「ダブルクラッチ」知ってる? 名前はカッコいいけどもう使わない古(いにしえ)の運転技術

かつてはFF車乗りの常識だった「タックイン」

 フロントヘビーなFF車でコーナーを曲がるとき、意図的にテールスライドを発生させて、加速する方向へ素早くクルマの向きを変えるテクニック、「タックイン」。

 エンジンやミッションのような重量物がフロントにあるFF車は、FR車と比べてアンダーステアが強い傾向にあり、特にコーナーでは、フロント輪が駆動と操舵の両方の役割を担うので、限界コーナリングの最中は加速がしにくい(タイヤがグリップ限界を迎えているから)が、コーナリング途中でアクセルをオフにすることで、フロントタイヤのコーナリングフォースが回復し、アンダーステアからオーバーステアに変わる。この特徴を使った走りは、FF車で速く走るための運転テクニックであった。

 いまはサスペンションもタイヤも高性能化したため、リアを滑らせて無理やり旋回するような走らせ方は、あまり推奨されていない。ジムカーナのような、ごく一部の特殊なスポーツ走行を除いては、必要のない技術だ。

ジムカーナで小回りをするようなシーンだと、必須の運転テクニックだ(PHOTO:Adobe Stock_Vibe Images)
ジムカーナで小回りをするようなシーンだと、必須の運転テクニックだ(PHOTO:Adobe Stock_Vibe Images)

公道で必要なのはスローインだけ!!「スローイン・ファーストアウト」

 コーナーの手前で、適切なスピードまで減速する「スローイン」と、クリッピングポイントの手前から加速し始めて脱出速度を高める「ファーストアウト」。いまでも、サーキット走行においては必要な技術だが、街中では「スローイン」は必要でも、「ファーストアウト」は必要ない。

 街中では、交差点などの曲がり角に差し掛かる手前でしっかりと減速し、大きく横Gを出さずにサッと曲がることこそが、同乗者の頭も左右に振られることなく、スマートなコーナリングというもの。サーキットと公道では、カッコいいの価値観が違ってくることを忘れてはいけない。

ネズミ捕りを教えてくれたりした「パッシング」

 クルマのヘッドライトを素早く点滅させる、「パッシング」。ドライバー同士のコミュニケーションとして用いられるパッシングにはいろいろな意味があるが、走行中に対向車がパッシングしてきたときの意味には、「この先で警察がネズミ捕り(速度違反の取締り)をやってるよ」というものがあった。

 以前は、特にトラックドライバーさんがよく教えてくれたものだが、いまではめっきり減ってしまい、若いドライバーのなかには、パッシングの意味を知らないドライバーも多いそう。「嫌がらせされた」と勘違いされないためにも、ネズミ捕りに限らず、何かを知らせるためにやむを得ずパッシングする際は、アイコンタクトなどとともにするようにしたい。

対向車線を走ってきたクルマがパッシングしたら、ネズミ捕りをやっていることの合図だった(PHOTO:Adobe Stock_羽虎平月)
対向車線を走ってきたクルマがパッシングしたら、ネズミ捕りをやっていることの合図だった(PHOTO:Adobe Stock_羽虎平月)

◆      ◆     ◆

 このような運転技術よりも、現代では、備わっている運転支援技術をいかに上手く使いこなせるかのほうが重要。クルマが大きく変わっているのだから、運転方法も変わって当然なのだが、たまにこうして昔を振り返り、懐かしむのもいいものだ。

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