■スライドドアを持たないハイトワゴンのメリット
この後、2017年に発売された2代目の現行N-BOXは、内装の質、乗り心地、静粛性、ステアリングの操舵感、安全装備、運転支援機能などを幅広く進化させた。初代からの乗り替え需要も多く、N-BOXは安定的に国内販売の1位になり、タント、スペーシア、さらに日産ルーミーや三菱デリカミニ(以前はeKクロススペース)などのスーパーハイトワゴンも注目を集めた。その結果、前述の通り軽乗用車の50%を超えるに至った。
しかしスーパーハイトワゴンには欠点もある。全高が1700mmを超えて、スライドドアも装着するからボディが重い。大半の車種の車両重量が900kgを上まわる。この車両重量はコンパクトカーと同等なのに、軽自動車のエンジン排気量は660ccだから、約半分に留まる。従ってスーパーハイトワゴンのノーマルエンジン搭載車は、パワー不足に陥りやすい。
その点でハイトワゴンの車両重量は、大半が900kg以下だ。パワフルとはいえないが、スーパーハイトワゴンほどのパワー不足も感じない。
燃費も異なる。例えばスーパーハイトワゴンのN-BOXでは、ノーマルエンジン搭載車のWLTCモード燃費が21.2km/Lだが、ハイトワゴンのN-WGNなら23.2km/Lに達する。ハイトワゴンはボディがスーパーハイトワゴンよりも軽く、天井も低いから空気抵抗も小さい。そのために燃料消費量を抑えられる。
価格にも違いがある。スーパーハイトワゴンはスライドドアを装着するが、手動式だと開閉操作に体力を要する。そこで多くの車種が電動開閉機能を幅広いグレードに用意するが、両側のスライドドアに装着すると、価格を10万円前後は高めてしまう。それが横開き式ドアのハイトワゴンなら、電動機能が付かないからコストを抑えられる。
価格を具体的に比べると、スーパーハイトワゴンのN-BOXに、両側スライドドアの電動機能、サイド&カーテンエアバッグなどを標準装着したLコーディネートスタイルは181万9400円だ。安全装備などが近いハイトワゴンのN-WGN・Lスタイル+ビターは154万9900円に収まるから、スーパーハイトワゴンのN-BOXよりも約27万円安い。
ほかのメーカーについても、スーパーハイトワゴンとハイトワゴンの価格差は、スライドドアの電動機能を含めると25~30万円、これを除くと20万円前後になる。
以上のように全高を1600~1700mmに抑えたスライドドアを装着しないハイトワゴンは、スーパーハイトワゴンに比べてボディが軽く、低重心だから、動力性能、走行安定性、燃費性能で有利になり価格は割安だ。
そしてハイトワゴンの実用性が、スーパーハイトワゴンに比べて低いかといえば、そのようなことはない。N-WGN、ムーヴ、ワゴンR、日産デイズなどのハイトワゴンは、前後席の頭上と足元に十分な空間があり、4名で快適に乗車できる。内装の質感なども、スーパーハイトワゴンに近い仕上がりで遜色はない。
つまりスーパーハイトワゴンがハイトワゴンよりも明らかに優れているのは、後席を格納した時の荷室の広さと、スライドドアの装着に基づく乗り降りのしやすさ程度だ。自転車のような大きな荷物を積む機会がなかったり、子供を抱えて乗り降りするなどスライドドアを必要とする場面が乏しいユーザーは、実用的にはハイトワゴンで十分だ。
従って軽自動車を選ぶ時は、まずはN-WGN、ムーヴ、ワゴンR、デイズといったハイトワゴンを検討する。この時に車内の広さや乗降性に不満を感じたら、天井が高くスライドドアを装着するスーパーハイトワゴンを選ぶと良い。
以上のように軽自動車の基本形はハイトワゴンだ。N-WGNの売れ行きは、N-BOXの15~20%と大幅に少ないが、これはN-WGNやハイトワゴンの実力を反映したものではない。「価格が小型車並みに高い」というスーパーハイトワゴンの不満を解消するためにも、ハイトワゴンに目を向けたい。
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