市販車でもニュルブルクリンクサーキットを走り込んだクルマは特別とされる。FF最速LAPを競い、今をときめくシビックタイプRとメガーヌR.S.に先代クラウンなど。ニュルが市販車に与える意味合いを改めて考えてみたい。
文/山本シンヤ、写真/ベストカー編集部、レクサス、スバル、ホンダ、ルノー
■なぜ各メーカーはニュルでテストをするのか?
ドイツの北西部に位置するニュルブルクリンクの歴史は非常に古く、オールドコースと呼ばれる北コースは、第2次世界大戦前の世界不況の時代にヒトラーの提案により建設された巨大サーキットである。
サーキットと言いながらも、ヨーロッパの一般地方道に似たレイアウトで、1周約20.8kmと距離も凄いが、標高差300m、大小170を超えるコーナーは低速から超高速域のスピードレンジまで多様多種。
さらに路面状況はほとんどの路面が波打っており、埃っぽく滑るうえ、コース幅も狭くエスケープゾーンもほとんどない……など、世界有数の難関コースと呼ばれている。
そんなことから「ニュルは生きた道」、「ニュルには世界中の道が凝縮されている」と言われ、ここを満足に走ることができたクルマは、世界中のどんな道でも通用する。そのため、自前で巨大なテストコースを持っている世界の主要自動車メーカーでも、ニュルは車両開発・評価の項目に入る。
また、サスペンションメーカーやタイヤといったパーツサプライヤーも同様にニュルでテストを行なっている。
■ニュルで速い=意のままの走りが必要となる
車両の総合的な性能がラップタイムに反映されやすいため、「ニュルで速い=いいクルマ」と判断されがちだが、ラップタイムはあくまでも結果であり本質ではない。では、ニュルでテストを行なう本当の理由は? それはニュルを「安心」、「快適、「楽」に走れることだ。
その実現には「ドライバーとクルマの信頼関係」が重要で、そのためにはクルマがドライバーの操作に対して意図どおりに動くこと、つまり「意のままの走り」が必要となる。
では、意のままの走りとは何か? もう少しかみ砕いて説明すると、「期待に反した動きをせず、ドライバーとクルマがひとつの体になったかのようになだらかで巧みな連携が行なわれること」だが、日常の使用ではどのようなクルマでも普通に走る。では、意のままの走りとそうではない走りはいったい何が違うのか?
それはスマホの操作を例にするとわかりやすい。あるボタンを操作する際に自分の操作に対して反応が早かったり、遅かったりしたらどうだろうか? おそらくほとんどの人が「使いにくい!!」と感じるだろう。
ただ、操作に対してスマホは反応しているので、機能として見れば故障ではない。ただ、使っている人にとっては「ダメなスマホ」と判断するはず。逆に操作に対して阿吽の呼吸で反応してくれるスマホは、間違いなく使いやすいと感じる。
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