重さがネックになってしまったクルマ3選
ここからは車重が重かったことも評価下げる結果につながってしまった悲劇のモデルを紹介していきたい。
●三菱 GTO
重いクルマを語る際にこのGTOは避けて通れない。すでに生産終了から20年以上が経過しているにもかかわらず「GTO=重い」のイメージは定着してしまっている。
1990年に市販が開始されたGTOは、三菱が開発した4WDのスポーツカーだ。その風貌はまさにスーパーカーそのもので、フロントにはリトラクタブル式ヘッドライトを採用し、ドアは左右に1枚ずつ。そしてリアエンドにはウイングが装着されている。
外観的には俊敏なスポーツカーをイメージさせるGTOだったが、問題はそのサイズにあった。北米市場も意識していたGTOの全幅は1840mmあり、全長もデビュー時で4555mmと長い。
このように、大柄ということだけでも車重がかさみそうなのは想像できる。加えてGTOは4WD車であり、エンジンは3リッターV6+ツインターボ、そして4WS(4輪操舵)システムも搭載されていて、それも重量を増やす要因になった。
その結果、GTOの車重はツインターボモデルで1700kgに達してしまった。同時期に人気を集めていた日産R32型スカイラインGT-Rの車重が1430kgであることを考えるとこれは重い。もちろん32型GT-Rも4WD車である。
そもそもGTOは軽量化に重点を置いたモデルではなく、4WD&4WSにアクティブ・エアロシステムや電子制御ダンパーなどのハイテクデバイスを装備することにより、ドライバーのレベルを問わずに高性能を発揮できるクルマとして開発されている。
実際にベースとなっているのはFF高級セダンのディアマンテであり、スポーツカー用に新開発されたプラットフォームは使われていない。
とはいえ、ユーザーがGTOと比較してしまうのはR32型GT-Rを筆頭にする他社製スポーツカーであって、それらに比べるとGTOは「重い・曲がらない・止まらない」の評価を得てしまった。直進安定性に優れるという美点もあったが、低評価を覆すことはできなかった。
「重戦車」というありがたくないニックネームをもらってしまったGTOは、その後の改良によって性能向上を果たすものの、後継車を残すことなく2001年に三菱のラインナップから姿を消した。
ハイテク満載にもかかわらず販売価格が比較的安価(初期のツインターボモデルで398万5000円)だったり、一部のマニアには支持されたりなどはあったが、どうしても「重戦車」のイメージからは脱却できなかった。
●マツダ 3代目ロードスター(NC型)
マツダのロードスターといえばライトウェイトスポーツカーの代表的モデルとして知られている。だが、シリーズのなかに突出して重いモデルがあったことをご存じだろうか?
シリーズ3代目にあたるNC型ロードスターが登場したのが2005年。プラットフォームから一新された3代目は、前作よりも全幅が42mm拡大され、ホイールベースも65mm長い。
同時にエンジン排気量も前モデルの1.6~1.8リッターから2リッターにサイズアップされている。こうした変更により、ロードスターは3代目にして3ナンバーモデルになったのだ。
サイズの拡大は当然ながら重量増加も伴っている。グレードによる差異はあるが、2代目に比べておおよそ70kg重くなった。もともとが1000kg程度の車重だったことを考えると、これはかなりの重量増といってよい。
そしてこのロードスターの“巨大化”はプラスには働かなかった。3代目ロードスターの走りからは前作までのキビキビ感が失われ、ハンドリングも大味な方向へと変化。これは前モデルからのファンをガッカリさせた。
3代目ロードスター自体は悪いクルマではなく、車体とエンジンの大型化はパワーアップと安定性向上をもたらし、クルマとしての完成度は決して低くなかった。だが、ファンがマツダ ロードスターに求めたのはそれではなかった。
結局2015年登場の4代目ND型ロードスターではサイズダウンが行われ、全幅こそ3代目より15mm広いものの、ホイールベースの短縮などによって全体的にコンパクトにまとめられた。
もちろん軽量化が行われ、“大きくて重い”ロードスターは3代目のみの特徴となった。この4代目は高い評価を得て、現在でもその人気を保っている。
3代目NC型ロードスターは、シリーズ中最も人気のないモデルとなってしまったが、そのぶん中古車市場では程度の良い個体が安価で取り引きされている。単体で見れば悪いクルマではないので、案外お買い得なモデルなのかもしれない。
●レクサス LS(5代目)
レクサスはトヨタが展開する高級車のブランド。そのなかでもフラグシップモデルの役割を担っているのがLSだ。
日本国内ではトヨタ セルシオの名称で販売されていた高級セダンを、主に北米市場に向けてレクサスブランドからリリースしたのが初代LSで、登場は1989年。トヨタの狙いどおりこの初代LSは好調なセールスを記録した。
現行型のLSはシリーズ5代目にあたり、2017年に販売が開始されている。その特徴は大型化であり、先代に比べてホイールベースが35mm延長され、全幅も25mm拡大している。
重量に至っては、最大級で2400kgを超えるモデルがあるほど。つまり、現行型レクサス LSは“大きくて重い”クルマになったのだ。
高級セダンのLSで車重はそこまで重大な問題にならないと思えるかもしれない。しかし、BMWやメルセデスベンツなどの同クラスモデルと比べても200kg以上重いのは、やはり重すぎといわざるを得ない。
実際に現行型LSをドライブした経験のある人からは、車重の重さからくる運動性能や加速&制動性能の弱さを指摘する声も出ている。
レクサスは日本国内でも販売を行っているが、全長が5.2mと長く、重さのあるLSは日本の道路&住宅事情にフィットせず、セールスは思うように伸びていないという。また、本来のターゲットである北米においても、以前ほどの勢いを保てていないとの声も聞く。
今回は重いクルマの弊害について考えてきた。重くても高評価を獲得しているクルマは多いが、それが弱点になってしまうクルマもまた多い。
重量のあるバッテリーを動力源にするクルマが増えている現在、クルマの重量化は避けらない問題なのかもしれない。しかし、自動車メーカーには、安全性や耐久性を確保しつつも“軽い”クルマ作りを期待したい。
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コメント
コメントの使い方GTOの整備の思い出はテールレンズの上の角のパネル、実はアルミ塊です。またリアバンパーの中のメンバーもまさに鉄骨で、重すぎてステーにヒビが入りました。このことから超フロントヘビーをなんとかバランスを取ろうとしたかもしれません。それでもディアマンテ3Lの4WDより重いのはどうかと。直線加速はすごかったのは覚えてます。曲がんなかったですが。
タイヤ性能が格段に上がり、それを受け止めるサスとボディが必須になった今では、
取付含めた「剛性を上げたうえで」出来るだけ軽く、が必須であり、ただ軽いだけで剛性がない車はやれることが一気に減ってしまいます。
有名なのはR34が33比で小さくなったのに剛性のため重量は増した例ですが、運動性能は34で大幅に向上。それほど影響大な剛性は、現代では当時より数倍重要です。