将来のトラック用燃料として期待される水素。その水素を用いる「燃料電池」を集めた展示会がさる3月半ばに東京で開催されたが、そこに軽油や天然ガスのかわりに水素を燃やして使う「トラック用水素エンジン」も出品された。水素エンジンとは、いったいどのような技術と特徴をもっているのだろうか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/フルロード編集部、Westport Fuel Systems
コンバージョンで安価な水素エンジントラック
トラック用水素エンジンが出品されたのは、「第19回FC EXPO【春】」(主催:RX Japan)というイベントで、燃料電池(FC)本体やFCシステムをはじめ、FCの補機類や原材料、生産・試験機器、さらに水素タンク、水素充填設備などを取り扱う200を超える企業・機関・団体が出展した。そのうち水素エンジンを出品したのは2社である。
まず、国内企業・i Laboが出品したのが、いすゞの中型トラック「フォワード」を改造した水素エンジン車で、エンジンと燃料供給系の部品を水素燃焼に対応した部品へ交換し、高圧水素タンクを搭載している。
目標は、通常の自動車整備工場でも改造(コンバージョン)作業ができるコンバージョンキットを商品化することだ。コスト目標として新車FCVトラックの約1/3、新車EVトラックの約1/2を実現したいという。ちなみに開発に取り組んでいるのは、水素エンジン研究で長年知られてきた武蔵工業大学(現・東京都市大学)や自動車メーカー出身の技術者である。
エンジンは、ベース車の5.2リッターディーゼル・4HK1-TCS型(直列4気筒インタークーラーターボ付)を用いているが、イグニッションコイルとスパークプラグを備えたシリンダヘッドをはじめ、ピストンおよびコンロッド、バルブおよびバルブシート、ヘッドガスケット、吸気マニホールド、燃料噴射装置などは新規開発品で、エンジンオイルも変更している。逆にエンジンブロックやクランクシャフト、カムシャフトなどを除けば、ほぼ別物ともいえる。