14年務めた豊田章男前社長が会長に就任し、トヨタ自動車の社長は53歳の佐藤恒治氏にバトンタッチをした。今でこそ世界的な大企業に成長したトヨタだが、元は自動織機を製造する企業の自動車製造部門としてスタートを切った。86年、11代の社長の「歴史」を改めて振り返りたい。
※本稿は2023年4月のものです
文/佃義夫、写真/ベストカー編集部、トヨタ自動車
初出:『ベストカー』2023年5月26日号
■トヨタの脱炭素戦略
「トヨタ新体制のテーマは、『継承と進化』です。継承とは、自分たちのブレない軸を明確にして、未来に向かっていくことです」
トヨタ自動車が14年ぶりのトップ交代で、豊田章男前社長から社長の座を、4月1日に引き継いだエンジニア出身の佐藤恒治社長の新体制方針説明会の第一声だった。
53歳の佐藤新社長によるトップ若返りだが、商品統括の中嶋裕樹(61歳)に地域統括の宮崎洋一(59歳)のベテラン新副社長の執行トップ陣容で、豊田章男カリスマ的リーダーシップ体制から「チーム経営」を前面に押し出したのがトヨタ新体制の特徴だ。
トヨタの新体制への移行は、100年に一度の自動車大変革期にトヨタも従来の自動車メーカーを超える「モビリティカンパニーへの変革へフルモデルチェンジする」(佐藤新社長)ためとする。
これには「カーボンニュートラル(CN)の実現」と「移動価値の拡張」をテーマの柱とし、脱炭素へマルチパスウェイ(全方位)戦略を貫きつつ、BEV(バッテリーEV)も重要な選択肢として戦略強化に拍車をかける。「EVファースト、ソフトウェアファースト」をトヨタは標榜し、実践していくことになる。
トヨタ・マルチパスウェイとは、CN実現に向けてHEV(ハイブリッド車)・PHEV(プラグインハイブリッド車)・BEV(電気自動車)・FCEV(燃料電池車)・水素エンジン・CN燃料(カーボンニュートラル燃料=合成燃料ほか)という多様な選択肢を追求するトヨタ全方位戦略であり、BEV戦略強化に拍車をかけるなかで今後とも進めていく。
また、もう一つの大きなテーマの「移動価値の拡張」とは、電動化、知能化、多様化が進みクルマが社会とつながることへの対応で、トヨタが目指すモビリティ社会の在り方へ「トヨタモビリティコンセプト」としてまとめて推進していく。
一方で、トヨタ佐藤新体制での豊田章男会長の役割も大きくなる。トヨタ内部での新体制をバックアップして支えるとともに、トヨタグループの総帥としての動きからさらに日本自動車工業会会長として日本自動車産業界ひいては日本経済界におけるリーダーシップが大きく期待される。
コメント
コメントの使い方豊田喜一郎さんは2代目社長になります。そのあとを受け継いだのが石田退三さんですが、この方を忘れてはいけませんよ。石田さんはトヨタが経営危機に陥り金策に走り回りましたが、どこの銀行も融資してくれず、三井銀行が融資を引き受け、倒産を免れました。
以後この時の苦しみをもってその後無借金経営に。石田さんと4代目社長中川不器男さんの功績大です