日本お得意の「ハイブリッド車」は生き残る!? EUが「2035年」以降もエンジン車販売OKとしたワケとは?

■VWのディーゼル不正問題が2015年に社会問題化

VWは2015年のディーゼルゲート事件でイメージを失墜することに(※写真はイメージ:kucheruk@AdobeStock)
VWは2015年のディーゼルゲート事件でイメージを失墜することに(※写真はイメージ:kucheruk@AdobeStock)

 時代を少しだけ振り返ると、2010年代半ばにVWグループなどドイツ自動車メーカーや自動車部品メーカーで、エンジン排気ガス検査に対する不法ソフトウェアを使用していたことが大きな社会問題となった。

 この影響で失墜したブランドイメージをV字回復するため、まずはVWグループが早期のEVシフトを宣言し、それに伴う巨額投資を表明した。これが欧州グリーンディール政策の「前振り」になったと言える。

 ただし、VWグループのEVシフトに対して、当初はメルセデスベンツとBMWが完全には相乗りせず、「内燃機関は、これまでどおり持続させる」という姿勢を示していた。

ボルボはガソリン車やPHVを販売していたが、すでにEV専業へのシフトをアナウンスしている
ボルボはガソリン車やPHVを販売していたが、すでにEV専業へのシフトをアナウンスしている

 ところが、欧州グリーンディール政策がグローバルにおけるESG投資を煽るような形となり、2020年代に入ってボルボやジャガーのようにEV専業メーカーへの転換を打ち出したほか、メルセデスベンツは「社会環境が整えば」という条件付きとして「2030年代に新規導入するモデルはすべてEV」(燃料電池車を含む)という中長期事業戦略を公表するに至った。

 長年に渡って世界自動車産業を特に技術面でリードしてきたメルセデスベンツの条件付きEVシフト宣言は、日本メーカーを含めて世界に衝撃を与えた。結果的に、テスラという企業価値を高めたとも言えるだろう。

 見方を変えると、メルセデスベンツが「社会環境が整えば」と条件付きとしたのは、欧州EVシフトがあまりにもEUのよる政治主導であり、ドイツ自動車産業界の総意だと言い切っていない、という裏付けでもある。

 今回のFit for 55の「どんでん返し」は、ドイツの「ちゃぶ台返し」のように報じられることが少なくないが、ドイツ自動車産業界としては「ある程度の選択肢を設けることが、現実的」という解釈が大筋として変わっていなかったように思える。

■ESG投資争奪戦には日本も本格的に参戦の流れ

ESG投資の争奪戦が今後始まる。欧州、アメリカ、中国で激化し、そこに日本も本格的に参戦へと筆者は見る(AllahFoto@AdobeStock)
ESG投資の争奪戦が今後始まる。欧州、アメリカ、中国で激化し、そこに日本も本格的に参戦へと筆者は見る(AllahFoto@AdobeStock)

 では、欧州や日本を含めて、世界での電動化の流れは今後どうなるのか?

 基本的には、日本自動車工業会が平素から主張しているように「国や地域によってエネルギー状況や社会インフラなど社会事情が違うため、電動化の進展にも差が出る」と考えるのが妥当だろう。

 そのうえで、ESG投資の争奪戦が今後も、規制や投資呼び込み政策などによって、欧州、アメリカ、中国で激化し、そこに日本も本格的に参戦する。

 その結果、ハイブリッド車が主流の国、EVシフトが進む地域など、さまざまなケースが生まれることになる。

 また、e-Fuelについては合成燃料やカーボンニュートラル燃料との解釈の違いを明確化できていない状況だ。製造コストも、化石燃料由来燃料に比べて現状ではかなり割高だ。

 今後、こうした次世代燃料を内燃機関に使用するためにも、燃料関連事業者による早急な技術開発、そして水素など新たなサプライチェーンの構築など、課題は山積している状況だ。

■米国ではエタノールを含むガソリンが販売されているが……

米国などで販売されているエタノールは現時点ではe-fuelには当たらないのだという(ferkelaggae@AdobeStock)
米国などで販売されているエタノールは現時点ではe-fuelには当たらないのだという(ferkelaggae@AdobeStock)

 また、2000年代から2010年代にかけて、北米などで量産化が始まったエタノールを含むガソリンで、エタノール含有率を記した「E●●」という商品が出回っているが、これは現時点でいうe-Fuelの仲間ではない。

 e-Fuel、合成燃料、またはカーボンニュートラルと現時点で呼ばれている燃料は、「排気ガスには通常のガソリンなどと同等のCO2を排出している」(自動車メーカーの次世代エンジン開発エンジニア)という説明だ。あくまでも、製造工程でCO2排出量を大幅に削減しているので、理論上CO2排出量が相殺されるという考え方である。

 EUがCO2規制の方針転換となった今、カーボンニュートラルについて、改めて地に足をつけた議論が進むことをユーザーは望んでいると思う。

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