後席の窓ガラスが全部下がらない! その理由には自動車メーカーの意外な心配りがあった!

後席の窓ガラスが全部下がらない! その理由には自動車メーカーの意外な心配りがあった!

 クルマを運転する人は気付きにくいが、リアシートに座ることの多い人がイライラするのが、「窓ガラスが全部下りない」こと。見送りの人に挨拶しようとしても、窓ガラスの一部が残ってしまってなにかカッコ悪い。なんでこんなことになるのか、その理屈を説明しよう!

文/ベストカーWeb編集部、写真/ランチア、フェラーリ、シトロエン、Adobestock、ベストカーWeb編集部

■ドアの構造の問題だが転落防止といった狙いも!

小さな子どもの転落事故抑止のために窓が下り切らないクルマもある(Odua Images@Adobestock)
小さな子どもの転落事故抑止のために窓が下り切らないクルマもある(Odua Images@Adobestock)

 そもそもドアが4つ付いているクルマならば、前席よりも後席のほうがおもてなし感は強いはず。なのに後席の窓ガラスが下り切らないのはなぜなのだろうか。

 その理由を探るには、後席の窓ガラスを納めるドア内部の事情を知る必要がある。まずは後席のドアを外から眺めてほしい。後ろのタイヤを避けるように、ドアパネル後ろ下側が丸くえぐれているはずだ。

 このえぐれこそが、窓ガラスを下ろさない最初の犯人だ。パワーウインドウのスイッチを押して窓ガラスを下げても、タイヤ部分の切り欠き(ドア内部からみると出っ張り)が邪魔で窓ガラスが収まりきらない。だから間抜けにガラスが残ってしまうのだ。

 もうひとつ、重要な理由が他にもある。乗員の転落抑止だ。たとえばトヨタには社内規定があり、後席に座っていた子どもがシートの上に立ち上がった際、外部への落下を防止するため、あえて後席ガラスは全開にならないように作ってあるという。

 アルファード/ヴェルファイアやノア/ヴォクシーといったミニバンが、ドアには余裕があるのに窓が全開にならないのは、そのためなのだ。

■過去には広く開ける工夫もなされてきた

先代プリウスの例。リアウインドウを補助ピラーで分割し、上下する窓ガラスを小型化している
先代プリウスの例。リアウインドウを補助ピラーで分割し、上下する窓ガラスを小型化している

 タイヤの切り欠きが邪魔で窓ガラスが下りないという理由だが、クーペやハッチバック車のリアウィンドウではクルマメーカーも頭を悩ませ、少しでも開口面積を広げる工夫をしてきた。以下のような方法だ。

・リンク機構を使って窓ガラスを斜めに下ろす
 窓ガラスの開閉は一見単純な上下運動に見えるが、ドア内部には複雑なリンク機構があって、ガラスの動く軌跡を決めている。

 このリンク機構にひと工夫して、タイヤの切り欠き部分にひっかかる窓ガラスの後ろ側は諦めて、前方をできるだけ下ろそうという方策がこれ。窓ガラスを完全に下ろすことはできないが、開口面積が拡大されて見晴らしは確実に良くなる。

・ピラーを1本追加して窓ガラスを小さくする
 現代の多くのクルマが採用している方策がこれ。後ろドアの窓枠内にピラー(柱)を追加して窓を分割し、前側だけを下げようという解決法だ。開閉するガラスが小さくなるのでタイヤの切り欠き部分を回避でき、とりあえずは窓ガラスを下ろし切ることが可能となる(それでもガラスが残るクルマもあるが)。

 後席の話ではないが、過去にはランチア ストラトスやフェラーリF40初期型、シトロエン2CVなど、ユニークな窓の開閉方法を採用するクルマも存在した。窓の作り方ひとつとっても、クルマの個性が現れるということだろう。

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