■本革シートの王者はナッパレザー
布を素材としたファブリックシートの長所は、コストパフォーマンスに優れ、通気性がよく、滑りにくいことである。伸縮性があるから滑りにくく、肌触りもいい。傷つきにくいなど、優れた耐久性に加え、蒸れにくいから快適性も高いレベルにある。
生地の折り目や生地に汚れが付着したり、染み込みやすいのは弱点だが、掃除はしやすい。多くの長所を備えて魅力的だが、見た目の高級感が薄いためか、格下の素材に見られているようだ。
いっぽう高級感が分かりやすいシート素材が、牛や羊などの動物の革をなめした天然の革素材を表皮に用いたレザーシートである。ファブリックとは違う風合いが特徴で、耐久性の高さも折り紙付きだ。静電気も発生しにくい。
表面に顔料を薄く吹き付け、アニリンと呼ばれる染料を使って染色したセミアニリン仕上げのレザーシートも増えてきた。
しっとりとした手触りのよさが好まれ、LXなどのレクサス車、アウトランダーPHEVのトップグレード、革の文化が浸透したヨーロッパなどの高級車用シートに使われることが多い。
また、耐久性に優れている山羊や羊、牛などの革を使い、顔料を薄くして柔らかい風合いを強く打ち出したものはナッパレザーと呼ばれている。
マツダはCX-5やCX-8、CX-60など、上級クラスに積極的に採用して話題をまいた。メルセデス・ベンツは、AMGデザインのステアリングにもナッパレザーを採用している。ナッパレザーのなかでも傷の少ない厳選した良質の革を用いているのがプレミアムナッパだ。
■動物愛護の観点からレザーシートは減少する!?
今ではレザーシートは高級というイメージが定着している。が、20世紀の後半までは優劣はなかったのだ。レザーシートが好まれているのは、貴族文化が強いヨーロッパや開拓時代のアメリカで持てはやされた馬車の時代の名残である。
この時代の馬車は簡素な屋根が付き、シートも椅子のように腰掛けるだけの機能しか持たなかった。御者が座るのは、耐久性に優れたレザーシートだ。
後席の貴人や貴婦人は座り心地のいいファブリックシートに座っている。化学繊維はないので、ウールのシートだ。耐久性に難があるが、熟練の職人が表皮を張り替えて使った。
この流れは自動車の時代になってリムジンや御料車へと引き継がれていく。御料車であるニッサン・プリンス・ロイヤルやグロッサー・メルセデス、ロールスロイス・シルバーゴーストなどは運転席がレザーシート、後席が高級なウールシート仕様となっている。寒い日のパレードでも快適に座ることができた。
動物愛護の観点から、レザーシートは徐々に減りつつある。代わって登場したのが、レザーとファブリックを組み合わせたコンビシートだ。
座面はファブリックで、サイド部分をレザーにしたものが多い。見栄えがよく、快適性も高いなど、多くのメリットを備えている。ホールド性とサポート性がよいことに加え、快適性も高いのでユーザーから好評だ。
■今後も新しいシート素材が生まれてくる!
また、天然皮革のスエードに近い見た目や手触り感で、風合いがよく、耐候性や通気性にも秀でたレザー風の素材も注目を集めている。
一般には「人工皮革」と呼ばれているが、アルカンターラやエクセーヌ、ウルトラスエードの商標名を聞けば、うなずく人も多いだろう。これは日本の東レが開発した人工皮革を基本としており、基本構成はどれも同じだ。
イタリア製はアルカンターラを名乗っており、マイクロファイバー素材の化学繊維である。1980年代にランチア・テーマが世界で初めて採用し、注目を集めた。
ファブリックとレザーの両方の長所を備え、紫外線にも強くて変色しにくい。難燃性が高いこともあり、高級車に使われることが多くなった。
21世紀になると、動物福祉の倫理的な立場からレザーフリー化に踏み切る自動車メーカーも増えてきている。ボルボは時代に先陣を切って、バイオベースやリサイクルソースから作られた高品質なサスティナブル素材などの代替品に切り替えた。
この先は、環境保全や動物愛護の観点から、多くの自動車メーカーやシートメーカーが追随するはずだ。この先のシートの発展から目が離せない。
【画像ギャラリー】昔は今と逆だった!? 高級車の証だったファブリックシートと車のシート素材いろいろ(21枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方最初の室内写真、これ覚えがある・・・マークⅡグランデ(GX60)初めて新車で購入した車E/GはIG-EU(4バルブ前)の6気筒
懐かしいな・・・15年乗って廃車にしたが、記念にタイヤホイルキャップ取ってある