ときどき、ガソリンスタンドやタイヤ販売店などで「タイヤに窒素を入れましょう」という看板を見かける。そもそも空気の大半は窒素のはずだが、入れるとなにかいいことがあるのだろうか? あえて窒素を入れる理由を調べてみた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/Adobestock、ベストカーWeb編集部
■タイヤ内部の圧力変化やエア洩れを抑える
まず窒素とはなにかを考えてみよう。小中学校の理科で習ったとおり、地球の大気は約78%を窒素が占める。残りは約21%が酸素、約1%がアルゴンや二酸化炭素だ。
いっぽう物理の周期表を見ると、窒素は第2周期に属し、酸素と隣り合う位置にある。このため性質も似通っていると思われがちだが、窒素は酸素に比べて化学的に安定、つまり化学反応を起こしにくいという点が異なる。燃えたり、膜状の物質を通り抜けたりしにくいということだ。
この特性こそが、窒素がタイヤへ充填する気体として選ばれる理由そのものともいえる。
まず窒素は、エア洩れを起こしにくい。分子の動きが空気に比べて遅いので、タイヤのゴム分子の間を透過しにくく、空気圧の低下を起こしにくいのだ。
これを具体的に物語るのが、膜状の物質を通り抜ける度合いを示す透過係数という値。天然ゴムに対する透過係数は、酸素が23.4なのに対し窒素は9.5と明らかに小さく、窒素の「洩れにくさ」を物語っている。
さらに窒素が水と結びつきにくい点もメリットとなる。通常タイヤに入れる空気には水分が含まれており、この水分(蒸気)が膨張したり収縮したりするとタイヤの体積が変化してしまう。ところが窒素ガスは水分を含まないので膨張/収縮が抑制できるうえ、タイヤ内部やホイールにサビが発生することも防いでくれるというわけだ。
いっぽう窒素を入れることで、燃費や乗り心地が良くなるという噂も耳にする。これについては明らかな効果を示すデータを見つけることができなかった。過度な期待は抱かないほうがよさそうだ。
■もともとは航空機の技術だった
タイヤに窒素を入れるという手法は、航空機の分野で始まったとされる。航空機のタイヤは着陸時には強烈な摩擦にさらされるいっぽう、飛行中は氷点下の極寒に耐えねばならない。通常の空気入りタイヤではこの激しい温度差に耐えられないため、温度変化に強い窒素が選ばれたのだ。
窒素はさらに「燃えにくい」という特性も備えているため、まさかのトラブルの際に火災の原因にならないという点も安心材料になったと考えられる。
こうした点が評価されて、窒素は自動車のタイヤにも導入されたわけだが、デメリットもないわけではない。最大の問題はお金がかかるということだ。窒素充填はタイヤ1本あたり500円程度の料金を取るショップが多いので、1台あたり2000円の出費が生じることになる。
通常の空気充填なら、ガソリンスタンドに出向けば無料で行ってくれるから、2000円というコストはやや高いようにも思える。興味のある人はまずお試しで窒素を入れてみて、効果を定量的に測ってみることをオススメする。
いっぽう窒素を入れたからといって、タイヤのエアチェックをさぼっていいということにはならない。窒素を入れてもエア洩れは発生する。定期的なタイヤのチェックは忘れずに行おう。
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コメント
コメントの使い方実際に窒素を使用すると、普通の空気と大きな差はありません。
重さでいえばタイヤ1本あたり1g単位の軽量化しかしません。
例えばクッションの中身、80%がスモールフェザーで残りが綿のものと、100%フェザーのもので違いが分かるでしょうか。
普通に空気入れればタダで80%窒素ガスです。それを高額な95%窒素ガス(100には抜き切れない)に変更しても同じことが言えます。
レースレギュレーションで厳密に縛られた中で他との差をなくす為の窒素充填ならしても、乗用車レベルでやる意味は自己満足以外にありませんよね