリアクオーターのボリューム感や躍動感も自然と演出できまるのです。

次ページは : ■生産性を考慮したアクアの構造

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